セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ピピピピッ…ピピピピッ…ピピピピッ…。
その日の朝は、規則的な電子音で目を覚ました。
「ん〜っ…ふぅ〜…」
起き上がったセセリアは伸びをして、あくびをこぼし…いざベッドを出ようとなったその時に…違和感を覚えた。
自身が寝ているのは清潔感のある天蓋付きのベッドで、寮のそれとは比べ物にならないレベルでふかふかだ。
それに、大きさもかなりある。
少なくとも寮の寝室に置かれていたら間違いなく邪魔になるだろう大きさだ。
「確か夕べは寮のベッドで寝たはず…」
そう言いつつ、セセリアは周囲を見回す。
小洒落たキャビネットには本や花が置かれており、すぐそばの机にはライトもある。
他にも、細々としたインテリアがあって、しかし散らかっている印象はない。
全体的に落ち着きのある部屋であり、見知らぬ場所だと言うのに、不思議と怖さは無い。
どころか、安心さえしている自分もいる。
服装も…いつものパジャマとは違う。
まるで…別の誰かの暮らしを追体験しているかのような…変な感覚がある。
時計は八時半をもうすぐ表示する。
セセリアがどうしたものかと考えていると、とてとて…と、足音が近づいてくる。
「ママ〜!!おっはよ〜う!!」
ドアからベッドへとボフッ…と飛び込んできたのはどこか見覚えのある四〜五歳くらいの小さな女の子。
自分に似た髪色に、ドゥラメンテに似た瞳。
セセリアはまさかと思うが…。
「ねぇねぇ!!今日パパ帰ってくるねぇ〜!!」
その女の子は待ちきれないのか、ニコニコと笑顔を浮かべつつパタパタと足を動かしている。
「え?ま…」
頭が追いつかないのか、困惑しきりのセセリアを見て、女の子は何かを思ったのか、ほっぺを膨らませて抗議する。
「も〜!!ママったら〜…朝に弱いのは知ってたけど、まさか今日パパが帰ってくることも忘れてたの〜?」
そんなことを言うと、窓の外から何やら車の音が聞こえてくる。
「あ!!きっとパパだ!!」
女の子はぴょんと床に降りると、再び忙しない足音を響かせて、廊下へと向かう。
パジャマ姿のセセリアも(着替えの場所が分からないのもあり)その背中を追いかけて下へと向かう。
やがて玄関にたどり着くと、執事に荷物を渡している一人の人物が。
「パパ!!」
女の子が、その人物をそう呼んで飛びつく。
「やぁ、ただいまルビーナ。ママはきちんとお休みできてるかな?」
男性は抱きついた女の子を抱き上げながら、優しく訊ねる。
「うん!!さっきもね!!ねぼすけさんだったの!!」
「ハッハッハ!!そうかそうかママは頑張り屋さんだからね、たまにはゆっくり…おや?」
「あっ…」
柱の影で見ていたセセリア。
整った顔立ちが年月とともに精悍さも増している。
思わず目が合う二人。
「あの…ドゥラメンテ…?」
「む?我らが可愛い娘の前でも名前呼びとは、恥ずかしがり屋さんのママらしからぬことだな。すまない、そこまで寂しい想いをさせてしまったか?」
そう言うなり、ドゥラメンテは心配そうに歩み寄ると、軽く抱きしめられる。
髭こそ生えてはいないものの、その凛々しさを増し、スーツに身を包む姿は紳士然としていて思わず見惚れてしまう。
「だが、もう大丈夫だ。結婚記念日にはどうしても帰りたかったから、早めに切り上げて来たからな!!親子水入らずで、思う存分楽しもうか」
「けっ…?」
結婚…その言葉に困惑してフリーズするも、次の瞬間には嬉しいやら恥ずかしいやら、何やら色々な感情が湧き出てくる。
「ちょうど良い。これからセセリアとデートに行った思い出のリゾートプラントに…」
「あっ!!わたしも行きたい行きた〜い!!」
その後、着替えた後にかつてのデートを思い返しつつ買い物をして、時には喫茶店でお茶をしたり、キッズコーナーで元気に駆け回るルビーナと一緒に遊び、時折り二人ともドゥラメンテにエスコートされ…気がつけばもういい時間だ。
「さて…ルビーナは遊び疲れて寝てしまったな…」
「フフッ…可愛い」
ドゥラメンテは帰りの船内で既に眠そうにしていたルビーナをおんぶで運び、起こさないようにそっと子供部屋のベッドに降ろす。
愛娘を見守る時の優しい眼差しは、それこそ学生の時から変わっていない。
「そうだな。かけがえのない…オレ達の宝物だ」
「ええ。そうね…」
「うん?キミも疲れたのか?」
そこまで言って、ドゥラメンテはセセリアも寝室へと連れて行く。
「おやすみ。オレはもう少ししたら来るから、先に寝ていてくれ」
「うん…ありがとうドゥラメンテ…その、愛してる…」
「フッ…オレもだよ」
その返事を聞いて安心しつつ瞼を閉じると、セセリアはすんなりと眠りについた。
「……?ここは….」
目を開けると、今度こそ見慣れた寮の自室。
時間は…いつもの起きる時間よりも少し早いくらいか。
何やら気になる夢を見た気がしたが…覚えてはいない。
いつものようにドゥラメンテと会って話す。
すると…。
「む?そう言えば、セセリア。昨日はいつもと様子というか、雰囲気が違ったが…何かあったのか?」
「え、え〜?き…気のせいじゃない?」
一瞬なぜかドキリとしつつも、不思議なこともあるものだと、そう思うセセリアなのだった。
夢オチ的な展開をやってみたかったので。