セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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続きできました〜。


第24話

 

「親友って…いやまぁ、前進っちゃあ前進なのかねぇ?」

 

寮の談話室で一連の話を聞いたエドモンドは呆れ半分、やはりといった納得半分でそう言う。

 

「いや…しかし、火星では婚約と結婚はセットでな…」

 

火星人(マルシャン)同士は横の繋がりが強く、風習的に婚約まで行けばエスカレーターのように、ほぼほぼ確定で晴れて結婚となる。

婚約破棄という考えそのものが馴染みないのだ。

だからこそ、ドゥラメンテは両親からの婚約者候補を勧めるメールに律儀に返信していたし、想い人がいる旨をわざわざ伝えていた。

他の女性を勧められても困る…と言ったことも。

 

「ったく…でもよー、それでオメーの親は納得すんのか?」

「無論。約束があるゆえな」

 

ドゥラメンテはかつてのことを思い出す。

 

 

「いいかいドゥラメンテ、私たちの宝。美しいだけなら鉱物でも出来る。気高いだけなら役者でも出来る」

 

実家の寝室の壁にかけられている絵画に視線を向けながら、彼の父はそう教え諭す。

 

絵画にあるのは優しくも厳格な表情で狼を抱く甲冑姿の青年の姿。

彼らの讃える火星の神にして軍神たるマルスの姿が描かれている。

 

「だからドゥラメンテ、私たちの宝…覚えておいで」

 

ドゥラメンテと同じ髪色の父の、ドゥラメンテと同じくスペーシアンを愛した父の、温かく大きな手が、幼いドゥラメンテの頭を優しく撫でる。

 

「優しく、美しく、気高い人になるんだよ?それが恵まれて生まれた、そして皆に代表を任せてもらえている私たちの…シックール家の責務なのだから」

 

 

「その教えゆえに…オレは、オレの思う美しさを…この恋を、愛を!!諦めるなどあり得ないのだよ。そして、我が両親はそれを知っているし、理解してくれている」

 

現に、前回その旨を伝えたからというもの、婚約者を勧める旨の話を持ってくることは無くなった。

 

愚直な言葉に同じく愚直で真っ直ぐな眼差し。

 

それは、スパイとして近寄って来たエドモンドを友人とした時も同じだ。

 

彼が火星の新たなるレアメタルの情報を手にしようとドゥラメンテの私室に忍び込み、かつての飼い主にそれを伝えるために欺いた時と同じだ。

 

尤も、いち生徒に過ぎないドゥラメンテがそれを持っている可能性は薄かったわけだが…。

夜中、ベッドに寝そべった状態でドゥラメンテは言った。

 

「我々の先達の格言にこんな言葉がある」

 

『懐の狭い火星人(マルシャン)火星人(マルシャン)に非ず』

『義を見ず、偽りを成して得るものは時の流れと共に全て離れてしまう』

 

「だからエドモンド。キミの過去はオレにとってはどうでも良いし、今どう思っているのかもどうでも良い。オレはただキミと、常に思ったことをそのままに告げるキミと友人になりたい。ただそれだけのことだ」

 

そう言って起き上がり、狼狽えた自身に手を差し伸べて来た時のことを、思い出していた。

 

「ったく…セセリア嬢も厄介なヤツに好かれたモンだなぁ…」

「フッ…オレもそう思うさ…」

 

その時、ドゥラメンテの生徒手帳から通知音が鳴る。

 

「おや?セセリアからだな…」

 

嬢を外したドゥラメンテに、エドモンドは問いかける。

 

「そんで?要件はなんだって?」

 

机に突っ伏しながらそんなことを聞くエドモンド。

それに口元を緩めてドゥラメンテは返答する。

 

「今すぐ決闘委員会のラウンジに来いと…」

「なぁんか最近は遠慮が無くなったよなぁ?」

 

エドモンドはのそり…と上体を起こして、ドリンクを口にする。

そうして、一口飲んだのち、細めた目でドゥラメンテを見遣る。

 

「いいのかよ〜?そんなわがままで他人を振り回す女だって、分かったってのによぉ〜?」

「いいのさ。むしろ…オレは彼女にはそうやって、素直でいて欲しいからな」

 

エドモンドは軽くため息をひとつ吐くと

 

「惚れた弱みってなぁ、厄介だねぇ」

 

そう言って、立ち上がるドゥラメンテを見送るしかできなかった。

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