セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「ねぇ?ホントに行くの〜?」
ミオリネの温室への道のりで、学園のスクーターに乗りつつセセリアがぶーたれた様子で言う。
だが、ドゥラメンテのメールを見て来ると判断したのは他ならぬ彼女自身だ。
「すまないセセリア。だが…どうしてもミオリネ嬢の話を聞いておきたくてな」
ドゥラメンテがそう言いつつそっと撫でたのはミオリネへのお近づきの印にと用意したピンクの薔薇の小さな鉢植えだ。
小さい温室でも邪魔にならないサイズのものを選んだ。
やがて目的地である温室が見えて来ると、二人は邪魔にならない位置にスクーターを止める。
温室の入り口に近づくと、中には作業中の少女…つまりは目的の人物であるミオリネ・レンブランを見つける。
「これはミオリネ嬢。この度はご了承いただき感謝いたします」
ドゥラメンテはそう言うと、深々と綺麗なフォームで頭を下げる。
「やめて。そうやってわざとらしい敬語で話しかけられるとムズムズするのよ」
ミオリネはトマトの世話をしつつ、ミオリネはトゲのある様子でそう答える。
やがてひと段落したのか、ミオリネは温室の中から出て来る。
「…で、何か用?わざわざアンタらのノロケを聞くほど私も暇じゃないんだけど。それと…条件は忘れてないでしょうね?」
今回、ドゥラメンテがミオリネに話を聞く上でひとつ条件が提示された。
それはミオリネの許可が無い限り、温室に入らないこと。
そして、ちょっとした雑用を引き受けることだ。
ちなみにドゥラメンテはそれに二つ返事で了承していた。
「なに、立ち入られたく無い己の中の聖域と言うものは誰にでもある。むしろこちらはこうして機会を作ってもらえただけでも感謝して余りあるくらいだ」
今度は軽く会釈にとどめ、バラの鉢植えを渡す。
「…そう。それじゃあ早速そこの肥料運んでくれる?」
ミオリネは受け取った鉢植えの入った袋を持ちながら、温室の脇に置かれたそこそこの大きさの肥料の袋の山をぶっきらぼうに指差す。
「はぁ?ドゥラメンテと話をって…」
セセリアがムッとしてそう言うが…。
「だから、その前にここを片付けておかないとって話でしょ?」
ミオリネはしれっとそう返す。
使えるものはこの際限度いっぱいまで使う魂胆なのだろう。
「フッ…喜んで手伝うとも。セセリアは休んでオレの頑張っている姿を見守っていてくれると嬉しい」
「ちょっ…流石にこれだけの量、アタシも手伝うって…」
「そうか、それでは一緒にやろう。くれぐれも無茶はしないで、必要なら休憩を挟もうか。まずは上の方からやって、後は比較的軽いものを…」
肥料やら壁にかける鉢植えやらを必要数ドゥラメンテとセセリアが温室の入り口まで運ぶと、ミオリネは少し感心したような表情を浮かべていた。
「ふぅ…何とか…ハァ…終わったぞぅ…」
「思いのほか早く終わったわね。一応お礼は言っておくわ」
そう言うと、ミオリネはドゥラメンテと並ぶように階段のところに腰を下ろす。
ドゥラメンテの汗をタオルで拭きつつそれを見たセセリアは、何故かいつもより距離が近くなっていたが。
「それで…何でわざわざ私に聞きに来たのよ?その気になれば、生徒手帳で調べるなり何なり出来るじゃない?」
投げかけられたのは当たり前の疑問だ。
「フッ…スペーシアンとの交易の利潤によって我々の環境は多少改善したとは言え、火星の土壌は未だに豊かとは言えなくてな…。育つ野菜といえば、多少の品種改良を施した芋やとうもろこしがせいぜいだろう。だからと言うわけでは無いが…学園でピエールに出会い、寮の薔薇園を作ることに触れて、植物の持つ力強さや脆さ、難しさや繊細さに触れた。だからこそ、オレは故郷のためにも、あらゆる視点での生の知識を持ち帰りたいと…そう思っただけだ」
ドゥラメンテはそう言うなり、先ほどミオリネの出てきた温室を見る。
「見たところ、ミオリネ嬢の世話は行き届いている。温度も湿度も、肥料の具合もちょうど良い。オレはそれが分かっただけでも一見の価値はあったと思っているよ」
「ふ〜ん…アンタ、意外と見る目あるのね」
自慢の温室を褒められて、少しばかりミオリネの口角が上がっている…ような気がする。
「フッ…お褒めに預かり光栄だ。だがオレはセセリアひと筋ゆえ、惚れるのは勘弁していただきたい」
「いや、それは無いから」
そうミオリネがズバッと言った言葉にドゥラメンテは大いに笑い、セセリアはどこかホッとした様子だ。
「ちなみに、作物に関して面白い実験結果があってな…何でも作物にクラシックを聴かせると、よりいっそう美味しくなるとか…」
「プラシーボ効果っぽいわね、それ」
「因みにオレは、薔薇の世話をする時などは美しく咲いておくれと、いつも語りかけている」
「…なにそれ、別に聞いてないんだけど」
「フッ…だが、一考の余地はあると思うが…」
「バカバカしい…って言いたいところだけど、まぁ一度くらいは試してみても良いかもね」
「ちなみに、今度あの会社が出すと言う新肥料は…」
「ああ、それなら…」
そうして植物談義に花を咲かせていると、ミオリネはセセリアが置いてかれ気味な様子に気がつく。
「フッ…セセリアは側にいてくれるだけで良い。今回の手伝いも、セセリアがいたから頑張れたようなものだ」
「は、ハァ?大袈裟なんですけど〜?」
先ほどまでむくれていたセセリアが、今度は焦ったように顔を赤らめる。
「なに、惚れた相手と言うのはそれだけ特別なのさ」
「あぅ…でも…できる限りのことは…その…してあげたいし…」
「ありがとう!!やはりセセリアは優しいな!!」
「ちょっ、近い!!」
「ハッハッハ!!今日はどちらかと言えば、セセリアの方が近かったと思うが…っと、すまないミオリネ嬢」
「…アンタ達、イチャつくならよそでやってくれない?」
「いちゃっ……?」
人から言われて自覚したのか、セセリアは更に赤くなる。
それを意外なそうなものを見るミオリネと、優しく見つめるドゥラメンテなのだった。
ガンプラって基本好きなの買うんだけど、組み立ててる最中とか余計に愛着わく…わかない?