セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
それは、とある日のデートの時のことだった。
ブリオン寮の談話室にて、ドゥラメンテにセセリアが相談事をしたいと持ちかけたのだ。
「む?セセリアが我が寮の薔薇園の手入れの手伝いを?」
唐突な申し出に、ドゥラメンテは手にしたソーサーにカップを置きつつ首をかしげる。
とは言え…ドゥラメンテとしては別に、自分の寮の庭に他人に手が入るのを嫌っている訳ではない。
むしろ、こう言ったことはどちらかと言えば、セセリアが面倒くさがりそうな事柄だ。
だからドゥラメンテも手伝って欲しいと言ったことも頼んだ覚えも人手不足を愚痴った記憶も無かったので、とにかく不思議がっていた。
その疑問に答えるように、向かいに座るセセリアは己の心中をぽつぽつと明かす。
「アンタが…その…アタシをいつも気遣ってくれてるのはわかってるし…それが、その…嬉しいっていうか〜…露骨にヘンな下心みたいなのは感じないし〜?」
「フッ…好いた相手にそう言ってもらえて嬉しいな!!」
ドゥラメンテは決め顔をしつつ、いつものように言う。
「でも、その…この前の温室に行って、その後も何度かお邪魔した時にふと思ったんだけど〜…よくよく考えたらアタシ、アンタのことうっすらとしか分かってなかったっていうか〜…」
確かに、ドゥラメンテはつい最近まで趣味のことは話していなかったが。
はっきりとセセリアにわかっているのは、火星出身者であるということと、決闘がそれなり以上に強いということ、そして他ならぬセセリアへの裏表ない愛情くらいか。
「だから、えっと…ドゥラメンテのこと、もっと知りたいっていうかさ〜…」
「なるほど、その第一歩として薔薇園の手伝いがしたいと…」
セセリアは意図を汲んでもらえて少々照れくさそうに頷く。
そんな彼女の様子を見つつ、ドゥラメンテは顎に手を当てて、ふむと考える素振りを見せる。
花の手入れが思いのほか大変なのは一から薔薇園を作る際に寮の仲間達と何度となく失敗して来たドゥラメンテは知っている。
無論、初心者にもできることもあると言えばあるが…そう言ったことをする場合、大抵は力仕事だったり地味に腰に来る作業だったりするわけで…。
まぁ、その辺はハロにフォローして貰えばいいのだが…。
何より…薔薇園の薔薇にはどれも鋭い棘がある。
万に一つでもセセリアが怪我をするようなことがあれば、きっとドゥラメンテは美しさをどうのと言えなくなるくらいに慌てふためいてしまうだろう。
まぁ、ざっくり言ってしまえば想い人に情けないところを見せたく無い男心という奴だろうか。
かと言って、セセリア本人のやる気を無碍にするわけにもいかず…。
「それに…」
「それに?」
「ゆくゆくは結婚するんだったら、その…なおのことお互いのことは…よりわかってたほうがいいかなぁ〜…なぁんて…」
そんな気の早い発言に、ドゥラメンテは一瞬で心を固めた。
「フッ…了解した。では次の休みにちょうど手入れがあるのでその手伝いをお願いしたい」
そして、それから数時間が経過した今現在…。
「…………で、思わずOKしちまったと?」
談話室のテーブルを挟んで、呆れ顔で自身を見る友人にドゥラメンテは相談を持ちかけていた。
「フッ…エドモンドよ、手伝ってくれるか?」
「っとに、セセリア嬢のことになると四割増しくらいでアホになるなオメー」
ドゥラメンテはエドモンドに頼み込んで、セセリア用の道具を至急用意してもらったのだった。
そして、その頃セセリアは…。
「えぇっと〜…彼の趣味に興味を示すことでデキる彼女アピール…これでいいよね〜…」
「セセリア!!ワクワク!!ワクワク!!」
「も〜、そんな飛び跳ねたら危ないでしょ〜?」
机の上から転がって来たちびハロを撫でつつ、同じ寮の女子生徒に勧められた恋愛ハウツー本を鼻歌まじりに読んでいたのだった。