セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
その日ドゥラメンテの寮の休憩室では、カップルの二人が向き合う形でソファにかけてハロウィンを祝っていた。
テーブルの上には色とりどりのお菓子類が並び、中でも薔薇を模したきらめく飴細工で飾り立てられたかぼちゃのケーキは芸術的とさえ言える美しさを醸し出していた。
「ハッハッハ!!トリックオアトリートだッ!!」
バサッとマントを翻し、楽しそうに笑うドゥラメンテ。
おそらくはヴァンパイアの仮装だろう。
「は〜いはい。お菓子はこれで良い〜?」
逆に普段の制服姿のセセリアは袋入りキャンディの包装を取ると立ち上がり、雛鳥のように開かれたドゥラメンテの口にそっと入れる。
「ンッ…変わったフレーバーだなッ!?」
「まあね〜♪だってそれ限定のキャラメルパンプキン味だし〜?」
驚くドゥラメンテに、セセリアはイタズラが成功したように笑う。
「なるほどッ!!通りで…」
「それじゃあ今度はアタシの番ね〜?」
言うなり、セセリアはドゥラメンテの返事を待たずに歩み寄る。
「せっ…セセリア?」
ドゥラメンテは突然のことに気圧され、後退りしてしまうが…ソファに腰掛けている都合上、当然背もたれに背が着くことになってしまう。
セセリアはそれを見るなり、意味深な笑みを浮かべてしなだれかかる。
しかしドゥラメンテとしても、愛するセセリアを受け止めないわけにはいかない。
彼は焦りながらもしっかりとセセリアを受け止め、顔を覗き込む。
それを待ってましたとばかりにぐいと彼の顔を引き寄せ…
「ドゥラメンテからもお菓子くれないと〜…イタズラしちゃうかもね〜?」
ふぅ…と耳に息を吹きかけつつ、そう囁かれる。
「ね…このままイ・タ・ズ・ラ…しちゃっていい?」
「うぉっ…せ、セセリア…」
周囲が気を回して二人きりの部屋で、キスまで数センチと言う距離。
目と目で見つめ合い睦み合う様はまるで世界に二人きりになったようで頬を撫でられるドゥラメンテは魅了されたように鼓動が高鳴る。
「な〜んてね…フフッ♪ドッキリ大成功〜♪」
セセリアはドゥラメンテの耳を愛おしげに撫でてくすくすと、自然とベッドに腰掛ける彼の隣に座り、本当に楽しそうに笑みを浮かべる。
「最近気づきたけど〜…ドゥラメンテってばちょ〜っと耳、弱いよね〜?」
「フッ…なに、愛するセセリアの吐息ならばオレの耳も弱くもなるというものッ!!」
「なによそれ〜?」
セセリアは耳から顔を離してクスクスと笑う。
「さて、今度はこちらもお返しをせねばなッ!!」
そう言うなり、テーブルの上のお菓子を取ろうとするドゥラメンテの手に、セセリアの手が重なる。
「ね…イタズラされたくないの〜?」
「と…ところでセセリア?ブリオン寮でのハロウィンパーティーは大丈夫なのか?」
何度も愛するセセリアからグイグイ来られたせいか、ドゥラメンテは少々焦り気味にそう言った。
しかし彼女がこの後少し顔を出すと言っていたのは事実だ。
「あ〜それ?実はね〜…」
何かを言いかけ、途中で考える素振りを見せたセセリアはやがて何か思い立ったと言わんばかりにドゥラメンテから離れる。
「あ、そうだ〜。ちょっと待っててね〜?」
「うん?それは構わないが…」
鼻歌混じりに部屋を出て行くセセリアに、ドゥラメンテは思わず胸を撫で下ろした。
どうやら不意打ちに弱いのはお互い様のようだ。
それから十分とせずセセリアは戻って来た。
「お待たせ〜♪」
「思ったより早かっ…たな…」
愛するセセリアの声が聞こえた方を振り向いたその時、思いがけない光景にドゥラメンテは固まる。
「ん〜?どうしたの〜?」
「いや、どうしたと言われてもだな…その格好は…」
驚きを隠せないといった彼の表情。
普段の彼を知っている者からすれば珍しい反応だ。
しかしある意味それも無理はないのかもしれない。
それと言うのも…。
「あれ?もしかして似合ってない〜?」
「いや、新鮮ではあるが…」
「あるが?」
セセリアが来ているのは血を模した模様の丈の短い白衣とナースキャップ、そして若干血のようなメイクもバッチリな、いわゆるゾンビナースの格好をしている。
「種類は色々あったんだけど〜…今回は敢えて着たことない格好にしてみたのよね〜…ほ〜ら噛んじゃうわよ〜♪」
普段着ない服装をしているからか、セセリアはその場でターンしてみたり、ゾンビ映画のありがちなワンシーンを真似てみたりしていた。
しかし、ドゥラメンテにはその格好で気になるところがあるらしく…。
「そ、その…露出がだな…」
破れたデザイン故かスカートからは太ももは大きく露出し、胸元も少しばかりはだけている。
そんな格好の恋人を前に思わず赤面し、小声になってしまうドゥラメンテにセセリアはわざとらしく顔を近づける。
「なぁに〜?ひょっとして〜…今更照れてるの〜?可愛いんだから〜」
ドゥラメンテの隣に彼女はクスクスとおかしそうに笑う。
「フッ…まったく、セセリアには本当に敵わないな…」
ドゥラメンテはそんなセセリア相手に却って調子を取り戻したのか、いつものようにはにかむと、セセリアを抱き寄せた。
「むぅ…なかなか手強いわね〜…」
軽く拗ねた様子のセセリアに、ドゥラメンテは行動で謝意を伝えることにした。
「フッ…代わりと言っては何だが…今日は一日セセリアのイタズラに付き合おうッ!!」
「ふ〜ん…?な〜んか誤魔化された気がしないでもないけど〜…じゃあ今から三時間キス耐久出来たら許してあげる〜♪」
「せ、セセリア?それはいきなり過ぎでは!?それにパンプキン味のキスと言うのは…」
「それじゃあ〜…まずは味変からしましょうね〜♪」
その後、ドゥラメンテがセセリアから何度もやり直しを求められたのは余談である。
惚れた女性には尻に敷かれるくらいでちょうどいい…のかも知れない。