セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
その日、セセリアとドゥラメンテは談話室にて、とある一人の生徒から呼び出されて質問を受けていた。
その内容とは…。
「うん?オレの強さの秘訣?」
その言葉に頷くのは、ニコニコと愛想のいい笑いを浮かべて向かいの席に座る金髪で小柄な男子生徒だ。
彼は先日の放送事件を起こした張本人であり、経営戦略科一年、アイザック・ハルトマン。
実家が放送局の関係者だと言う彼は、先輩を前にしても物怖じすることなく、朗々とお喋りしている。
先日セセリアに処されたというのに、反省していないのか、それともあれくらいでは挫けないくらいにはタフな性格なのか…。
待ち合わせ時間にやってきた時、当たり前のようにドゥラメンテの隣に座るセセリアを見ても、スマイルを崩すことはなかった。
テーブルの上には人数分の紅茶とお茶請け、そしてドゥラメンテからの許可を得てボイスレコーダーもひとつある。
「はいっ!!ドゥラメンテ先輩と言えば、やはりパイロット科でも指折りの実力者ですので…少しでもヒントになればと、こうして皆さんに質問してるんです!!」
聞けば、決闘委員会のシャディク・ゼネリやラウダ・ニール(グエルの代理も兼ねて)には既にインタビュー済みだと言う。
なお、『氷の君』ことエラン・ケレスからはどれだけ聞いてみてもノーコメントだったとか。
「フッ…それはもちろん…」
そう言うと、ドゥラメンテは隣に座るセセリアを抱き寄せる。
「ちょっ…?」
「愛だな」
そう真っ直ぐに答える。
「ま…またそうやって人前で…」
慣れているはずなのに顔を真っ赤にしつつ、しかし振り解こうとはしないセセリア。
それを見て、アイザックは二人の仲の良さを再確認する。
…なお、人前じゃ無ければいいのか、という質問は無粋というものだろう。
「あはは。微笑ましいですね〜…まぁ確かに、マルシャン…火星出身者は愛妻家が多いことで有名ですからねぇ〜」
アイザックは、ドゥラメンテとセセリアとの仲を切り口にすればもっと詳しく聞けるかもしれないと、そう思って切り込む。
「ふむ…たしかに、オレのこの考えは祖父母や両親にそう教わったのも無関係では無いが…しかしそれ以上に、オレはオレとして…ドゥラメンテとして、セセリアを大切にしたいと本心から思っているのだ。きっと、父や祖父に同じことを聞いたとしても、そう答えるだろう」
誰のための知恵なのか、誰のための力なのか、そう問われて愛のためと、即答できるのがマルシャンという人間らしい。
「大切な人を守るためには強くなくてはならない。弱いままでは近くのものでさえ守れない。オレはそう教わった」
それはきっと、かつて火星の厳しい環境に生きた先達の苦い教訓であり、これからを生きるドゥラメンテ達のための祝福なのかも知れない。
愛情深い彼の視線に、セセリアは恥ずかしがるそぶりを見せるが…それでも、彼から離れることはなかった。
そして、取材終了後、ブリオン寮の談話室にて…。
「も〜!!ああ言うことするんなら事前に…べ、別に嫌だったってわけしゃなくって…」
「うむ…申し訳ない。だが…いい練習になると思ってな」
「練習?」
「うむ。夫婦で取材を受ける時のな」
「ふっ…!?」
さらりと言われたその言葉に…その後、セセリアはまたしてもしばらくの間、フリーズしてしまったと言う。