セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
アスティカシア高等専門学園に於いて、というか学校では避けることができず、しかも生徒からあまり歓迎されない行事…それが定期テストというものだ。
寮の自室で今回のテスト用紙を片手にポーズを取るのはご存知、ドゥラメンテ・シックール。
「フッ……赤点を取るオレも美しい…」
「赤点じゃあなけりゃあもっと美しいんじゃあねぇの?」
そしてその隣で冷静にツッコミを入れているのは彼の学友、最近フレームを新調したという眼鏡が眩しいエドモンド。
「フッ…それはつまり…オレはまだまだ美しくなれる伸び代があるとっ…?ああ怖い…自分の可能性が怖すぎるっ…」
そんなことを言うドゥラメンテは次々と別のポーズをとっている。
「ポジティブだなぁ〜…羨ましいや」
「なに、過去を嘆いても致し方あるまい。生きていれば悪いことも良いこともある。そう…セセリア嬢に出会えたオレのように!!」
「へぇへぇ。相手にしてもらえりゃあいいな」
そんな話をしていると、二人の所属寮の外からなにやらざわめきが聞こえてきた。
「おいおいマジか?」
「あの女、確かアイツの…」
「ついに応える気になったのかなぁ?」
「あそこまで一途だと報われて欲しいよなぁ〜」
ここまでの騒ぎは珍しく、何事かと気になった二人も寮の入り口へ向かう。
「おや、これはセセリア嬢」
ドゥラメンテの声が聞こえるなり、バッと振り向くセセリア。
「あ…その〜」
が、ドゥラメンテとは目を逸らし、気まずそうに頬をかく。
「珍しいな。貴女がわざわざオレのいる寮に来るとは…決闘委員会の仕事の一環か?」
「別にそう言う訳じゃあなくて…えっと…まずはありがと。アンタのお陰でヘンなヤツに付きまとわれずに済んだ…」
あの皮肉屋で知られるセセリア・ドートが素直に礼を言った!?
ヘンなヤツで言えばドゥラメンテも大概では!?
その事実にとかく周囲は騒然となる。
「ふっ…なぁに、オレはただ挑まれた決闘を受けたまでのこと…むしろ勝手に巻き込んでしまって申し訳なかった」
無駄のない動きで頭を下げるドゥラメンテ。
こんなことでも華があるのだから腹立たしい。
「あ、いや…別にそう言うのはいいから…」
いつになくしおらしいセセリアに、ドゥラメンテは何事かと小首を傾げる。
「して…御用向きの程は?」
「だから…その、お礼として…見てあげるわよ」
「見る?」
要領を得ない、と言った風に
「あぁ〜!!もうっ!!だからっ!!アンタ赤点取ったんでしょ!?アンタの勉強見てやるって言ってんのよ!!このバカ!!察しなさいよ!!」
既に湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしたセセリアが、そのままズカズカとドゥラメンテの手を掴んで寮の外で連れ出す。
「アタシが勉強見てやるんだから!!追試で赤点取ったら承知しないわよ!?わかった!?」
「ふっ…承りました、レディ」
そうして、追試までの数日の間、ドゥラメンテはセセリアにほぼ付きっきりで勉強を見てもらった。
「それで、ここはこの公式を当て嵌めて…」
「ほう…なるほど。セセリア嬢の説明は分かりやすい。流石は経営戦略科といったところか」
「なに?経営戦略科なら誰でもいいってことですか〜?」
「はっはっは!!いや、今のは失言だったな申し訳ない!!」
時たま、セセリアの口の悪さが表に出るも素直に謝られるためにすぐその矛先を失う。
「まったく…それで、次の問題は……」
その結果、見事に追試合格という結果を出したのだが…。
「それで…このままだとアイツが取られるかもってハッパをかけたら思いの外乗り気で出て行ったセセリアが…なんで戻ってきたらソファに顔を突っ伏して落ち込んでるんだ?」
シャディクが首を傾げる。
「はは〜ん?さては自分だけ緊張してたのに向こうがあまりにいつも通りだったからスネてんのか?」
「グエル先輩…」
「お?な、何だよ…」
ゆらり…とゾンビのように立ち上がり、自分の方に向かってくるセセリアにグエルは思わず気圧される。
「この
「ちょっ…」
「セセリア!!それは流石にダメだ!!嫌味とか皮肉とかそういうレベルじゃあ無くなる!!」
毒を吐き終えて、ゼェゼェと息を乱すセセリアは、開き直るように言葉を紡ぐ。
「そうですよ!!あぁもう!!なんで向こうはソワソワしないのよ!!普段は言い寄ってくるクセに!!こんな時に限って真面目とか!!理不尽
でしょ!!」
いつになく取り乱すセセリアに、周囲は引き気味だ。
そりゃあ流石に補習時にまでおちゃらけるほど彼も不真面目ではない(というか、本人としては常に至って大真面目である)わけで…。
限られた数日の間でも、できる限り時間を作ってドゥラメンテの隣に座ってみたり、軽く肩に触れてボディタッチをしてみたり、彼女なりに努力をしたものの…彼の対応はそれ以外には普段と変わらない。
もしかしたら自分の見ていないところで他の女子にも同じことを言っているのでは…などと変な想像が頭をよぎったその時…。
「あの、セセリア先輩。肝心の自分の気持ちは伝えたり、デートに誘ったりはしたの?」
ロウジがぽろっと言った言葉に、セセリアはハッとする。
「………あ」
何か失念していたことを思い出したかのような、やっちまったと言いたそうな表情を浮かべ固まる。
「あ〜…そりゃあ変わらんわ」
一方、同時刻のドゥラメンテは…。
「で?なんでこのチャンスを生かさなかったんだよ?」
「フッ…礼をと言っている相手につけ込むのはオレの主義ではないのさ…」
「そこ日和るとかチキンかよオメー」
そういや学園モノの割に授業とかテストの描写ってあんまり無かったなって。
まぁ、2クールっていう話数の制限上仕方ないんでしょうけど。