セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ドゥラメンテはセセリアを連れて自寮の薔薇園までやって来ると、いつもの東屋では無く本日の作業場所に辿り着く。
「ではセセリア。この手袋をはめてもらえるか?」
ドゥラメンテはハロが運んできたかごから、一組の手袋を差し出す。
「へぇ〜…こんなに分厚いのするの〜?」
こういったものを実際に使用するのが新鮮なのか、セセリアは食い入るように受け取った手袋を見つめる。
飾り気は無く、軽く引っ張ってみると素直に伸びる。
が、すぐ元の形に戻る。
「フッ…特殊な繊維で柔軟かつ頑丈に作られた特注品だ。知っての通り、薔薇という花には棘があるからな。それに…」
「それに?」
「セセリアの綺麗な手に傷でもついたらそれは大問題だ」
その言葉に、セセリアは呆れた様子で返す。
「大袈裟ね〜…アンタ達も作業中に傷を作るくらいフツーに経験あるんでしょ〜?」
「まぁ…それは確かにそうだが…」
「ならさ〜、そのくらいでいちいち文句は言わないって〜。過保護にならなくってもちゃんと教えてもらえればいいからさ〜」
そう言いつつ、ススッとドゥラメンテの側まで近づくとそのまま手袋をはめ、次の指示を待つ。
「とは言え…今回は特に難しいことをするわけでは無い。今回は除草作業が主になるだろうな」
その証拠に、この場にはドゥラメンテとセセリアの二人きりである。
枯れていたり、病気になった所がないか見て回ったり、土の様子を見て、肥料が足りているかどうかを確認したり…そういった経験が必要かつ定期的なチェックは先日寮生一同で既に済ませてあるからだ。
「ん〜…やり方教えてくれる〜?」
「了解した。だが、キツいようなら…」
「は〜いはい。無茶はしませんよ〜」
ドゥラメンテはセセリアと共にかがむ姿勢になり、ひととおりやり方を教示する。
「幸い草刈機を使うような長さのものは無いからな。こうやって、機械では届かないような隙間から出てきている雑草をひとつずつとっていってもらえれば…」
「ふ〜ん…結構手間がかかってるのね〜」
そうして、ドゥラメンテがセセリアからの手伝いをしつつ三時間ほどが経過した頃…。
「ふぅ〜…正直、体力にはちょ〜っと自信あったんだけど〜、思ってたより重労働ね〜…」
ハロの押すカートに乗ったカゴに、広さゆえかそこそこに集まった雑草を見て、セセリアはベンチに座って汗を拭く。
「ハッハッハ!!しかしよく頑張ったなセセリア。最初でこれだけ取れれば上々ではないかな?」
「そ〜?」
「それで、どうだったかな?」
「まぁ、新鮮ではあったけどね〜」
大変ではあったが、どういったわけかそれなりに充足感を覚えるセセリア。
それは普段やらないようなことをやったからか、それとも…。
「オレの趣味について、少しはわかったかな?」
「…ま、酔狂だけじゃ出来ないってことはね〜」
「そうか。少しでもセセリアなりの感想が聞けて良かった」
ドゥラメンテは笑顔でセセリアに手を差し伸べる。
「疲れただろう?さぁ、お茶にしようか」
「…ちょっと待って」
セセリアは怪訝な表情を浮かべ、一部を睨む。
そこには…。
◇
「クッソ〜シックールのヤツめぇ〜…セセリアさんをたぶらかしやがって…しかも今回はこともあろうに土いじりをさせるだなんて…バイ菌が入ったらどう責任とってくれるんだアンニャロ〜…」
忌々しげに寮の外からドゥラメンテとセセリアを見る二つの人影があった。
「だが、どうするよ?セセリアさんを奴と引き離そうにもアイツ決闘超強えし?それに学園の連中は決闘委員会をはじめ、ほとんどあの二人の応援ムードだしよ…」
「フン、策は決まっているさ。ズバリ…奴の弱みを握る」
得意げに語る生徒に、もう片方はギョッとした顔をする。
「弱みィィ?ンなもんどうやって集めるんだよ?」
「ククク…奴との決闘で要求された道具の中に盗聴器を仕掛けてある。それを使えばきっと…」
そう言いつつ悪い顔をした生徒だったが…。
「オイ、お前達そんな所で何してる?」
唐突に背後からかけられた声に、その二人組はビクッと肩が震える。
「ひっ!!先生!!」
「なっなんでも無いです〜!!」
そのまま二人は全力ダッシュで走り去って行ったのだった。