セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「ほほ〜!!」
火星の超大型フロントにあるシックール財閥本社の社員食堂にて、感心したかのような、嬉しそうな声がこだまする。
「ドゥラくん…勇気を出してそこまで…っ!!っか〜〜!!いいねぇ〜!!懐かしいねぇ〜!!甘酸っぱいねぇ〜!!」
声の主は仕事用のスーツを着たドゥラメンテの祖父、シックール卿である。
「どうかなさいましたか?シックール卿」
妙にハイテンションなのが不思議なのか、シックール卿の側近達が声をかける。
「ん?ああ、ほらほら見てよ〜。ドゥラくんが彼女とのイチャイチャっぷりをコレでもかって送ってくれててさ〜。まぁ、たぶん無意識に惚気てるんだろうけどね〜」
別にいいのに〜と言いつつ、ニヤけ顔を隠そうともせず、画面を周囲の部下の方へと向けるシックール卿。
見ての通り、彼も大概浮かれている様子だ。
「いやぁ〜…コレ見てたら、ウチに帰って奥さんとイチャイチャしたくなっちゃった〜…若かりしあの日…とっておきのフルーツの缶詰を二人で分けて誕生日を祝ったっけなぁぁ〜…」
「そっ…それは…その、素敵な思い出ですね…?」
聞いてはいけないことを聞いた気がした側近は、なんと返したものかと言いづらそうにしている。
それを見たシックール卿は小首を傾げるや、どう言うわけか察した様子で…アハハとおどけて笑う。
「ん〜〜?あ〜、なんか変な空気にしちゃった?ごめんね〜?でも、本当にあの頃のアレは今でも風化しないくらいには美しい思い出だからさ〜。あの頃の缶切り…今でもウチの奥さん、大事に持っててくれてるんだよね〜♪」
思い出して自慢したくなったのか、今度は夫婦のツーショット写真の画像を部下に見せる。
「コレが昨日撮ったヤツでしょ〜?で、こっちが先週撮ったので〜…コレなんか先月のデートの時に…」
シックール卿の惚気フェイズがはじまろうというその時だった。
「父さん、相変わらずだね」
「む?」
食堂の入り口に立つのは一つの人影。
採掘現場を見ていたのだろう作業着を着た人物は、人好きする笑顔を少しばかり困ったように歪ませる。
「おぉ〜!!我が息子よ〜!!」
シックール卿は実の息子との久しぶりの再会に感極まった様子で駆け寄る。
「ちょうどよかった!!これからイチャイチャ記念日として社員全員で奥方自慢大会でも始めようかと…」
「ハハハ…それも良いけど、ブリオンから連絡がきたよ」
そう言った息子はタブレットを実の父に見せる。
シックール卿はそれを受け取ると、画面を確認し、頷く。
「父さんからの売上のおかげで、最新機の完成が近くなりそうらしくてね。試しに三機ほど先行モデルを借りて来たんだけど…」
その言葉にシックール卿は目を光らせる。
「ほっほう、それはいいなぁ。皆の作業も楽になるだろう。だが…それがこちらに良い顔をしようとしての無茶な前倒しでないか…カタログ通りのスペックをきちんと出せるのか…その確認は怠らぬようにな。大切な火星の友人達に何かあってからでは遅いのだ」
仕事モードに切り替わったシックール卿は本当に頼もしく、皆感嘆の声をもらす。
が……。
「で〜…まず言い出しっぺの儂かな。ウチの奥さんの話なんだけど〜…」
コロッと身内モードに戻ったシックール卿を見るや、場の空気は再び弛緩してしまうのだった。
久しぶりの火星サイドのお話し〜。