セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
すっかり馴染みの行き先となったドゥラメンテの寮の薔薇園で、ドゥラメンテとセセリアはクッキーやマカロンをつまみつつ、お茶を飲みながら世間話に花を咲かせていた。
「そういえば〜…」
セセリアは持ち上げたカップをソーサーに戻しつつ、ふと思っただろうことを口にする。
「うん?」
「アンタはホルダーの座に興味無いの?」
それは、ある意味でドゥラメンテを試しているかのような質問。
パイロット科の生徒ならば大抵は目指すであろう学園最強の、そしてデリングの娘であるミオリネの夫となることによって得られるだろう次期総裁の座。
別に、セセリア自身にドゥラメンテの心を疑う気持ちやら意図があったわけではない。
強いて言えば、ちょっとした意地悪というか、返答が分かりきっているからこそ…或いは、セセリア自身のささやかな自尊心を満たすための、そんな問いかけだった。
「無いな」
だが、予想していた回答は、セセリア自身が思っていたよりも早く来た。
ドゥラメンテは2秒と待たず即答したのだ。
「ホルダーになると言うことは、ミオリネ嬢との結婚がほぼ確定してしまうということ。それはセセリアへの裏切りに他ならないし…何より…」
「何より…?」
ドゥラメンテは少し間を開けて、セセリアを見つめる。
「ホルダーには挑戦者がいる限り、二週間に一度決闘を受ける義務が生じるのは知っているだろう?」
「ま〜アタシも決闘委員会の端くれだし、それくらいはね〜」
逆にホルダーにそういった義務がなければ、旧ホルダーに勝った途端に新ホルダーが決闘をわざと断ったり避け続けたりし続けて、ミオリネの誕生日まで最悪逃げ切ることも視野に入るので、これはむしろ決闘というシステム、そしてミオリネというトロフィーがある以上、必須と言っていいルールだ。
もちろん、本人のプライドやら親の会社のメンツ的に、周りの目を気にすることもあるだろうから、よほどのことがなければ完全に逃げを打つとも思えないが。
それでもあるに越したことはない決まり事ではある。
「それはつまり…セセリアとの、こういった大切な時間が明らかに減ってしまうと言うことだ。それだけでも、オレにとって何の利もないどころか害ですらある」
その言葉に、セセリアは緩みそうになる頬を必死に堪える。
顔を逸らし、周囲の花を見ているフリをして、熱くなった顔が戻るのを待つ。
自分から質問した割には「ふぅん…」と興味なさそうに返すのが精一杯なくらいに、今のセセリアには余裕が無かった。
そんなセセリアの心境を知ってか知らずか、ドゥラメンテはさらに続ける。
「だからセセリア、こうして一緒に居ることを許してくれてありがとう。セセリアのような人と同じ時間を過ごせることは何にも変え難い幸福だ」
「は〜いはい、その手のお世辞は聞き慣れてます〜」
ぬるくなったお茶を飲みながら、未だにそっぽを向くセセリア。
ちびハロは二人の時間に茶々を入れられたくないのか、電源を切ってあるらしく、セセリアの空いた方の手で大人しく撫でられている。
「ったく…そこまで言うならさっさと…」
そう呟いたセセリアはこの穏やかな時間もまた嫌いでは無かったのか、文句を言うようなセリフに反してかなり柔和な表情を浮かべている。
そして彼女はそう言えば、と不意に質問をする。
「にしても、アンタ…グエル先輩に負けるとか思わないわけ?」
現ホルダーのグエルは御三家の一角にして、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの絶好調。そんな彼に果たしてドゥラメンテが勝てるのか、自分で質問して気になったようだ。
それに対する解答はあまりにもシンプルであり…。
「フッ…セセリアの声援ある限り、オレは負けないさ。それこそ…誰が相手でも」
「………ばか」
再び意表をつかれたセセリアは…そう短く、可愛らしい悪態をつくしか出来なかった。