セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「さぁセセリア。こちらだ」
「はいはい。お邪魔しますよ〜って…わぁ…」
寮の中庭の広さは、アスティカシアにある寮の中庭にしてはまあまあ広いくらいか。
周囲に円形に巡らされた水路の水が枝分かれしつつ、小川のように出来る限り自然に近づけて設置されており、どこか少年心のようなものをくすぐる。
近くを通るたびに、よく手が行き届いているのだろう四季をイメージして彩ったという四つの区画に、美しく切り揃えられた赤や白、黄色にピンクの薔薇の花が己を誇示するかの如く美しく煌めく。
「へ〜、思ってたよりスゴいじゃん」
「ありがとう。さあセセリア、お手を」
「え、あ…うん…」
ドゥラメンテはためらいがちに差し出されたセセリアの手を若干芝居がかりながらに取り、中庭の水路にかかる小さな橋を渡る。
道中で土の香りが鼻を抜けるがセセリアは意外と嫌な気はしなかった。
花のアーチを抜け、東屋に到着すると、既に準備されていたティーセットとお茶菓子が飾り立てられている。
ドゥラメンテはセセリアの隣から少し離れて椅子を引き、「どうぞ」と手で示す。
「あ、ありがと…」
セセリアが椅子に座ったのを見届けたドゥラメンテは、ハロが持ってきてくれた沸かしたてのお湯で、鮮やかな赤色のローズヒップティーを淹れるとカップに注いで、セセリアの前に差し出したのち、セセリアの向かいの席に座る。
「さて…本来ならば、セセリアを改めて寮の皆に紹介したかったのだが…生憎と、何故だか用事があるようでね…」
心から残念そうにそう言うドゥラメンテに、セセリアは寮の皆が気を遣ったのだろうことを薄々勘づく。
が、敢えてそれを指摘はしない。
むしろ、この時のセセリアは珍しく素直に他人に感謝した。
「それにしても、綺麗な庭ね」
セセリアはリラックスした様子で、色とりどりの庭を見回しながら感心したようにそう言う。
「フッ…自慢の寮生達と共に作り上げたものでね。お褒めいただき嬉しいですよ」
髪をかきあげ、自慢げに言うドゥラメンテはどこかホッとした様子だ。
「ふぅん、楽しいもんなの?」
「フッ…友人と事をなすのは何であれ楽しいものですよ。それに…」
「それに?」
ドゥラメンテの言葉に、セセリアは首をかしげる。
「オレにとって大事な人を、こうして大事な場所に招待できた。その事実だけでもオレには喜ばしいことなのさ」
「全く…アンタって、いっつもそんな事言うのね」
「ハッハッハ!!まぁそうだなぁ…だが、誰にでも言っている訳ではないのは誓って本当だ」
その後、ドゥラメンテとセセリアはここにある花の種類やら、最近の決闘委員会での出来事、セセリアの愚痴やら、ドゥラメンテの相槌に楽しい時間は過ぎて行く…。
気がつけば、生徒手帳の時計は夕方を示しており、ティーポットのお茶もすっかり空になっていた。
「そろそろお開きの時間か。名残惜しい」
「あっそう。アタシともっと居たかったって?」
「まったくその通りだ」
「へ?」
少し揶揄うつもりで言った言葉に、セセリアは驚く。
いや、この返答はある意味分かってはいたが、こうも即答されるとは…。
いつも通りを装うつもりが、これでは質問した方が馬鹿みたいだ。とヘンに顔を赤らめてしまう。
「ともあれ…今日のよき日を記念して、これを貴女に…」
そう言って、ドゥラメンテは用意していたのだろう一輪の薔薇を「どうぞ」と差し出す。
「あ、ありがと…」
セセリアはそれをおずおずと受け取る。
「さあ、帰り道もご案内いたしますよ。レディ?」
「う、うん…」
そう言うセセリアは、いつもよりも歩みのペースは遅く、ドゥラメンテもまた、それに合わせてゆっくりとセセリアを見送ったのだった。
そして、その日一日の出来事を聞いたエドモンドは
「いや、そこまでいったんならもう告れよ」
と、突っ込んだと言う。