セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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続きできましたです


第134話

「ったく…なっかなか上手くいかないわね〜…」

 

ブリオン寮のキッチンにて、セセリア・ドートは内心歯噛みしていた。

 

そこにはセセリアが仕入れたのだろうチョコレートやら小麦粉やら、割れた卵の殻、それから使いかけの生クリームなどが少し乱雑に置かれている。

 

とはいえ、それは彼女自身がやると決めたこと。

決めた以上はやり遂げなくてはスペーシアンが廃る。

 

それでこの数日、キッチンの一角を貸し切り状態にしてもらった訳だ。

 

おかげで腕はそれなりに上がったものの、どうにも納得のいくモノが仕上がらない。

それにセセリアは焦りを感じていたのだが…。

 

「セセリア!!ガンバ!!ガンバ!!」

「フフッ…ありがとね〜?ちびハロちゃん」

 

コロコロとエールを送ってくるちびハロの方を向くと、難しい表情を浮かべていたセセリアの顔にも思わず笑みが浮かべると、意を決したように調理器具に再び手を伸ばす。

 

制服の上にエプロンを付けて、生徒手帳で動画を見つつ、包丁を片手に時には一時停止をして、時には自己流のアレンジを加えようとしては失敗し…。

 

そうして積まれた少なくない失敗作の数々は、今や彼女の学友達の胃の中だ。

 

別に彼女が食べろと無理に押し付けた訳ではない。

むしろ自分の失敗作なのだから自分で食べようとしていたのだが…。

 

「セセリア最近慣れないことしてて大変でしょ〜?」

「アタシらは最近大丈夫だし〜…てか買って渡すし?」

 

などと気を使われた訳だ。

 

確かに、バレンタインのチョコレートをわざわざ手作りするなど、セセリアはこれまでした事もない。

大事な相手にはそれなりの値段のチョコを渡せばそれで良いだろうと思っていた。

別にそれが悪いと言う訳ではないし、実際大抵の生徒達はそうしている。

それでも包丁を置いて投げ出さないのは…。

 

「フフッ…」

 

受け取り手の驚いた顔と、嬉しそうな笑顔を思い浮かべると、セセリアも思わず笑顔になってしまう。

 

「セセリア!!ウレシソウ!!タノシソウ!!」

「まあ、そうね〜…」

 

普段やらないことをしているからだろうか。

最初は何が何やらちんぷんかんぷんだったのが、小慣れてきてすこし楽しくなってきたのはあるのだろう。

 

セセリアの頭に浮かぶ“彼”は見栄っ張りなロマンチスト。

カッコつけたがりのナルシストで、しかし恥ずかしげも無く、飽きもせずにこちらに愛の言葉を毎日のように囁いてくる。

 

そんな彼と、やむを得ないとはいえ距離を取ったのは正直セセリアとしても苦渋の決断だった。

 

つい先日彼が来たと言う友人たちから聞いたところによると、一見普段通りなものの、よく見れば普段よりもションボリしているのが見て取れたらしい。

 

セセリアはそれを聞いた時罪悪感を覚えたものだが…しかし、かと言って半端なモノを渡したくもない。

 

それに…会えないのもあと少しの辛抱だ。

 

「ま〜…少しはマシになって来てるし〜?」

 

そう言うなり、セセリアはボウルの中身を見る。

混ぜにムラは無く、艶やかなチョコレートがそこにある。

後はこれを型に入れ、納得いく出来栄えになってくれるのを願うだけだ。

 

「あ、一応メールを送っておかないとね〜」

 

そう言って生徒手帳を手に取ったセセリアの声は、どこか楽しそうに弾んでいたのだった。




バレンタインの前日譚のセセリアさんサイドのお話でした。
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