セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ベネリットグループ関連企業の資本から経営されるリゾートフロントでは、プールやスパはもちろんのこと、最新鋭のゲームやゴルフ、スキーといったスポーツの類に加えて、ショッピングのための店まで豊富に揃っているという、まさに夢の空間だ。
そのためアスティカシア高等専門学園の学生達も、毎年休暇の折には大いに世話になるという。
多くのスペーシアン達が、友人との遊びや恋人同士でのデート、或いは家族サービスにと浮かれる最中、シャディクからの後押しによりドゥラメンテを無事誘うことに成功したセセリアは……。
「はぁ〜…」
プールエリアのすぐ横にある食事処で、テーブルに顔を突っ伏して見るからに落ち込んでいた。
「む?どうかしたのか?セセリア?体調が悪いようなら…」
「えぇ〜…いや、そうじゃなくって…」
「では、何か悩み事でも?」
「うん、まぁ…ねぇ」
セセリアはせっかくだからと注文したドリンクやら妙に小洒落た軽食に目を向けると、つい先日起こった出来事を思い出す。
◇
「おぉ〜、キミがセセリアちゃんかぁ〜。確かに可愛い子だ。さっすが我が孫!!女子を見る目があるねぇ〜♪」
そのセリフに気をよくしたのか、ドゥラメンテはいつもの如く前髪をかきあげ恭しく画面越しに一礼する。
「フッ…お褒めいただき恐縮です。が、しかし!!」
「しかし?」
「オレはセセリアの外見のみを見て彼女と添い遂げる決意をしたわけではありませんので!!そのあたりは悪しからず!!」
画面をビシッと指差しながらそう宣言するドゥラメンテ。
まぁ要するに、今後自分に来る見合い話の類は断るようにと言う牽制…というよりは、単なる念押しだろう。
彼の祖父はその言葉を聞くや、一瞬驚いた表情を浮かべたものの…すぐに満足げに頷いたのだった。
◇
「っ〜〜〜!!」
その時のことを思い出してか、身悶えするセセリア。
「それにあの時の格好…思いっきり部屋着だったし…」
シャディクにチケットをもらったのはその日の昼頃だったか。
ドゥラメンテにそれをどう渡したものかと休日をほぼフルで悩みに悩んで、気がつけば寮の門限が近づく頃に。翌日は決闘委員会の仕事があるのが確定しているし、何よりこれ以上先延ばしすると永遠に渡せない気がして、着替える余裕も無かったため着の身着のままドゥラメンテ達の寮へと辿り着き…。
だらしのない格好をドゥラメンテの身内…それも恐らくは一番偉い人物に見られたことを改めて思い出したセセリアは、大いに凹んでいた。
「今後のこともあるし…お爺様には呆れられてないといいんだけど…」
「ハッハッハ!!それではなおのこと、今日という日を楽しまなくては損というものッ!!」
落ち込むセセリアを元気付けるためか、ドゥラメンテは自らの上着を引っ掴むと、そのまま勢いのままに脱ぎ捨てる。
「ちょっ…アンタ…」
セセリアの視線の先には海パン姿のドゥラメンテが、にっこりと爽やかな笑みを浮かべて手を差し伸べている。
「さぁ!!セセリア!!共にリゾートを楽しみ尽くそうか!!」
「ちょっ…確かに服の下には水着着てるけど、そんな強引な…」
「すまないセセリア!!だが、今は強引にでも元気になってもらった方が今後のためと見たッ!!」
軽食を済ませた二人は、そのまま遊びを謳歌することにした。
まるで湖と見紛うほどのプールに数々のゲーム、そして選りすぐりの衣類やら、靴やらの高級店舗を巡った。
一日ではとても回りきれないほどのフロント内を、二人は年相応に楽しんでおり…。
「セセリア、本当に申し訳ない…」
「別にいいわよ…」
はしゃぎすぎたためか、ドゥラメンテがベンチで横になる羽目に。
「すまない…エスコートするつもりが、このフロントが思いのほか広く…」
「ったく…ホントよ。アタシがいなかったらどうしてたつもりよ?」
「む?それは無いな」
呆れがちにぼやくセセリアに、ドゥラメンテは即答する。
「無いって…何がよ?」
「っふ…セセリアを置いて、オレがひとりで楽しむなど…出来はしないということさ」
「ぷっ…」
寝そべりながら格好をつけようとしたためか、動きにいつものキレがない。
その様子に、セセリアは思わず吹き出す。
「む?何か楽しいことでも?」
「いや…アンタ、まるでアタシがいないとダメみたいね?」
セセリアは悪戯っぽく、蠱惑的にそう言う。
「ハッハッハ!!全く、惚れたら負けとはよく言うが…」
「なに?アタシに負けて悔しいの?」
「いや…」
それにドゥラメンテは一瞬考える素振りを見せると真っ直ぐにセセリアを見つめて
「セセリアが元気になってくれるのなら…何度負けても楽しいさ」
そう、恥ずかしげも無く返す。
そして、それに対してセセリアは顔を赤らめて、やっとの事で返せた返事は
「…………そ、そう」と、それだけだったそうな。