セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
火星大会議場。
そこは、火星における最高意思決定機関であり、火星独立の象徴でもあり、また、マルシャン達の今後を話し合う神聖なる場である。
円形に配置された席には、各々火星を担う実力者が揃い踏みしており、彼らの視線は一人の人物を見つめている。
その人物こそ、火星独立の偉業を成した偉人にして、ベネリットグループに火星の土を踏ませることなく弁論と交渉にて信用を勝ち得た大人物。
シックール財閥代表、そして彼らのリーダーであるシックール卿である。
コツコツとゆったりと、しかし力強い歩調で階段を下り、中央の弁論台へと登壇したシックール卿がコホンと勿体ぶるように咳払いを一つ。
「さて…今回皆に集まってもらったのは他でもない…どうしても伝いたいことがあってな…」
そして…周囲をじっ…と見回すと、パッと明るい顔になり…
「うちの可愛い孫に彼女ができたぞ〜!!」
うおおぉぉぉぉ!!!
その言葉に、会議場は大いに盛り上がる。
「いやぁめでたい!!」
「まこと、おめでとうございまする!!」
シックール卿は万雷の拍手に、ウンウンと頷く。
しばらく後、シックール卿は片手をあげると、拍手が合わせたようにぴたりと止まる。
「そこで…皆に相談なのだが…」
静かになるや、彼は言葉をさらに紡ぐ。
「孫の彼女の実家であるブリオン社とは祝儀がわりに礼でもと思っている」
「しかし…それでは…」
当然、疑問点についての質問が飛んでくる。
そして、彼はそれに待ってましたと言わんばかりに応じる。
「うむ。とは言え、ブリオン社の株を買うことは戦争シェアリングに関わることを意味するため、協定に反する。故に…」
目を閉じて一拍置き、再び周囲を見回す。
「ブリオンのモビルスーツを幾らか買い付けようと思う」
「おお!!それは良い!!名案だ!!」
「ちょうど我らの使っているモビルスーツは型落ちしておりましたからなぁ」
「若様もお気に入りだそうで、安心できますからなぁ」
うむうむ、と頷く一同。
「では、これより使者を使わそう」
そうして、火星では無事に決定が下ったのだった。
それからしばらく後、ブリオン本社。
御三家ほどでは無いが、ベネリットグループ上位に位置する大企業である。
そのお偉いさんのところに、数名の部下がやって来ていた。
「と、言うことでして…火星から使者がやって来ておられますが…」
整頓された事務所の机に座るのはブリオン社モビルスーツ開発部門の責任者。
鋭い目つきは鷹を思わせ、整えられた髪からは几帳面さが伺える。
仕事用なのだろう端末から顔を上げ、やって来た部下を見遣ると、鼻を鳴らす。
「ふん、つまみ出せ。我が娘セセリアは一時の熱病に浮かされているようなものだろう。そもそもマルシャン連中が機嫌取りに二、三機買いに来たところで…」
マグカップに入ったコーヒーを口に含もうとした瞬間……
「取り敢えずまずは五十機ほど欲しいと」
「ブッ…」
予想だにしていなかったのだろうその言葉に、男は思わずコーヒーを吹き出す。
「……………」
「……………」
気まずい沈黙が場を支配しそうになるが…。
「何をしている」
「…は?」
ポタポタと垂れるコーヒーをハンカチで拭きつつ、男は言葉を続ける。
「使者殿をさっさと案内せんか!!VIPルームだ!!今すぐに!!」
「え?はっはい!!」
その後、ブリオン社は火星に対して格別の引き立てを確約したとかなんとか。