セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
愛とはあらゆる物語に於いて語られるもの。
それは時として美しく、時として苦々しく、時として嫉妬し、時として燃え上がり、時として冷める事があったとしても、しかし時として再び日の目を見る。
故にこそ、古くからある物語は時として愛のなんたるかの手本ともなり、反面教師ともなり得る。
殊にマルシャンはその民族性故か、そう言った愛の物語を好む傾向にある。
特に今回ドゥラメンテとセセリアの見た演目は、今となっては古いものの長く愛されている伝統的なものであり、ドゥラメンテのお気に入りのハッピーエンドモノであった。
「フッ…やはりこの公演は見に来て正解だったなッ!!」
「ドゥラメンテおすすめだけあって面白かった〜」
満足そうに最前列のバルコニー席を立つ二人の手にはオペラグラス。
そう、二人はつい先ほどまでオペラを見ていたのだ。
オペラを見終えたドゥラメンテとセセリアの二人は、スタッフに案内されつつ、帰りの船室で寛ぐことにしていた。
そして、先ほど見たオペラの感想を語り合う。
「でもあのお姫様、あっさり敵に連れ去られてたけど〜…もうちょっと抵抗しても良かったと思うのよね〜」
「ハッハッハ!!セセリアからしたらどんな劇中のヒロインも形無しだなッ!!」
楽しそうに聴いている。
「ドゥラメンテ、今日は誘ってくれてありがとね〜?」
「フッ…なに、愛するセセリアのため故ッ!!このくらいはなッ!!」
白いタキシードに身を包む彼は、どこか普段と違った雰囲気を醸し出しており、しかし服に着られる事なくきちんと似合っていた。
「それにしても、ホワイトデーの贈り物がオペラだなんてね〜?」
「う…嫌だったか?」
「まあ、私も気にはなってたし〜?ちょうど良かったっていうか〜…」
ドゥラメンテに向かい合って座るセセリアもまた、派手過ぎず品のあるネイビードレスを着ているセセリアは眉を下げるドゥラメンテを面白そうにくすくすと笑う。
何せ今日はホワイトデー。
先日のバレンタインのお返しの日だ。
「フッ…しかし、贈り物はこれだけではなくてだな…」
そう言ってドゥラメンテがテーブルの上に取り出したのは小箱だ。
セセリアは彼に断って開けると、そこには一輪の雪のような白薔薇があった。
「これってもしかして〜…」
「うむ!!ホワイトデーのチョコレートだなッ!!」
一枚一枚がまるで本物の花弁のように見えるソレは食べるのがもったいなく思えるほどの出来栄え。
手先が器用なドゥラメンテらしい贈り物と言えるだろう。
更にいつの間に用意したのか白薔薇の花束も持っている。
「白づくしね〜?」
ホワイトデーにちなんでなのだろうことを想像し、セセリアはくすくすと笑う。
「どうかオレの気持ち、受け取ってもらえるだろうか?」
ドゥラメンテは立ち上がると、傅くように花束を差し出す。
白薔薇の本数は11本…その意味するところは『最愛』で、さながらプロポーズのようだ。
「ありがとうね〜?ドゥラメンテ」
セセリアは感謝の言葉と同時に花束をそっと受け取る。
白い花が瑞々しく香り、次の香水は白薔薇でも良いかもと彼女はふと思う。
「フッ…喜んでもらえたなら何よりだッ!!」
「フフッ…嬉しそうなのはドゥラメンテもでしょ〜?」
「フッ…確かになッ!!では改めて…愛してるぞ〜!!セセリア〜!!」
「も〜…またそうやって〜…」
分かりやすく安堵していたドゥラメンテを、セセリアはいつものように揶揄う。
「ね…アスティカシアに着くまでまだまだ時間あるし〜…このまま恋人同士のスキンシップでもしない?」
「せ…セセリア?」
そう言うや、セセリアは花束をテーブルに置き、流れるようにドゥラメンテに寄りかかると手の指を絡める。
「あっ、そうだ〜。せっかくだから〜…今チョコを食べさせてもらえる〜?」
「そ、それはもちろん構わないが…」
相も変わらず変なところでウブなドゥラメンテは困惑こそしているものの、愛するセセリアの手を振り解こうとするような素振りは見せない。
「ほ〜ら、食べさせて〜?」
「フッ…甘えてくるセセリアもまた愛らしい…」
やがて慣れからか、さながら新婚のようにいちゃつく二人によって胸焼けするほどに濃密な幸福が満ちたその空間は、しばらく誰も近寄らなかったほどであったとか。
更新遅くなって申し訳ないです…。