セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ある日、アスティカシア高等専門学園の更衣室にて、セセリアが友人からとある何気なく、しかし衝撃的なことをことを言われてしまった。
「あれ?セセリア、腕ちょっと筋肉ついた?」
「……は?」
そう言われて、セセリアは自身の腕をぺたぺたと触る。
無駄な脂肪は少なく健康な血色の腕は、言われてみれば他の女子生徒達よりも少しばかり逞しくも見える。
「あぁ〜…確かに言われてみれば〜…」
「ね、ね、ちょっと腕に力入れてみて〜」
周囲に促されるがまま、腕に力を入れてみると…ちょっと力こぶが出来ていた。
「ほ…ホントだ…」
思っていたよりもしっかりした感触に落ち込むセセリア。
確かに最近はドゥラメンテやらその関連の手伝いを離れがたいのもあってしていたのだが…。
「あ、あれ?そんなに気にしてた〜?ゴメンって!!彼くんのお手伝い頑張ってるんだもんね!!」
「そ、そ〜だよ〜?それに、彼くんはセセリアの腕が筋肉ついてたってちゃんと褒めてくれるって〜」
しかし言われてみれば、庭仕事とは思いのほか力作業だ。
物の運搬はハロに任せられるとしても、それを載せたり使用する際はどうしても持ち上げる必要が出てくるわけで…。
思い立ったセセリアは数日後のお茶会デートの席にて、薔薇園の東屋でドゥラメンテにとあることを告げる。
「それで、その…薔薇園の作業をしばらくお休みしたいって言うか〜…」
「うん?別に構わないと言うか…本来ならオレ達の仕事だしなぁ…セセリアがそう言うのなら無理強いはできないな」
セセリアはドゥラメンテにそう言われ、何処かホッとした表情を浮かべる。
ただ、これからは一緒にいる理由づけに困る…などと考えていると…。
「それで…何か手伝えなくなる原因でもあるのか?」
「うぇ!?…な、なんでそう思うのよ〜?」
分かりやすく動揺するセセリアに、ドゥラメンテは優しく微笑みかける。
「いや…最近セセリアが思い悩んでいるようだったからなぁ。主に腕を触りながら…気づかなかったのか?」
「う…そ、そんなに分かりやすかった〜?」
「もし腕に違和感があるようならと万が一の心配もしたが…そんな様子でもなかったのでね。しばらく様子を見守らせてもらっていた」
まさか心配までかけていたとは思っていなかったのか、観念した様子のセセリアは
「その…実は〜…」
そう言いながらぎこちなく制服の袖を捲る。
「む?」
ドゥラメンテの視線がそこに注がれると、ぽつぽつと先日の出来事を語りだす。
「自分でも気にしてなかったんだけど、いざ指摘されるとこんな筋肉質になっちゃったことがちょ〜っと気になっちゃって〜…それで…腕の太い女は嫌かなぁ〜…なんて…」
「うん?オレとしては特に気にするほどではないように見受けられるが…」
「アタシが気にするんです〜!!」
ぷんすかと怒るセセリアをドゥラメンテは謝りつつ宥めて、その肩に手を置く。
「それに言っただろう?」
「な…なにをよ〜?」
「オレはセセリアを愛している。ならば…そのくらいの変化も含めてセセリアだろう?不安や不満があるなら言って欲しい。それに以前も言ったが、大抵のモノは二人で背負いきれるくらいには軽い。何か困ったなら一緒に考えよう。今回のように、誰かに相談するだけでも気持ちは軽くなるというものだろう?」
「ドゥラメンテ…」
そう言ったセセリアは、彼の袖をギュッと握る。
「その…ありがと。アタシちょっと気にしすぎてたみたい…」
「フッ…なに、愛する人にはいつでも笑顔でいて欲しいものだろう?むしろ頼ってもらえてこちらこそ礼を言いたい」
「も〜…」
呆れたように苦笑するセセリアだが、その表情には先ほどまでの重苦しさは無い。
「それでは、二人だけのささやかなお茶会を再開しようか」
「そうね〜。あっ、このスコーン美味しい〜」
「お茶のおかわりはいるかな?」
すっかり空になったカップを見て、ティーポットを持つドゥラメンテが問いかける。
なお、安心しきったセセリアは思いのほか食べすぎたようで…。
「あの…やっぱり薔薇園の手伝いさせてもらえる〜?」
後日、そうドゥラメンテに言う姿を通りすがりのエドモンドに見られていた。