セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ドゥラメンテが食堂でエドモンドと日替わりランチを食していると、背後から声がかけられる。
「ヤッホー♪ふたりとも〜♪」
ぶりっ子丸出しと言った風で話しかけて来たのはグラスレー寮所属のパイロット科で、その中でもかなりの腕前を持ち、シャディクの側付きの生徒のひとりである、レネ・コスタだ。
他の所謂シャディクガールズと呼ばれる女子生徒共々、ドゥラメンテの両親の会社の製品の得意先でもある。
「おやレネ嬢。フッ…貴女がオレに声をかけてくると言う事は…」
ドゥラメンテが口元を拭いて振り返る。
「そーそー。放課後こっちの寮に来てね。お願いね〜♪」
そのまま手を振って何処かへと向かった。
「げ〜…オレああいうヤツ苦手だわ…ニカ嬢とは別の意味でなに考えてっかわかんねーからよ〜…」
そうこぼす友人に、ドゥラメンテはいつもの調子で返す。
「フッ…だが、わざわざご指名ならば断るわけにもいくまい?」
「まぁ確かに、オメーんとこの上客っちゃあ上客だしなぁ〜」
その後、特に焦る様子もなく、淡々と空になった器の乗ったトレーを片付けるドゥラメンテとエドモンド。
それから数時間後………。
「では…如何いたしましょうお客様?」
エドモンドと一度わかれたドゥラメンテはグラスレー寮の談話室でタブレットを取り出し、とあるページを開いて接客モードの口調で商品を見せる。
「気がきくじゃ〜ん。どれどれ〜?」
「こちらのネックレスなどお買い求めやすくなっておりますが…更に今なら三点お買い上げのお客様には速達サービス、及び送料無料サービスもお付けしておりまして…」
「あぁ〜じゃ、それ買うわ。あとこれとこれとこれも…」
「フッ…ありがとうございます。それからこちらは今季の新作で…」
「あっ、いいじゃ〜ん♪」
時折、通りがかる生徒が
「オイ、あそこでレネちゃんと一緒にいるのって…」
などとざわついて噂が流れそうになるも……。
「何ィィ!?って…よく見たら相手ドゥラメンテじゃん」
「あ、なぁんだ。なら安心だな。アイツセセリアひと筋って話だし…」
「現に自覚あんのか無いのか、普段べったりだしなぁ…」
「最近は痴話喧嘩でもしたのか、そう言うのも聞かないけど…まぁドゥラメンテだしなぁ…」
と、ある意味信頼されているドゥラメンテだった。
「では、私はこれで…」
商談も終わり、談話室に人も自分達以外居ないのを何となしに確認し、そのままグラスレー寮を去ろうとするドゥラメンテの背に、レネは気の抜けた声とともにソファに寝転がりながら声をかける。
「で〜?シャディクから聞いたけどさぁ…なぁんか悩んでんだって〜?」
「むっ、いったいなぜ…?」
「アンタわっかりやすいかんねぇ〜…」
珍しく動揺した様子のドゥラメンテに、レネはニィっと笑って話を続ける。
「さっきの子たちも言ってたけどさぁ、どしたん?セセリアとケンカでもしたん?この時間は人払いしてあっから話してみ?」
「いや、特にそう言ったことは…というか、それを近いうち本人に確認しようと…」
「ふぅ〜ん?で?」
「で、と言うと?」
「だぁ〜からぁ、いつからギクシャクしてんのって聞いてんじゃんよ」
レネは察しが悪いなぁ…と嘆息する。
「む…あぁ、そうか。実は…」
ドゥラメンテはエドモンドにした様に、当時のことを出来る限り思い出して話す。
ひとしきり話を聞き終えたレネはうんうん。と二度三度頷き…。
「あぁ〜…そりゃーどう考えたってやってんでしょうよ」
「…やってる?」
小首を傾げるドゥラメンテに、レネはバッサリと告げる。
「だぁ〜から、寝てる間にチューでしょ」
「ちゅっ…」
さらっと言うレネに、飛び上がらん勢いで立ち上がるドゥラメンテ。
「ど、どどどどうして、そんなことが分かるので!?」
赤面しつつ、明らかに動揺するドゥラメンテ。
レネはそんなドゥラメンテの意外な反応を楽しみつつ、理由の説明をする。
「まぁ、アンタからの説明と〜後は…女のカンってヤツ?」
「カン!?」
「そ、カン」
ん〜っ、と伸びをしつつしれっと告げる。
「アタシもキープくんが他のオンナにちょっかいかけられた時なんか〜って、それは別にいいか…まぁ大抵女のカンって割と当たるし。けっこーバカに出来ないよ〜?」
なかなかにとんでもないことを聞いた気がするが、ドゥラメンテはそれを指摘する精神的余裕は無い。
「し…しかし、仮にそれが本当だったとして、何故レネ嬢がそんなことを…」
ゴロゴロと寝転がりながら、そう問われるとレネはあくびをかみ殺して答える。
「ん〜?ま、アンタはシャディクのオトモダチ?なんでしょ?ならセセリアともども貸し作っといて損はねーじゃんってだけ〜」
特に視線も合わせず、しかし彼女なりに真摯に応じているのを分かってか、ドゥラメンテは再び椅子に腰掛ける。
「で?この憶測が正しかったとして、アンタはどーすんのよ?」
「どうするって、それは…」
「セセリアのこと本気で好きなんでしょ〜?」
「それはもう!!」
「即答かい…んじゃあ次アンタが何すべきか決まってんじゃん?」
ニヤニヤと笑うレネに、ドゥラメンテは思い出したようにしゃっきりとした表情を作る。
「女の子はさぁ〜…ちゃんと気持ちを伝えてもらわないと不安になっちゃうモンなんだって。アレとかコレとか、色々言わなくっても分かるようになるなんてそれこそ何十年と一緒にいるからっしょ?」
「フッ…そうか」
ドゥラメンテはいつも通りにそう答える。
「こうまで尻を叩かれるとはな。ならば…オレのすることは一つしかあるまいて!!」
その表情は普段の、そして最近はなかなか見なくなった自信に満ち満ちたドゥラメンテ・シックールそのものであった。