セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ドゥラメンテとセセリアの二名は、授業を終えた後、森林のエリアでの森林浴を楽しんでいた。
学園のスクーターを邪魔にならないよう歩道脇に立てかけ、森の中のある程度開けたところに移動したのち敷物を敷いて、その上に座るドゥラメンテとセセリア。
読書をしたり、生徒手帳で各々の友人とメッセージのやり取りを行ったり、たまに横になったり…はたから見ればデートをしているふうに思えるだろう。
というか、実質デートのようなものだ。
「ねぇ、そう言えばさ」
「うん?どうかしたかな?セセリア嬢」
持って来ていた本から顔を上げ、セセリアの方に顔を向けるドゥラメンテ。
「いや…前々から思ってたんだけど…アンタと、エドモンド…だっけ?基本いつも一緒にいるけど、そんなに付き合い長いの?」
セセリアは生徒手帳の画面を見つつ、ぼんやりと質問を投げかける。
それは単純な興味だったのか、それとも別な感情からくるものなのか。
「む?気になるのか?」
「そりゃあまぁ…ねぇ。だってアイツ口悪いじゃない?」
「ハッハッハ!!まぁ確かになぁ」
セセリアもそうだが、彼の友人であるエドモンドもまた大概歯に衣着せない物言いをする。
とは言え、恥ずかしい思いを何度もしておきながらそれでもドゥラメンテと関わるセセリアは物好きなのか律儀なのか、それともお気に入りのモノを手に入れた感覚なのか謎ではあるが。
まぁ、一つ言えるのは、それがドゥラメンテの好む人間の気質であるとも言えるのだろうが…。
ドゥラメンテはパタン…と本を閉じて、ふむぅ…とアゴに手を当てる。
「なに、彼は元々オレに近づいて来た他企業からのスパイのひとりでな」
ドゥラメンテはさらりと、こともなげにそう告げる。
「えっ?はっ?スパイ?」
「うん?ああ、言っていなかったか?」
「いや、流石に初耳なんだけど!?」
周囲に人がいたら驚くくらいには困惑した様子のセセリアに、ドゥラメンテはいつもと変わらない笑顔を向ける。
とは言え、別にそれ自体は珍しいことではない。
ここでは交友関係ひとつとってもバックにある企業の権益が関わってくる。
特にこの学校独自のシステムである決闘などはその最たる例だろう。
何せここでの生徒達のありようは謂わばベネリットグループ所属の子会社や関連企業の関係性の縮図であるとも言える。
そもそもグループ総裁を務めるデリング・レンブランの思想からして、力ある者は誰であれのし上がることができ、そうでない者は食われるのみ、というなかなかに苛烈なもの。
それが色濃く反映されていたとしても別段不思議でも無い。
とは言え、弱者の方にも知恵がないわけではなく、いわゆる金魚のフンの如く強者にすり寄って信頼を勝ち取って企業の情報を聞き出したり、強かにもそれを使って密かに他の第三者の企業と連携したり…さまざまな思惑が入り乱れているのが実情だ。
とは言え、そんな中で特に裏表も無く己の恋路を第一に考えるドゥラメンテは異色もいいところだが。
「フッ…まぁ詳しいことは本人の口から語られないことには…オレが勝手に言っていいことでもあるまいよ。それに…」
「それに…なによ?」
「せっかくこうして二人きりでいるのに、親愛なるセセリア嬢以外の人物の話題を出すのは流石に無礼かと思ってね…」
ドゥラメンテはおもむろに懐から赤いラナンキュラスの花を取り出し、セセリアに差し出す。
「…コレは?」
「造花で申し訳ないが…地球の花だそうだ。ひと目で気に入ったので、セセリア嬢にも共有したくてな…」
そっとそれを受け取って、まじまじと見つめるセセリア。
「セセリア嬢」
「なによ?」
彼女は声をかけられて思わず顔を上げる。
思わず無愛想な声を出すが、ドゥラメンテはそれで機嫌を悪くしている風でもない。
「どうか、これからも忌憚ない言葉をオレに向けてくれると嬉しい」
そういうとドゥラメンテはセセリアの手を取り、微笑んで、じっと見つめる。
「は…ハァ!?なによいきなり!?」
顔を薄っすらと赤くして、狼狽えた様子のセセリアだが、無意識にか、その手に花は持ったままだ。
「ハッハッハ!!いやなに、思わず再確認したと言うことさ」
「再確認?」
「フッ…貴女がとても、魅力的だということがさ」
「ぷっ…」
わざとらしくキザっぽく言って見せるドゥラメンテに、セセリアは慌てていた様子から一転して、思わず少し笑ってしまう。
「何よそれ?相ッ変わらず訳わかんないわね」
「ハッハッハ!!まぁ、それがオレだ!!貴女に笑って欲しいだけの、それだけの小さな男だ!!」
その言葉に、セセリアは呆れた様子でドゥラメンテに視線を向ける。
「ところで、セセリア嬢…」
「なに?古くさいキザなセリフはもうお腹いっぱいよ」
「いやなに、そうでは無く…話は変わるのだが…」
先ほど読んでいた本のページをセセリアに向ける。
内容はどうやら恋愛モノであったらしく、見開きにはとある男女の一枚の挿し絵がある。
「この膝枕なるものをやって欲しいのだが…」
「……………」
「む?セセリア嬢?」
無言でプルプルと震えるセセリアの顔を覗き込むドゥラメンテ。
「お…お…」
「お?」
「起きてたんなら言いなさいよバカァァァ!!」
セセリアはその言葉に、花よりもトマトよりも真っ赤な顔になったのだった。