セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「そんじゃあ、向こうに話は通してあるからよ」
「ふむ…しかし、寮同士の短期交換交流会など、予定にあったか?」
ドゥラメンテは友人から持ち出された話に、疑問を投げかける。
「いや、オレも驚いてんだよ。実は急に決まった話らしくてな。こっちからはあんま人見知りもしねーし、顔見知りもいるだろうオメーが行った方がいいだろってことになったんだよ」
「ふむ。なるほど…了解した」
納得したように頷いたドゥラメンテはそのまま荷物を持って、ブリオン寮へと向かう。
すると、寮の前でハロを抱きかかえた一人の男子生徒…ロウジ・チャンテが待っていた。
「…いらっしゃい」
「ドゥラメンテ・シックールだ。世話になる」
ドゥラメンテからの挨拶に、小さく頷いたロウジはそのままクルリと扉の方へと向かう。
認証システムによって、ロウジが自身の生徒手帳をかざすと、入寮が許可されたのか、ピピっ…と小さく電子音が鳴って自動ドアが開く。
「それじゃ、こっちに来て」
「うむ。よろしく頼む」
清潔感のある廊下を歩くと、続々と生徒たちとすれ違う。
その度に礼儀正しく、しかしにこやかに挨拶をするドゥラメンテに、生徒たちは何かを察したかのように返事をする。
そして、談話室で爪の手入れをしていたセセリアに近づくと…
「それじゃ先輩。後のことはよろしく」
「え?は?」
それだけ言って、ロウジは何処かへと行ってしまった。
「……で?何でアンタがウチの寮に?」
しばし呆気に取られていたセセリアが、ドゥラメンテに訳を聞く。
「む?セセリアも交流会の話は知らないのか?何やらしばしこちらの寮の世話になることとなってな…」
「ハァ?そんな話、アタシは聞いてないんですけど〜!?」
「うむ。オレ自身も今朝方我が友エドモンドから聞かされて寝耳に水でなぁ…」
取り敢えず、そのまま突っ立っているわけにもいかないというわけで、セセリアはドゥラメンテを連れて、寮監の元へと向かうと、セセリアは二、三話した後に何やらカードキーを手渡され、二人はそのまま寮内でも数少ない個室へと向かうことに。
「む?わざわざ貴重な個室に…いいのか?」
「別に〜?アンタはヘンなことしようとしないでしょ〜?それに一応お客だし〜?」
荷物を部屋におろし、確認のために生徒手帳でエドモンドに確認を取る。
「エドモンド…どうやらセセリアは今回の交流会のことは知らないようなのだが…」
「おう。セセリア嬢との仲がちゃんと進展するまで寮に戻ってくんな。オメーの言う過程は最早カタツムリなんだわ」
「む?それはいったいどう言う…」
状況を飲み込めていないドゥラメンテが、質問をすると、エドモンドはあっさりと真意を伝える。
「…ま、要はオメーがセセリア嬢にファーストネームで呼んでもらえるくれぇの仲になりゃあいいってだけのことよ」
「ふむぅ…それならば、割とすぐか…」
無論、このことはセセリアに伝えるのはダメとのことで、当人にも思うところはあったのか、ドゥラメンテは律儀にもその約束を遵守している。
…なお、セセリアの側にも同じような約束ごとがなされているのは言うまでもない。
まぁ、幸い大抵の授業は生徒手帳の端末が一つあれば受けられるし、着替えやその他馴染みのある生活用品も持たせてもらってあるため、それほど困る事も無い。
中庭の手入れも心配しなくても良いとのこと。
モビルスーツを必要とする授業でも、ブリオン寮のデミトレーナーを貸してもらえるらしい。
ブリオン寮側の寮監も寮長も、ドゥラメンテひとりならばと割とノリノリで、受け入れ態勢はバッチリだ。
そんな中、寮の廊下を歩く二人を見てセセリアの同級生達は目を年相応にキラキラとさせ
「あのセセリアがついに彼氏と同棲をはじめたって〜!!」
「学校の寮でやるなんてダイタ〜ン!!」
などとキャーキャーと噂したり茶化す声もあったが、セセリアにとってはいつものことなのか、少なくとも表面上はスルーしていた。
そもそも個室は個室でもあらぬ誤解を招かないために隣同士とは言え一応は別室なのだが…。
「まったく…アイツら、何がそんなに面白いんですかね〜?」
意識的にか無意識にか、ドゥラメンテの隣をずっと歩いているセセリアはそうこぼす。
「しかし…まさかセセリアが朝に弱いとは…」
「なぁに〜?起こしてくれるの〜?」
ニヤニヤとからかいがちにそういうセセリア。
「む?起こしたほうがいいのか?」
しかし、それにケロっと返すドゥラメンテ。
それを見て更に周囲は盛り上がる。
談話室にて休憩をしていれば、物珍しさのためか集まって来た生徒達に質問を投げかけられるドゥラメンテ。
一応は交流会の名目でこの場にいる以上、ドゥラメンテは律儀に答え続ける。
下級生の授業の質問やら、分からないところも丁寧に答えて、褒められる度
「フッ…セセリアのおかげさ」
「べっ別にっ…!!普通だからっ!!」
と、若干の惚気を挟むのも忘れない。
「セセリアにいっつも口説き文句言ってるのは何で〜?」
などという興味本位の質問にも
「なに、オレが生まれる少し前まで、火星はとても過酷な環境でな…。それこそいつ、誰が死んでもおかしくなかったらしい。だから自分の気持ちは、伝えられる時に全力で伝えるのがマルシャン流というヤツだな」
そう、ドゥラメンテは出来うる限り誠実に答える。
…その度に隣のセセリアが多少顔を赤くしたのは言うまでもないが。
まぁ、からかわれるのが嫌ならドゥラメンテと少しでも離れればいいのだが、何故かそれもしないのだから、余計に突っ込まれたりからかわれるのはある種の必然。
結局、セセリアはドゥラメンテにほぼ毎朝起こしてもらうこととなり、より二人の距離感が近づいたのは良かったのか。
そうして一週間が経過したある日のこと…。
「あっあの…どっ…ドゥラ…メ…くん…」
「うん?セセリア?先ほどオレの名を?」
「いっいや!!気のせいっ!!気のせいよ!!」
…二人の関係性の進展は、存外後少しかもしれない。
なんか長めになっちゃいました。