セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「はぁ?アタシが告解室に?」
「うん、ごめ〜ん…実はその日デート…じゃなかった。ど〜しても外せない用事が入っちゃって〜」
両手を合わせて懇願する同級生に、セセリアは嘆息する。
その日は運がいいのか悪いのか、ちょうど決闘委員会の仕事もドゥラメンテも用事があるとかで、残念ながらデートの予定も入っておらず、まぁ暇は暇なのだが…。
「ちゃんと埋め合わせはするし、それに多分、セセリア的にも楽しめると思うし〜」
まぁ、告解室で話すことはそこに留めておく必要があるために、割と赤裸々な話が聞けると言うのはある。
誰が誰と浮気してしまっただの、つまらない授業を抜け出して友達と連れ立って遊びに行ってしまっただとか、そう言った日々のささやかなぼやきの聞ける場でもある。
表向きはハロに気兼ねなく打ち明けるという安心安全なシステムなため、意外な生徒が利用することもあるとか。
「ま〜、ちゃんと埋め合わせはしてもらうからね〜」
「ありがとう、助かるわ〜」
そう言って、そそくさとクラスを出ていくクラスメイトを見送るセセリア。
「まぁ、面白い話が聞けるならそれでいいか」
その時の彼女は、そんな軽い考えでいたわけなのだが…。
「フッ…では、ハロ殿!!よろしく頼むッ!!」
……なんでこうなった。
相手はまぁ、間違えようも無いだろう。
この若干暑苦しく思えるほどに自信に満ち満ちた声色といい、線は細いがよく見れば筋肉質な体躯といい、セセリアの恋人であるドゥラメンテ・シックールその人だ。
「ソレデハ、アナタノ罪を告白シテクダサイ」
無機質なハロの声に、ドゥラメンテはいつもよりも、若干硬い声色で話し始める。
「うむ…実を言うとだな。セセリ…いや、一応相手の名前は伏せておいた方が良いか…大切な人が可愛くて仕方が無く…」
「ッッッ……!!」
まさか懺悔と銘打って、自分のことで惚気られるとは。
ステンドグラスを模った画面から見える男子生徒…まぁドゥラメンテなのだが…が、向かい合わせにそう熱っぽく語る様は見ている側が恥ずかしくなってくる。
セセリアがガラス越しに声を漏らさなかったのはもはや奇跡だろう。
「そして…ここからが本題なのだが…」
えっ、まだ続くの?
セセリアは驚くが、しかしそれと同時に興味もあった。
自分とのことで、不満や不安があるのなら真摯に聞き入れたいと思ったからだ。
「実は、その…愛する女性を泣かせてしまってだな…。どうにか仲直りは出来たようなのだが…そうしたら今度は…時折、その…人前で抱きしめ…ハグをしたり、はしたないことだが、キスをしたくなる欲求がだな…いや、結婚前の男女がそのようなことをするのが憚られるのは確かなのだが、しかし彼女のことを知れば知るほど、身も心も美しすぎてだな…最近はいっそう距離感も近いし、彼女もその…我慢しているのかもと思うとだな…」
その後、三時間の及ぶ自分達の惚気を聞かされ、気がつけば赤面しているセセリア。
本当はよくないが、途中からドッキリよろしく顔を見せようかとも思ったが、そんなタイミングも無く…。
「うぉっ!?む?偶然だな。というか、いきなり飛びついて来てどうした?なにかあったのか、セセリア?」
「ふ〜ん…べっつに〜〜?」
彼が告解室を出た後に、たまたまを装って、不機嫌なふりをするのが精一杯なセセリアなのだった。