セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
アスティカシア高等専門学園。
その決闘委員会のラウンジにて、セセリア・ドートは不貞腐れたようにソファに寝そべっていた。
「ムカつく…」
ボソリ…と彼女が無意識にこぼしたのだろうその言葉は、たまたま同じ部屋にいたシャディクの耳に届く。
「いったいどうしたんだ?セセリア。ドゥラメンテと一緒じゃないなんて、珍しいじゃあないか」
顔だけ向けてそう問うシャディクに、セセリアは何故だかより不機嫌になる。
そして…。
「別に…何にもねーっすよ」
クッションを抱きかかえ、そうとだけ言うと、セセリアはプイとそっぽを向いてしまった。
ドゥラメンテと一緒にいないことも含めて、どうにも気になったシャディクは、敢えて質問を投げかける。
「もしかして…ドゥラメンテとケンカでもしたのか?」
まさかと思いつつ、シャディクは会話の入り口程度の感覚でそう質問する。
それにセセリアはピクッ…と少しだけ反応を返す。
「珍しいな…」
セセリアはともかく、ドゥラメンテは譲歩するということを知っている。
ことセセリアに関して、彼は譲り過ぎているほどだろう。
そんな彼がセセリアとケンカするなど、少し…いやかなり考えられないことだった。
「……別に、ケンカってほどでは無いっていうか…アタシが勝手にムカついてるって言うか…」
「ふむ…」
「その…アイツって、自分の発言で恥ずかしくなることってないのかなって…」
シャディクは一瞬困惑するも…コッソリ生徒手帳で彼を呼び寄せる。
部屋の前で待機しておくよう注文をつけるのも忘れずに。
「だってアイツ!!アタシと一緒にいる時とか…割と余裕そうっていうか、結構平然としてるしっ…!!けど、大事にされてるのは…その…何となく分かるんスけど…」
その言葉を聞いて、シャディクはなるほど。と頷く。
確かに、二人がケンカというか、ぶつかり合っているところを見たことが無い。
ケンカが無い…と言えば聞こえはいいが、元より人間関係とは良くも悪くもぶつかり合いの側面もある。
ケンカするほど仲が良い。とも言うし、一概にケンカが無いのが良いとも言い切れない面もあると言えばあるのだろう。
普段はドゥラメンテの方が上手いこといなしているのだが、そのせいで却って物足りなさが出てきてしまったのだろう。
そして、それ故に不安が頭をもたげてきたのかも知れない。
最近わがままが増えてきていたのも、そう言った不安からなのかも知れない。
尤も、ドゥラメンテの性格からして、そう言ったものはただのカッコつけなのは同性かつ学園でそこそこの付き合いがあるシャディクからすれば何となく分かるのだが…。
恋は盲目というか、セセリアにはそう言ったところが見えにくくなってしまっていたらしい。
そこまで喋らされて観念したのか、セセリアは
「あーもー!!そーですよ!!アタシだけ一緒にいてバカみたいに緊張してんのが気に食わないんですよ〜〜!!」
と、開き直ったのか本心をぶちまけてしまう。
そして、そのタイミングでラウンジのドアが開く。
「話は聞かせてもらった!!」
「えっ!?」
「セセリア!!」
「はいぃ!?」
困惑しきりの表情で思わずそう言ってしまうセセリア。
「オレはセセリアに出会えて良かったと思っているし、大切な存在だと思っている!!そして何より…」
一度言葉を溜めて、ドゥラメンテはいつものように、そしていつも以上に本心をぶちまける。
「セセリアのような美人と一緒にいて!!緊張しない訳がない!!」
それを聞いて安堵したのか、セセリアはほっとしたような表情を浮かべたが、それも束の間。
「だから…そういうことを恥ずかしげもなく言うなってのよ〜〜!!」
女心の複雑さは、今日も複雑怪奇なのだった。