セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
アスティカシア高等専門学園にある寮の一室。
そこでは一人の生徒…ドゥラメンテが腕組みをしていた。
「ふむ…」
ドゥラメンテが周囲を見回せば、置ききれないほどに多い恋人のセセリアとのデートのささやかな思い出が彼のスペースの引き出しやら卓上いっぱいに溢れていた。
「そろそろ片付けるなりしたほうがいいんじゃねーの?」
呆れ顔でそんなことを言うのは同室でありドゥラメンテの友人エドモンドである。
散らかっていると言うほど整頓がされていないわけでは無いが、そもそも二人一部屋の相部屋であるために一人分のスペースがさほど広いと言うわけで無く、ちょっとした小物でも数が多ければ場所を取るのは必然のことだろう。
空になった期間限定の香水の小瓶やら、もったいなくて使えない贈り物のハンドクリーム、予備のチョーカーなどなど、ちょっとした日々の贈り物までとっておいてあるのだから繊細というか雑と言うか…。
「フッ…だが案ずるな我が友エドモンドよッ!!」
「あん?」
キョトンとするエドモンドを脇目に、ドゥラメンテはキザな表現を浮かべつつ、生徒手帳を取り出すと…ピッという軽快な操作音と共にとあるアプリを起動する。
「こんなこともあろうかとッ!!我が寮の収納スペースは更なる拡大を果たしたのだッ!!」
二人の相部屋のちょうどベッドの間あたりの壁の一部がスライドする形で扉のごとく開き、エレベーターが現れる。
「さぁさぁ乗ろうかエドモンド!!」
先にエレベーターに乗り込んだドゥラメンテは、さながら秘密基地へと案内する子どものテンションで手招きする。
ツッコミが追いつかないのか、それとも単純に呆れているのか、それとも興味本位か…エドモンドは大人しくドゥラメンテの後に続く。
そうしてやってきた空間は…ちょうど寮の相部屋と同じくらいの広さの空き部屋と言えるくらいの空間だ。
「オイオイ…こんなモンいつの間に…」
キョロキョロと周囲を見回すエドモンド。
「フッ…おいおい各部屋にも同じような収納スペースを設けるつもりでな。つい先日エレベーター起動の目処がたったと連絡が来たというわけだッ!!」
「いや、そこは普通に倉庫を増やすとかで良くねーか?」
「うむ…それはオレも考えたのだが…」
「だが…何だよ?」
「それではロマンが足りないと思ってな」
「それはわかる」
意外にも賛同したエドモンド。
こういうところは友人同士と言うか、男子共通の夢のようなモノなのかもしれない。
というか、そもそもこれだけの規模の工事を隠す方がよほど大変だと思うが…。
まぁいないタイミングでちょこちょこやっていたのかもしれない。
「つーか、出来てたんならさっさと運び込めば良かったじゃねーか」
「いや、せっかくなのでな。是非是非我が友に見てもらいたかったのだ。出来上がったのもつい最近だったのでな」
「オメー…」
「それと、せっかくの愛するセセリアとの思い出の品ばかりだからな。できる限り近場に置いておきたいと思うのは別段おかしなことではないまろう?」
「そっちが本音かよオイ」
と言うことで…。
気がつけば年の瀬の大掃除…というか、ドゥラメンテの私物の整理整頓が始まっていた。
年の瀬と言えば大掃除。
無論、それはこのアスティカシア高等専門学校とて例外ではない。
尤も、彼ら生徒の大半がスペーシアンのこの学校では生徒が自ら清掃を行うと言うよりは、ハロや業者に一任している場合がほとんど。
生徒たちの健康に何かあってもいけないため、基本的には埃ひとつ落ちてはいない。
しかし、ドゥラメンテは意外とノリノリであり…。
「フッ…清掃…そして整頓するオレもまた美しい…」
ドゥラメンテは手袋をはめ、借りて来たキャリーを押しつつ、エレベーターに乗って行き来を繰り返している。
「ったく…マルシャンの流儀なんだっけか?」
「うむ、己の愛の思い出は己で管理すべし…それこそマルシャンの流儀…というかマルシャンに限った話では無いかも知れんがなッ!!」
「愛の思い出なぁ…思い出で終わんなきゃいいがよー…」
今この場にはいないが、すっかりセセリアもこの寮に馴染んでいる。
それを自然なことと思えてしまうのだから、慣れというのは恐ろしくもあり、それだけドゥラメンテとセセリアとの絆が目に見える形となっている証でもある。
その最たるモノこそ、この思い出の品々だろう。
その思い出のひとつひとつ…壊れ物であってもそうで無くても、さながら薄く脆く儚い薔薇を運ぶように丁重に収納していくドゥラメンテ。
「あれ?ドゥラっち、何してんの?」
「おおメーヴェか!!実はな…」
途中、物珍しさから覗きに来るメーヴェや…
「あ、あの…ドゥラメンテパイセン、お手伝いしましょうか?」
「うむ!!ではエドモンドと共にそちらを運んでもらえるか!?」
おずおずと手伝いを申し出るピエール等、様々な生徒がやって来て、休日の早朝から始まったそれは結局夕方まで続き、締めのお茶会まで開催されて寮の一大イベントのようになったのだった。
そして後日…。
「も〜…ドゥラメンテってば、アタシのこと好きすぎでしょ〜?」
例の部屋に案内されたセセリアがご機嫌にそう言ったのは余談だろう。
年末の大掃除的なお話が書きたかったので。