セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
母の日。それは母に日頃の感謝と労いを伝える日である。
シックール家の子供たちは父と共に密かにその準備をしていた。
しかし、わざわざ自宅でコソコソすると却って目立ってしまうもので…。
「で〜?子供達と今度は何を企んでるの〜?」
学生時代より髪が伸び、雰囲気も丸くなったセセリアが夫婦二人のティータイムに自身の夫であるドゥラメンテにそうたずねる。
今この場には夫婦の二人のみで、子どもたちは子守り用のちびハロ達と遊びに出掛けている。
そして彼女は自身の夫がそこまで隠し事はできないタチであるのを知っている。
だからこそ公私共に自分がしっかりすれば良いと思っている訳だが。
ともあれ、子供たちの手前なら聞き出せずとも、二人きりなら訳を話してくれるだろうと期待しているのだ。
「フッ…何。やましい事は何もしてはいないさ」
「それは分かるけど〜…」
何せ結婚してからと言うもの、愛に真摯なマルシャンの例に漏れずドゥラメンテがセセリアを不安な気持ちにさせた事はない。
その辺は彼女としても問題視してはいない。
それに…セセリアの方も実は察しはついている。
何せ一番上の娘が物心ついてからというもの毎年貰っているのだ。
故に今年だけ殊更に気になったというわけでも無い。
それでも敢えて聞きたくなったのはひとえに、家族への日頃からの愛情故なのかも知れない。
思い出すのはアスティカシアに通っていた学生時代だ。
「ふんふんふ〜ん♪」
その日、上機嫌で鼻歌まじりに廊下を歩くのは他ならぬセセリアの未来の夫、ドゥラメンテ・シックールその人だ。
その理由は愛するセセリアが隣にいるから…というだけでは無さそうだ。
いつになく嬉しそうにしている彼が気になったセセリアが話しかける。
「ねぇどうしたの〜?そんな上機嫌で〜?」
「む?態度に出ていたか…だが隠すことでもあるまいなッ!!」
ドゥラメンテは大仰に身を逸らすと、空いた右手で前髪をかきあげる。
「フッ…実を言うと母の日のフラワーアレジメントがもうそろそろ完成しそうなのでなッ!!」
「母の日〜?わざわざ律儀ね〜?」
「それはそうともッ!!何せ両親がいなければこうしてセセリアとも出会えなかったのだからなッ!!そういった意味ではセセリアのご両親にも感謝せねばなッ!!」
ドゥラメンテは廊下だというのにテンションが上がったのかそう告げる。
「も〜…またそうやって〜…」
「フッ…セセリアには毎日惚れ直しているからなッ!!」
セセリアは彼の偽り無い本心からまっすぐ見つめられるのは好きだ。
だがそれはそれとして恥ずかしいものは恥ずかしい。
彼女は照れ隠しに赤くなった顔を逸らす。
「それじゃあ…ウチの母さんにも見繕ってくれる〜?」
もののついでと言わんばかりに話題を逸らす。
これ以上人前で愛を囁かれるのは如何なセセリアとは言え少々身が持たない。
「無論ッ!!将来のお義母様への贈り物ならば喜んで手伝おうッ!!」
そうして、時は戻り……。
「実は、母の日の贈り物をだな…」
「あ、やっぱり〜?それじゃあ父の日も期待しててね〜?」
「むっ…バレていたのか…」
「当然でしょ〜?アタシを誰だと思ってんの〜?」
セセリアは昔のように勝ち誇ったようにイタズラっぽく笑う。
結局夫はいつだって愛する妻には敵わないのだった。