セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ドゥラメンテはその日、学園の図書室で同級生から手渡された所謂ハウツー雑誌を読み漁っていた。
「ふむふむ…二人の間だけの特別なニックネームで呼び合うことで絆が深まる…か」
雑誌にはニックネームには特別感もあり、その共有によって更に二人の仲は深まるとかなんとか書いてある。
「なるほど…一理あるやも知れん」
ふむ…と、顎に手を当て考える素振りを見せるドゥラメンテ。
何故かそれがサマになっているように見えなくもない。
「彼女の名はセセリア…なので、セセ…は安直すぎる気も…いや、ならば後ろ半分からとってリア?も何か違う気が…むむむ…」
真剣な顔で、親友(と、言いつつ側から見れば実質ほぼ婚約者)のニックネームを考えるドゥラメンテ。
「いっそ、名前とは関係ないところから取ると言うのも…」
「よっ、またセセリアのことか?」
ドゥラメンテが悩んでいるところに、頭上から声をかけられる。
「む…シャディク殿」
声に反応して顔を上げると、決闘委員会の一員にして、御三家のひとつ、グラスレーの御曹司のシャディク・ゼネリが立っていた。
「これはシャディク殿…先日はレネ嬢にも大変お世話になり…」
「いいっていいって。こっちが勝手にやったことさ」
シャディクは立ちあがろうとするドゥラメンテを手で制すると、そのままドゥラメンテの向かいに座る。
「それで、何故オレがセセリア嬢…いや、セセリアのことで悩んでいると?」
なかなか抜けない敬称に、シャディクは苦笑する。
「いや…キミがそこまで頭を悩ませるのはそれこそセセリアくらいなものだろう?」
「む…そこまでわかりやすいかな?」
流石にそんな単純ではないと言いたげな表情でひとりごちるドゥラメンテに、シャディクはヤレヤレといった様子だ。
「自覚がないのか…まぁ、そこもキミの良いところと言えばそうなのかも知れないけどねぇ…」
シャディクはチラリとドゥラメンテに視線を向け、ふぅ…と一息置く。
「ともかく…だ。こちらとしてもセセリアとキミがくっついてくれるのはありがたいことなのさ。見ている分にも楽しいしね」
そう言うや、シャディクはドゥラメンテの読んでいる本の背表紙に目を向ける。
「へぇ〜、カップル長続きのコツ特集…か。この手の本は基本胡散臭いモンだが…たまに本当に役に立つ情報があるらしいぞ?」
「おぉ、そうなのか。いやぁ実は同級生に勧められるがまま読んでいたから何が何やらさっぱりでなぁ。かと言って厚意で渡されたモノを読みもせず無碍につっ返すのも気が咎めるので、取り敢えず静かな図書館で読んでみた所存」
そう言うと、ドゥラメンテは雑誌を開いたままシャディクにも見えるようにテーブルに置く。
「あぁ…どんなあだ名にすれば良いか頭を抱えていたのか…」
シャディクは雑誌を流し見して、そして自身が以前同じようなことを冗談めかして言ったのもあってか、得心したように頷く。
「なるほど。二人だけの特別か…良いと思うよ」
そう言うと同時にシャディクの生徒手帳から着信音が鳴り、シャディクは画面を確認すると椅子から立ち上がる。
「あぁ…すまない。キミとの会話は本当に楽しいが…仕事の連絡が来た」
「そうか。委員会の?」
「いや、それとは別に個人でやってる仕事があってね」
「そういえば…」
シャディクは学生の身でありながら事業主もやっているとかいう話をドゥラメンテは聞いたことがある。
決闘委員会の仕事や学生の本分たる勉学と合わせて、身ひとつでよくやるものだと感心する。
「立派なことだが、あまり無茶はしないで欲しい」
「もちろん。自分のことは自分がよく分かってるさ」
ニコリと微笑んでそう言うと、シャディクは軽く「それじゃあ」と片手を上げてドゥラメンテに背を向ける。
「それじゃ…セセリアとのこと、頑張って」
そう言うなり、シャディクは図書室を後にするのだった。
なお、後日ドゥラメンテがセセリアにニックネームを提案したものの…。
「だ…ダメ!!なんか、むずむずするからぁ!!」
と、顔を真っ赤にしたセセリアに拒否され、この話はお流れになったとか、ならなかったとか。
図書室…あの生徒手帳で大体の情報が手に入る以上、あるのかどうか微妙ですが、たぬきちゃんのやりたいことリストのひとつに、『図書室で勉強』ってあったので、あるんじゃないかなぁと妄想。