セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
その日のブリオン寮の談話室では、ささやかながらドゥラメンテの見送り会がされていた。
「先輩。いつ来てくれても良いんですからね〜?」
「ドゥラメンテ、またチェスやろうな!!」
「セセリアちゃんをよろしくね〜♪」
等々、寮内では和やかな空気が流れる。
テーブルの上に並ぶのは、ちょっとした菓子類やジュースなど、如何にも学生らしいラインナップ。
ドゥラメンテはそのひとつひとつを勧められるがままに飲み食いし、話しかけて来る生徒たちと談笑する。
時折、目の端でセセリアを探すが、どうやらまだ準備が済んでいないのか、それとも他に用事ができてしまったのか…この場には居ないようだ。
その様子に気づいた女子生徒がコッソリとドゥラメンテに耳打ちする。
「大丈夫。セセリアならちゃんと来るから♪」
その言葉にドゥラメンテが小首を傾げていると、男女問わず各々の好きなように過ごした一同が突如として盛り上がりを見せた。
「おっ、セセリアだ!!」
「もう一人の主役が来たわね」
ざわめく生徒たちに道を開けられるようにして、セセリアはドゥラメンテの目の前へと歩いてくる。
ゆっくりと噛み締めるように。
或いは、夢が醒めないでほしいと願うように。
「えっと…まずはお疲れ様。それと…あの、コレ…」
セセリアは後ろ手に持つ箱をそっと差し出す。
「コレは?」
「………」
恥ずかしそうに沈黙するセセリア。
「開けても構わないかな?」
「アンタが開けたいなら…好きにすれば良いじゃない…」
優しく問いかけるドゥラメンテに、セセリアは精一杯の言葉を返す。
その言葉に甘えて、その場で開封するドゥラメンテ。
「おぉ…」
それは、デジタルなスペーシアン社会で、今日日なかなかお目にかかれないアンティークなタイプの腕時計だった。
「オレもよく知るメーカーの…相当値が張ったのでは?」
「アタシもよくわかんないけど〜…別にそこまでお高いものって訳でもなかったし〜…」
とは言え、それもセセリアの感覚では、なのだろうが。
「べっ…別にいらないなら捨てても…」
ドゥラメンテはセセリアに歩み寄り、そっと手を握ると、ドゥラメンテはいつになく柔和に微笑む。
「ありがとうセセリア…」
感謝の言葉を述べるドゥラメンテは、感極まっている様子だ。
「大切な人から何かを貰えると言うのが、コレほど素晴らしいことだとは思わなかった。大事にさせてもらおう」
格好をつけるのも忘れ、セセリアの目を覗き込むドゥラメンテ。
「たっ…大切な人って…なんでそんな恥ずかしげもなく…って、ていうか〜!!大事にするのは時計だけなんですかね〜!?」
照れ隠しにそう言うセセリア。がしかし…
「む?無論セセリアもずっと大事にするつもりだが…」
「う…あ、ありがと…」
ドゥラメンテからの無意識カウンターパンチに沈むことに。
やいのやいの言っていた周囲はいつしか沈黙し、今後の行く末を見守ることに決め込んでいるようだ。
「実は、オレからもひとつ、キミに贈り物があってな…」
ドゥラメンテが自身のカバンをまさぐり、綺麗に梱包された箱を手に取ると、そっとセセリアの手の上に乗せる。
「…開けてもいい?」
「もちろん」
少しずつ、包装を解いていき、箱を開けると
そこにあったのは通常よりも小さなハロだ。
そっと、スイッチを入れる。
「ハロハロ〜♪」
可愛らしい機械音声が聞こえ、起動に成功したのがわかる。
「小さいので組み込める回路も少なくてな…片言で話すのが精々なのだが…」
「セセリア!!セセリア!!」
小さなハロはセセリアと目が合うなり、ぴょんぴょんと彼女の手の上を飛び跳ねる。
「え?ちょっ…!!」
「ハッハッハ!!少しばかり元気な子にし過ぎたかな?」
慌てた様子のセセリアに、ドゥラメンテは手を差し伸べる。
「少し、歩こうか?」
「…えぇ」
「皆も、少しセセリアを借りるぞ?」
そう問うと、ブリオン寮の一同は揃って賛同の意を伝えて来た。
「…少し、冷えるな」
木々の面する道を、二人は歩く。
「まぁ、もうそろそろ夜だからね〜」
「楽しかったな」
「ん…そう…」
そっけなく返すセセリアだが、ドゥラメンテはそれに気を悪くはしない。
「あれからオレも考えてな…」
「考えるって、何を〜?」
手の中でうごうごするハロを撫でながら、セセリアは問いかける。
「やはり、結婚するならセセリアのような人が…いや、セセリアがいいとね!!」
ドゥラメンテはクルリと振り向き、少し後ろを歩くセセリアに、満面の笑顔を向ける。
「なので、都合のいい話かも知れないが…前回のやり直しがしたい。とは言え、流石に二度目のプロポーズには早いのでな…」
ドゥラメンテはセセリアの手を取り真っ直ぐにその目を見つめる。
「セセリア、どうかオレと…」
ドゥラメンテがそう言った時……
「おっ、キタキタ!!」
「ヨシ!!今だ!!行け!!」
「…む?」
目の前の茂みから、珍妙な格好をした何者かが飛び出して来たのだった。