セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「くっくっ…」
ドゥラメンテの突然のプロポーズに、決闘委員会ラウンジの入り口付近に立っていたグエルは笑いを噛み殺すと、表情を見られないように顔を逸らし
「おおう…相変わらず情熱的だねぇドゥラメンテは」
シャディクはまるで想定していたかのような顔で、苦笑しながらゆったりとソファに腰掛けている。
そして……。
「え?は?え?」
当のセセリアは暴れるのも忘れて困惑しきりと言った様子だ。
「む?もしや…オレはなにか間違えたのか?」
そして、この渦中の中心人物であり、張本人であるドゥラメンテ・シックールはキョトンとしている。
「うむ…今日もオレは相変わらず美しい…」
取り敢えず指輪をポケットに仕舞い、持参していた手鏡で自身の確認をしつつ、いつもの調子でキメ顔をしている。
「ふむん…決闘直後ということで焦ったが…特段髪が乱れているわけでは無いようだが…」
その言葉に、レネは珍しくツッコミを入れている。
「うん。まぁ、ね?方向としては間違ってない。間違っては無いし、ある意味でアタシらが望んだ展開ではある…んだけど」
「だけど?何だ?」
ど天然丸出しの表情でそう言われると、一同はバツが悪そうな表情を浮かべる。
「えっと…階段を数段飛ばししてるって言うか、まぁ最終的に結婚するにしても、まずは恋人関係になってからでも…」
つい先日までは友人から…などと考えていた男が、いきなりプロポーズとは…行動が極端というかなんというか…。
「む?だがしかし、オレはセセリア嬢以外と結婚するつもりは毛頭なくてだな…それなら最初から婚約者として…」
「ケッ…コン…?」
放心状態のセセリアが、やっと理解が追いついたのか、言葉をこぼす。
「いや…まぁ確かに、アタシの立場的に結婚相手は早く決めとくに越したことはないだろうし、コイツが相手なら嫌どころかむしろ万々歳…いや、でもその前段階を十分堪能してからでも問題は無いって言うか、楽しみたいっていうか…」ブツブツ…
いつになく乙女な反応に、ドゥラメンテ以外の決闘委員会達は「え、誰?」と言いたそうにするがドゥラメンテはセセリアに向けて言葉を続ける。
「セセリア嬢、オレは貴女を大事に思っているし、だからこそその意思を重んじたい。このプロポーズが迷惑ならばそう告げて頂ければ…」
「そう…じゃあまずはセセリア嬢って呼び方をやめてくれる?」
困惑が一周して冷静になったのか、それとも未だ困惑しているのか、セセリアはドゥラメンテに向かい普段の皮肉屋ぶりが嘘のように、真っ直ぐにそう言う。
「うん?何故だ?」
「その呼び方…他の子にもしてるんでしょ?」
「それはまぁ、そうだな」
このアスティカシア高等専門学園に於いて、男子生徒には○○殿、女子生徒には○○嬢と敬意を込めてそう呼ぶのがドゥラメンテという男だ。
しかし、セセリアの方は他の女子生徒と同じ呼び方をされるのが嫌だったようで…
「なら、アタシのことは、呼び捨てでいいから…っていうかしろ」
「む?いやしかし…」
先ほどまでの臆病とは打って変わってグイグイと、強めの口調でそう言うセセリア。
しかし抵抗があるのか、今度はドゥラメンテが困惑したような表情を浮かべる。
「それと…その…結婚はまだ早い…からっ…その…」
顔を赤らめ、モジモジと上目遣いでドゥラメンテを見上げるセセリア。
「その二段階くらい前の関係なら…なってやっても…いいっていうか…」
「む…そうか。セセリア嬢がそう言うならば…」
「呼び方」
不機嫌な言い方と、睨む視線に気がつくドゥラメンテ。
「む、そうだったなあ。では、セ…セセリ…」
途端に、今度はドゥラメンテが言い淀む。
「想い人を呼び捨てにするのは…その…ことのほか、恥ずかしいな」
照れくさそうにそういうドゥラメンテ。
照れる基準がいまいち分からない。
「それでは、セセリアとは今後…」
「うんうん」
「親友として…」
刹那、セセリアのツッコミがドゥラメンテに突き刺さるのだった。