セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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ホワイトデー編です。


第138話

「ふっふっふ…」

 

アスティカシア高等専門学校の一室にて、不敵な笑みが響く。

 

「ハッハッハハッハ…」

 

その声の主は…。

 

「さあッ!!我が友エドモンドよッ!!共にホワイトデーへの準備をしようではないかッ!!」

 

ご存知ドゥラメンテ・シックールである。

 

ドゥラメンテは寮の厨房にて、友人のエドモンドと共に、制服の上に学園のロゴの印刷されたエプロンを着用して立っていた。

ちなみにこの場にセセリアはいない。

それと言うのも、彼女は決闘委員会の仕事で忙しいのと、なによりホワイトデーのサプライズのためだ。

 

とは言え、ドゥラメンテとしても後で埋め合わせを約束しつつ、隙あらば生徒手帳で連絡を取り合い、後日まるまる一日セセリアのためにとっておくくらいには苦渋の決断ではあったようだが。

 

目の前の調理台の上には卵やらバター、砂糖に小麦粉、それからチョコレートいった製菓材料が並べられ、いかにも準備は万端といったところ。

 

そして、彼らの他にも意外な人物がこの場に二名いる。

 

「ははは…やっぱりドゥラメンテは面白いな」

「ホーント、ホワイトデーのお返しでそこまではしゃげるのは逆に才能なんじゃないのー?」

 

調理台を挟んで向かいにいる彼らは助っ人としてやって来たグラスレー寮が誇るエースパイロットであるシャディク・ゼネリとレネ・コスタ。

 

レネは彼氏が十人いるとも二十人いるとも噂されるほどのモテモテぶりであり、ドゥラメンテが頭を下げてお手伝い兼試食係兼アドバイザーとして呼ばれたのだ。

シャディクはその彼女の付き添い兼試食係兼意見役だ。

 

シャディクは長い髪を纏めて肩から垂らして、やはり学園のロゴのあるエプロンをつけており、レネもまた彼に倣ってエプロンと、それから頭に三角巾をつけている。

 

「いぇ〜いドゥラメンテ〜♪」

 

腕を広げてハイテンションな様子でドゥラメンテに駆け寄るレネ。

しかしドゥラメンテはひらりとかわしてその手を取ると、固く握手をする。

呆気に取られたレネの隣のシャディクとも同様の握手を交わすと邪気の無い笑顔を向け、頭を下げる。

 

「シャディク殿ッ!!そしてレネ嬢ッ!!お忙しい中ご助力いただき、感謝の念に絶えないッ!!」

「あ〜らら、ちょ〜っと悪ノリするのもダメかぁ…ま、別に良いけど」

「フッ…確かにオレの美しさは見る者を魅了してしまうのだろうがッ…申し訳ないなレネ嬢ッ!!マルシャンたる者、浮気はできんさッ!!」

 

ぶりっ子をあっさりやめたレネに、いつもの調子のドゥラメンテはそう返す。

 

「なんか告ってないのにフラれたんだけど?」

「レネ…あまり悪ふざけはするものじゃ無いよ」

「いや何、実際レネ嬢のお言葉を借りられるならば…多少揶揄われるのはむしろ安いというものッ!!材料の準備は万端ッ!!さあ!!ホワイトデーの贈り物の試作開始だッ!!」

 

そうして始まったホワイトデーのお返し作りだったが…。

 

まずは一作目

用意されたのは黒焦げのクッキーのようなもの。

 

「焦げすぎ、やり直し」

「うむ…まあ最初はこんなものだろうッ!!」

 

ズバリと言うレネの言葉にもドゥラメンテはめげていない。

 

二作目

 

今度は見た目は悪くないが…。

 

「今度は生焼け!!腹壊させる気ぃ!?」

「む…むぅ…レシピ通りにやったら焦げたので、オーブンの温度と時間を変えてみたのだが…難しいな…」

 

三作目

 

今度は何やら見た目こそ美味しそうだが…レネが顔を顰めているのには別の理由がありそうだ。

 

「エドモンド…アンタこれ何入れたのよ?」

「あん?なにってマシュマロだが?うめーだろ?」

「やり直し、プレゼントの意味も調べるなり考えろバカ」

「そんな縁起悪かったのか、そりゃー悪かったよ…」

 

それからも何度かリテイクが続き…。

 

「あ〜もう…お腹いっぱいになって来たんだけど〜?」

 

材料もほぼ使い切るほど練習を重ねた面々は、休憩のためにと場所を移したのはドゥラメンテ達の寮の談話室。

周囲は他の生徒達がちらほらといる程度だ。

レネはばふっ…と勢いよくソファに寝転ぶ。

 

「レネが律儀に全部食べてるからじゃないかな?」

「シャディクだって食べてたじゃ〜ん」

 

ソファの側に立つシャディクが苦笑しつつ冷静にツッコミを入れる。

 

「って言うか〜…もう市販品で良くな〜い?」

 

脚をパタパタとさせつつ、そんなことを言い出すレネ。

 

「おいおい、ここまでやっといて身も蓋もねーな…」 

「だってさぁ…別に手作りには手作りで返さなきゃならない義務もルールもないじゃんよ」

「まぁ、それはそうなんだが、ドゥラメンテのヤツがよー…」

 

チラリ…とドゥラメンテの方を見遣るエドモンド。

その視線に気づいてから、ドゥラメンテは座っていたレネから見て向かいのソファからゆっくりと立ち上がる。

 

「フッ…いや、済まないがレネ嬢。そればかりは譲れないッ!!」

「へー…何でよ?」

「フッ…なぜならばッ!!セセリアが愛を込めッ!!心を尽くして作ってくれた手作りチョコにッ!!市販品で済ませようなどとッ!!」

 

そのようにセセリアへの愛を熱く語るドゥラメンテであるのだが…。

 

「いやもちろん市販品を貶める意図は無いのだが…しかし、せっかくの初のバレンタインのお返しの思い出は、一番記憶に残るものにしたいと言うか…」

「乙女か!!」

 

あれだけセセリアと人前でいちゃつきながらこう言う時はモジモジする意外な反応にレネからのツッコミが入る。

 

「う〜ん…でもまた材料を取り寄せるにしても時間もないしね…出来上がったもので綺麗なのはいくつかあるし…この中から選ぶってのもアリなんじゃ無いかな?レネもこれ以上は太りすぎちゃいそうだし…」

 

シャディクは冷静にそう語る。

 

「む…しかし愛するセセリアへの贈り物を妥協するのは…」

「例えばだけど…ドゥラメンテの愛するセセリアが渡して来たチョコがコゲだらけだったとしても、ドゥラメンテは嬉しいだろう?」

「フッ…当然だッ!!例え炭であってもオレにはダイヤモンドと同じ…いやッ!!それよりも価値あるモノだッ!!」

「なら、セセリアもドゥラメンテの気持ちがこもっているならそれだけで嬉しいんじゃないかな?」

 

シャディクからの言葉に面食らったようにハッとするドゥラメンテ。

 

「フッ…なるほど…」

 

と、しばし思案していたドゥラメンテだが…。

 

「確かに…必要最低限の味も大事だが…それ以上に大切なのはオレの気持ちそのものを贈ること…か。思えばそれはいつもオレがやっていたことではないかッ!!」

 

そう言ってドゥラメンテはキザったらしい決め顔をする。

 

「フッ…祖父がオレを送り出してくれて、色々な人と触れ合うことの大切さを知った…そうしてオレはあの日…我が運命たるセセリアと出会えたのだ…」

「急に語り出したなオイ」

「そんな大切なことを改めて思い出させてくれたシャディク殿も、レネ嬢とも…アスティカシアで出会えて良かったと心から思うッ!!ありがとうッ!!」

 

その後、駆け出したドゥラメンテはかつてないほど綺麗にクッキーを包装し、セセリアにそれを渡したのだった。




だいぶ遅くなって申し訳ないです。
暇つぶしのつもりで買ったデモンズソウルが面白すぎたんです…orz
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