セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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クリスマス回ぽいものです


第124話

人工雪の降りしきるプラントの街並み。

それは本来雰囲気を醸し出す程度のモノに過ぎないが、それでもやはりその光景はすっかり宇宙での暮らしが染みついた人々の郷愁をかき立てるのか、或いはクリスマスという言葉に浮き足立ってしまうのか…。

スペーシアンが街灯の灯りに照らされ歩く様はどこか神秘的ですらある。

 

そこを行き交う人々は皆仕立ての良い衣服に身を包み、ある人たちは買い物に、またある人たちは食事にと日常を送っている。

そしてその中に……。

 

「♪〜〜」

「ご機嫌だな。セセリア」

 

当然ながらセセリアとドゥラメンテの姿もあった。

 

「え〜?そう見える〜?」

 

ドゥラメンテの腕に自身のそれを絡め、決して離さないと言わんばかりに体を密着させている様は彼女の独占欲そのものを表しているようで…ドゥラメンテはそれを好ましく、愛らしく感じているのが見て取れる。

 

いつもの制服やパーティーの時に着ていたドレス姿と異なり、露出が少なめだからこその新鮮さがあった。

そしてそれが…ドゥラメンテの目にセセリアをとても魅力的に映していた。

 

「セセリア…」

「ん…フフッ、今日のドゥラメンテはなんだか積極的ね〜?」

 

そんな魅力的な恋人を独り占めできる幸福感から思わず肩を抱き寄せてしまうのは何ら不思議なことでは無いだろう。

 

ふわりと香る香水の匂いにペアの指輪と、何より二人の間の仲睦まじい雰囲気は誰がどう見てもバカップルのそれである。

 

そんな二人がいつに無く浮かれて見えるのはクリスマスのせいか、それとも雪のせいなのか或いは慣れない寒さが原因なのか…。

いずれにせよ、今の二人にとっては瑣末なことでしか無いのだろうが。

 

「ね…帰りにちょっと寄りたいところがあるんだけど〜…」

 

そんなことを話していた矢先のことだった。

 

「もし、そこのお二人…」

 

人混みから少し離れた場所で突然聞こえて来た声に声に振り返れば、そこには見るからに怪しい風貌の人物が座っていた。

 

簡素な机を隔て、わざとらしく目深にかぶったフードと、時代錯誤も甚だしい黒のローブ…。

そして手元には大きな水晶があり、如何にも占い師でございといった雰囲気。

 

しかしドゥラメンテが気になったのはそこでは無く…。

 

「うん?この声、もしやどこかで会ったことが…確か…」

「あああいや!!気のせいだろう!!いや!!気のせい気のせい!!初対面なんで!!そういうことにしといてくださいセンパイ!!」

 

ガタッと椅子から立ち上がり、わたわたと慌てふためくその様は、見るからに挙動が不審になっている。

怪しさが一気に吹き飛ぶと、今度は胡散臭さが出て来る。

 

「それで〜?初対面の占い師さんがどんな要件でアタシらに話しかけたってワケぇ〜?」

 

せっかくのデートに水を刺されたからか、セセリアは不機嫌気味に占い師姿の人物にそうたずねる。

 

とは言え…プラント内に簡易的とは言えこうして店を開いている以上、許可は得ているのだろうが…。

 

その割には客はこの二人以外にいないように見える。

ひとしきり狼狽えた後、占い師気取りは

 

「コホン…」

 

とひとつ咳払いをしたかと思えば…。

 

「いえいえ…実はお二人にはネタ提供…では無く、喜ばしい未来が見えたもので…」

「ほう…それは重畳だなッ!!」

「でしょう!?」

 

ドゥラメンテの食いつきを見てか、占い師気取りは思わず前のめりになる。

 

「よろしければ詳しく見て差し上げられますが…」

「うむ!!よろしく頼むッ!!」

 

ドゥラメンテは占い師と向かい合うように置かれた席に座る。

 

「え、いいのドゥラメンテ?」

「無論、セセリアがイヤだというのなら…」

 

訝しむ恋人を見て、立ちあがろうとするドゥラメンテ。

思わず止めてしまいそうになる占い師であったが…。

 

「別に、ドゥラメンテがいいって言うなら…」

「ありがとうセセリア!!愛している!!」

「ちょっ!?嬉しいけど人前でそんな…」

 

二人だけの世界に入りつつあるバカップルに、占い師は気まずそうに声をかける。

 

「あ、あ〜…本題に入っていいですかね?」

「む…ああ、申し訳ない…」

 

素直な謝罪の言葉に占い師はコホンと咳払いをひとつすると、大仰に腕を振り上げ…。

 

「ではでは見させていただきます…アカパジャマアオパジャマキパジャマ….キエエエイ!!」

 

途中、何やらポチッとスイッチが入ったような音が聞こえた気がしたが…大したことは無い…はずだ。

 

特に水晶に変化も見られなかったが、占い師は顔を上げると…。

 

「そちらの男性…将来的にはモッテモテになりますね。きっとハーレム築いてますね。よっ!!モテ男!!」

 

どうです嬉しいでしょうと言わんばかりにフードを被った顔を近づける占い師。

しかしドゥラメンテは…。

 

「ふむ…」

 

先ほどの浮かれぶりからは打って変わり、何やら考える素振りを見せる。

 

「ドゥラメンテ?」

 

唐突に神妙な面持ちで考え込んだドゥラメンテに不安を感じたのか、セセリアは思わず問いかける。

 

「占い師殿」

「えっ、はい!?」

 

数秒の後、ドゥラメンテは占い師に話しかける。

 

「オレは浅学の身ゆえ、占いに関してはお世辞にも詳しくはない。もしかしたら貴方が高名な占い師の方であるかも、或いは適当なことをでっちあげている素人なのかもわからない。そのうえで恐縮だが、その未来はきっと…いや、必ず変わるだろう。なぜならば…」

 

そう言うなり、ドゥラメンテは立ち上がり…未だ不安そうな表情を浮かべるセセリアを情熱的に抱き寄せる。

その唐突な行動に、通りすがりの人々は思わず目を奪われるが、ドゥラメンテは構いもしない。

 

「そうッ!!何故ならば!!このオレ、ドゥラメンテ・シックールの心は既にセセリア・ドートというひとりの女性にくびったけなのだからなッ!!」

「ドゥラメンテ…」

 

セセリアはドゥラメンテの嘘偽り無い本心を、そして自分への変わらぬ愛情を聞き、安堵に顔を上げる。

 

「無論、ハーレムを持つスペーシアンの方々にどうこう言うつもりは無い。それもまたひとつの愛の形なのだろう…それは誇るべきことであるし誰かに否定できるものでもない…だがしかしッ!!生憎、オレの心はそう広くは無いのでなッ!!故にこの場で改めて誓おうか…」

「ちょっ…」

 

ドゥラメンテはセセリアの顔にゆっくりと自身の顔を近づけ…セセリアも狼狽えながらも嫌がるそぶりは見せず…やがてその距離はゼロになった。

はじめは驚いていたセセリアも次第に目を細め、ドゥラメンテの背に腕を回す。

 

それから十秒か二十秒か時が経った後、やがて名残惜しそうに離すと、ドゥラメンテは占い師に向き直る。

 

「フッ…マルシャンは誰であれ…ただ一人への愛を貫く者たちだ。我が高祖父も曽祖父も、祖父も父も、そしてこのオレもな。どうか、それを覚えておいてほしい」

 

そう言うなり、盛り上がる周囲をよそにドゥラメンテはそのまま謝礼を支払うと、ぽ〜っと惚けるセセリアと改めて腕を組み、共に湧き上がる雑踏の中へと消えて行ったのだった。

 

数日後、アスティカシアの食堂にて…。

 

「ちぇ〜…ドゥラメンテ先輩の使える音声が取れればいいと思ってわざわざたっかいカネ払ったってのに…これじゃあどこを切り取っとも惚気にしかならないじゃんよ〜!!」

 

彼はアイザック・ハルトマン。

実家の報道関係の会社をいずれ宇宙一にまでのし上げるという野心を持った男。

 

最近はドゥラメンテネタがマンネリ化して来たので新しい切り口が欲しかったようだが…。

この様子を見るにアテは外れたようだ。

 

「ドゥラメンテ〜、これなんかど〜お?」

「む?セセリア?なんというか距離が…」

「え〜?気のせいでしょ〜?はいあ〜ん♪」

 

現状は少し離れた席ででいつも通り…いや、いつも以上にいちゃつく二人を見せつけられると言う始末。

 

「わっかんねぇなぁ〜、ハーレムとか男の夢じゃんよ…それにまるで興味ありませんとか、彼女の前だからってカッコつけてんのか?…クッソ〜!!今度はまた別の手段でネタを引っ張り出して…」

「へー、面白そうなことしてるね?」

「うひゃい!?」

 

唐突に背後から話しかけられ、アイザックはビクッと跳ね上がる。

振り向くとそこにいたのは…。

 

「え、貴方は…」

「うん。ちょっと…話を聞かせてもらえる?」

 

いつものように笑顔を浮かべるグラスレー寮長、シャディク・ゼネリの姿があった。




いやぁ久々の投稿でしたね
なんか長くなっちゃいました
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