セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
学園の廊下を歩くドゥラメンテとセセリアの二人は、相も変わらず注目を集めていた。
しかし、その様子はある意味で普段通りであり、また別の意味で普段とは若干異なっていた。
「ふ〜〜ん……」
「む…セセリア?」
共に朝食を摂り、寮を出てからプリプリと不機嫌丸出しで、しかし離れようにも自身の腕に回した手は外さないセセリアに、ドゥラメンテは何やら困惑しきりといった様子だ。
周囲を行き交う生徒達はケンカか?などと冷やかし、或いはからかいがちに捲し立てるが、そんなモノはどうでもいいと言わんばかりにどうしたものかとマイペースな二人。
何やらセセリアには胸のつかえというか、気がかりなことがあるようだ。
とは言え…セセリア自身、このモヤモヤの正体の心当たりはある。
…しかし、それを言えるわけが無い。
まさかあの後冷静になってみて、そう言えばとドゥラメンテの夢に出て来た自分にさえ嫉妬していたなどと、セセリアには口が裂けても言えないだろう。
「いくら寝てたとは言え、目の前に本物がいるんだから…そもそもあそこまでデレデレするとか…そりゃ〜嬉しいは嬉しいけど〜…」
顔を伏せてブツブツと何かを呟くセセリアを、ドゥラメンテは何を思ったか人目を憚らずに優しくそっと抱き寄せる。
「キミが一体何を悩んでいるのか分からないが…大丈夫だセセリア」
優しい声色で自信満々にそう言い放つドゥラメンテに、なんだか心を見透かされた気がしてドキリとするセセリア。
「だっ…大丈夫って何がよ〜?」
突然の出来事に、動揺気味にそう返すセセリアに、ドゥラメンテは視線を合わせると続ける。
「オレではセセリアの悩みの解決は難しいかもしれないが…それでも、オレはキミが嫌になるまではセセリアの隣に居続ける。セセリアの苦しみを肩代わりはできないが…なに、大抵のモノは二人で共に背負うくらいは出来るさ」
笑顔ながら真剣なその視線に、セセリアは思わず顔を背けてしまう。
顔が熱い。恐らく今の自分は耳まで真っ赤だろうことを容易に想像できてしまう自身のうぶさへの自嘲と、そして同時に安堵を覚えるセセリア。
的外れながら、しかし出会って間もない頃と変わらないドゥラメンテらしい力強くも優しい言葉。
きっとこんな異性との出会いは、これから一生かけても無いかも知れないとさえセセリアの中の女の勘が告げている。
物理的に距離は詰めて来ても、心は何かを強いることも無く寄り添ってくれる。
少し抜けているところはあるが、だからこそ自分がしっかりしないとと叱咤にもなる。
ヘンに理解者ぶらず、しかし今のようにこうやって理解しよう歩み寄ってくれる存在のありがたさは彼という存在を知ってから身に染みて分かった。
心がささくれ立った時のついキツくなってしまう物言いにも「うんうん」と耳を傾けてくれるし、逆にドゥラメンテが傲慢で威圧的な物言いをしたところなど、これまで一度も見たことがない。
きっとセセリアはこの学園生活で、セセリア自身にとって一番の優良物件を見つけたのかも知れない。
そう思うと、何やら先ほどまでの心のざわつきも、優しく包み込まれて溶かされていくような気さえする。
……まぁドゥラメンテ本人にはこんなこと、恥ずかしがって面と向かっては絶対に言わないだろうが。
「ふふっ…そうね〜。それじゃあ〜…」
気がつけば、彼女の言葉から棘は無くなり…セセリアらしい、いつもの相手をからかう口調が復活していた。
しかし…だからだろうか。
ちょっとした油断から、セセリアは少しばかり攻めたことを言ってしまう。
「いつもより恋人らしいこと…してくれたら許してあげる〜」
そう言って余裕の表情を浮かべて意味ありげに目を閉じ、差し出した唇に何かが触れた感触に気が付いたのは…その数秒後のことだった。
セセリア視点?っぽい内容でした。