セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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続きできましたです。


第146話

場所はドゥラメンテの寮の薔薇園の裏口。

人工の草木の植えられたそこに、二つの人影があった。

ひとつは他でも無いドゥラメンテ・シックール。

そして、そのドゥラメンテと会っているのはニカ・ナナウラだ。

そして、ニカの後ろには何やらカバーのかかった荷物がひとつ。

 

「おお!!これが頼んだ機械かッ!!」

「うん。一応注文通りには出来たけど…」

 

カバー越しに荷物に触れ、ウキウキとした様子で撫でるドゥラメンテ。

予想以上に嬉しそうなドゥラメンテの様子にニカは「あはは…」と笑う。

 

「でも、そんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ」

「フッ…何を言うッ!!これこそ我が薔薇園の新たなる可能性ッ!!君はその扉を開いてくれた大恩人ッ!!感謝も感激もしないわけが無いだろうッ!?」

 

ドゥラメンテは感極まったのか、満面の笑みでニカと握手を交わしていた。

 

話は少し前まで遡る。

 

「ほう…薔薇のジュースか…」

「んだそれ?うめーのか?」

「フッ…どうやら、こういうものらしいのだが…」

 

友人であるエドモンドと向かい合う形で食堂に腰掛けるドゥラメンテが、食後に端末で新たな薔薇関係の情報を収集していたところ、たまたま目に入ったのは、薔薇の花をジュースに加工するというもの。

 

エドモンドの方に向けられた端末の画面には薔薇の花と、その傍に置かれたコップに入った真紅に色づいた飲み物の画像がついている。

 

「ふーん。あんま味が想像つかねーな…」

「フッ…そこも含めて楽しみなのではないかッ!!」

 

薔薇の果実を使ったローズヒップというハーブティーや、薔薇の花そのものを茶葉と一緒に紅茶に使用した所謂ローズティーはあるが、薔薇の花を用いたジュースというのは少なくともエドモンドはあまり見覚えがないものだった。

そしてそれはドゥラメンテにも同じだったらしい。

 

「でもよー…わざわざ新しいモンに手ェ出さなくたって、あそこの薔薇は十分に有効活用出来てんじゃねーか?」

「無論ッ!!これまでの様にドライフラワーや香水にして望む生徒に配布するのも良いだろう…。だが、配るにしても頻度や量が多すぎては却って場所をとってしまうし、相手にも気を遣わせてしまうだろう?そうなれば我々が愛情を込めて育てた薔薇は生徒達から迷惑で邪魔だと思われてしまうだろう?それはあまりに…あまりに悲しすぎるッ…!!」

 

言葉の最中、ドゥラメンテは立ち上がり、演説するかの様に拳を握る。

その様はまるで本当に悔しがっているような…いや、実際本当に悔しがっているのだろう。

 

自分たちが愛情を持って育てた薔薇達が枯れたでも無く、ただ邪魔だからという理由でぞんざいに捨てられてしまう…。

それはドゥラメンテにとって、悲しみ以外の何ものでもないのだ。

 

「故にッ!!香水やドライフラワー以外に貢献できる手立てを探していてな…」

「貢献ー?何にだよ?」

 

そもそも薔薇園自体ドゥラメンテの趣味だったはずだが…。

そう思ったエドモンドがその問いを投げかけるのは当然といえば当然か。

その質問にドゥラメンテは口の端を持ち上げ、ひとつ不敵に笑うと…。

 

「フッ…火星の発展への貢献だッ!!」

 

彼はそう、空を…故郷である火星の方角を見つめながら語った。

 

その後、薔薇ジュースのアイデアに思い至ったドゥラメンテは知己であり、頼れるエンジニアでもあるニカに相談したというわけだ。

 

そんなドゥラメンテは、いよいよと機械からカバーを外す。

姿を現したのはポンプの様な装置…要は薔薇からジュースを搾る機械だ。

備え付けられたタンクの容量も取り敢えずは充分だろう。

 

「フッ…見事な出来映え感謝するッ!!約束通り、謝礼は支払うゆえッ!!」

 

ドゥラメンテは額に手を当て、ビシッとポーズを決めつつ、ニカへの感謝の意を告げる。

 

「まあうん。そこは信頼してるけど…でも良かったの?セセリアさんには話さなくて?」

 

確かに、この場にセセリアはいない。

それはニカにとって…というか、二人の仲を知るほとんどの生徒にとって意外なことだろう。

しかし、その理由は至ってシンプル。

 

「フッ…セセリアにはサプライズにしたいのでなッ!!いつでも新鮮な驚きというのは必要だろう?」

「そっか。喜んでくれると良いね」

 

ある種、予想通りの回答にニカは微笑む。

 

「ああッ!!完成の暁には…まずは愛するセセリアと乾杯したいッ!!」

「あはは、ご馳走様…」

 

その後、セセリアはサプライズに喜びはしたが、事情を聞いて少々むくれた。

 

「ふ〜ん?アタシに内緒で他の女子に頼んだんだ〜?」

 

ブリオン寮のソファで隣に座るセセリアに、徐々に端へと詰め寄られたドゥラメンテはタジタジだ。

 

「あの…セセリア顔が近…」

「そりゃ、近づけてるからね〜?」

 

もちろん、セセリアにもドゥラメンテの恋人としての余裕はあるし、彼への信頼もある。

 

ドゥラメンテとニカとの間に疾しいモノがないことも理解している。

 

それが分かるくらいにセセリアは聡いし、ドゥラメンテから純粋に愛されている実感もある。

 

しかし、それはそれとして…サプライズとは言え何かしら素振りは見せて欲しかったし、ほんの少しだけニカが羨ましかったのもある。

 

そのせめてもの意趣返しにドゥラメンテが揶揄われ、セセリアに存分に甘えられるのは決して罰当たりなことではないのだ。




バラのジュースって最近知ったんですが、高いんですね…。
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