セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ?   作:ガラクタ山のヌシ

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過去掘り下げ回、みたいなお話です。


第6話

火星とは不毛の地、荒野の星だ。

平均気温は-63℃と極寒であり、かと思えば最高気温は30℃、最低気温は-140℃にまで達して、およそ人が暮らすのに向いている環境とは言えなかった。

 

かつて、新たなる星の開拓に夢と野心とをもってやって来た移民達にとっては正しく一縷の望みを求めてやってきたフロンティア。

だがそれも、モノはいいようでしか無かった。

彼らは掘れども探せども現れぬ資源に、自分たちの過去を悔い、時に未来に失望し…されど過酷な環境だからこそ、その中で強固な仲間意識が生まれた。

 

しかし今からおよそ十年前、先人達の必死の努力により移民当時よりも遥かに発展し、向上した技術により、火星でしか採掘できない稀少なレアメタルや、それらを加工する技術が生まれた。

すると今度は外部から掌を返したように支援の話が持ち上がる。

 

だが、これまで散々足元を見るような商談ばかり上から目線でしてきた連中に、火星の住民達がいい感情など抱いているわけもなかった。

当然火星の住民は断固として資源を搾取させまいと、なんと自分達で起業。

 

その勢いのまま実力さえあればのし上がれるというベネリットグループ総裁、デリング・レンブランに交渉して資金援助を求め、実際に結果を出したために火星の豊富な貴金属類には誰も手を出せなくなった。

そしてそのドゥラメンテの両親が代表を務める企業と、その傘下数十の企業の下、火星はさらなる飛躍と成長を遂げるため、その防衛力をより強固なものとするために、アスティカシア高等専門学園へと一人の生徒を送った。

それがドゥラメンテ・シックール。

 

最初こそ『宝石の王子』と揶揄されたものの、今は同じ言葉でも称賛に変じた…否、変じさせた人物である。

 

「父上、母上、オレは元気です」

 

寮の皆が寝静まった頃、自室でそうメールを打つ姿は自覚があるのか無いのか、普段のそれとは似ても似つかない。

とは言え、普段の自信家なところも、今のように子どもらしい側面もまた、彼と言う人間を構成する一面だろう。

『オレにもついに、未来を共に歩みたいと思える女性が出来ました。無論嫌われたくはないので、できる限り無理強いはしません…というか嫌われるのが怖くて出来ませんが…』

 

流石に親に送る学園での日常の報告に色恋のことを書くわけにはいかない…と、これまではヘンに堅物ぶってはいたが、今回ついにそのことを吐露することとなった。

それと言うのも、ドゥラメンテへの縁談の話がそろそろ溜まっているだろう頃合いだからだ。

昨今では権力者や富豪が複数の伴侶を持つ事は不思議ではないが、ドゥラメンテには個人的にそのシステムは合わない気がした。

 

『彼女にこの学園で出逢えただけでも、オレは果報者です』

 

御曹司、というのは何も良いことばかりでもない。

彼にとって他者…特にスペーシアンと呼ばれる連中は誰しもがドゥラメンテの顔色を伺い、おべっかを使って両親に取り入ろうとする厄介者でしか無かった。

幼少のみぎりにすら分かりやすいほどに自分達を見下していた相手が、子どもである自分にすらすり寄ってくることに気味の悪さすら覚えていた。

だからこそ、あの時のセセリアの言葉は本当に鮮明で、救われた心地だった。

 

「フッ…過去に浸るとは、オレとしたことが美しくないことを…」

 

自嘲するように、しかし髪をかき上げて格好をつけるのを忘れないように、未だ書きかけの文書をそのまま、ドゥラメンテは端末をスリープ状態にする。

そして、ここ一年ほどで馴染んだ自身の布団に潜って、そのまま眠りについたのだった。




ドゥラメンテくんの人となりを少々書いてみました。
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