セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
せっかくだしと思って書いてみました。
「ん〜?あっれ〜?」
既婚者であるセセリアは、目が覚めたらなぜか懐かしさすら覚える学生時代の寮の一室にいた。
生徒手帳で年と日付を確認するが…やはり何度見ても過去である。
それを踏まえて…セセリアは寝ぼけ頭で、戸惑うより先にとある結論に至る。
「あ〜、こりゃ〜…夢かなぁ」
夢ならば仕方が無い。
そもそもの話、寝て起きたら突然過去に戻ると言うことがあるなどと考える方が現実的では無い。
幸い生徒手帳に表示されている曜日からして今日は授業も無いし、時間の方もまだ午前中。それも早い方だ。
このままダラダラと二度寝の誘惑に負けて、日頃の疲れを癒すと言うのも悪くは無い。
だが…彼女にはまず、その前にやっておきたいことがいくつかあった。
こちらで目覚めてふとした思い付きではあるものの、それでも確認しておきたいことが。
「まずは〜…」
セセリアは手鏡を持ち、自身の頬に触れる。
肌は…うん。十代の頃のハリとツヤがある。
実際の未来の彼女も、それと遜色無いほどに美貌なのだが…。
それでも…いや、だからこそ違いがわかるのだろう。
夢の中とは言え、もう一度十代を経験できるのは嬉しくあるが…同時にちょっと悔しいという、若干複雑な気持ちもある。
「それと、せっかくだし〜…フフッ」
記憶を頼りに着替えを持つと少々はしたないが、寝汗でベタついた寝巻きを脱ぎつつシャワールームへと向かう。
念入りにシャワーを浴びたセセリアはそのまま可能な限り手早く着替えを済ませ、髪を乾かし、若かりし日の愛しい彼の元へと向かう。
休日の彼…ドゥラメンテはいつもこの時間は早起きして薔薇園の世話を終え、シャワーを浴びている頃のはず。
そして…彼の寮に着くなり愛する未来の夫の所へと向かうと、案の定朝のシャワーを浴びた後なのだろうドゥラメンテに、背後から飛びつく。
「ドゥラメンテ〜♪」
「うぉっ?せ、セセリア!?ど、どうしたのだ?そんな積極的になって…」
可愛い。
今もなおある気遣いと、懐かしい初心な反応にセセリアはついつい頬が緩む。
そして、それを誤魔化すかのように彼の背中に顔を埋めると、あの時のシトラスの香水の香りがする。
期間限定商品だった故に現在ではもう売っていない品だが…それでも、彼女の夫は香水を贈る度にきちんとつけてくれる。
その事実がたまらなく嬉しくて…背中から回した腕に少し力が入る。
思えば学生の頃の時分の旦那様は…デートの後でも接吻やら抱擁をすることはあっても、その強固な意思で以てついぞ最後の一線は越えなかった。
…その分結婚式の直後から早速
「まったく…アタシの旦那様ながら紳士的と褒めるべきか意固地と呆れるべきか〜…でも」
そんな初心で、どこまでも優しい彼だから自分は好きになったのかもしれない。
そう思うと思わず再度ニヤけてしまう。
「うん?セセリア?」
廊下に通りがかる生徒がいたら訝しげな視線を向けられることは避けられないかもしれない。と言うか現在進行形で向けられていることだろう。
「…けど、そんなこと知ったこっちゃないし〜?」
当時の自分のようにエミュレートして振る舞ってみるのもいいが…せっかくの素敵な夢だ。
降ってわいた悪戯心に従ってみるのも悪くは無い。
「あ〜あ、朝イチで彼氏に会いに来たら疲れちゃった〜」
目が覚めてしまうまでは思いっきり昔できなかったことをやろうと決める既婚者セセリア。
早速わがままを言ってみて、チラリと視線を前へと向けるとドゥラメンテはセセリアの脚へと腕を回しておんぶする形になる。
「む…そうか。では、これから薔薇園でお茶でも…」
「ドゥラメンテの部屋がいいなぁ〜?もちろん二人っきりで…ね?」
「い…いつになく積極的だな?」
「え〜?別にいつも通りでしょ〜?」
セセリアはアワアワしている過去の旦那の反応にクスクスと笑う。
ちなみにいつも通りなのは本当だ。
より正確には結婚後の…と言う言葉が頭につくが。
「ドゥラメンテとアタシは将来夫婦になるんだから〜…その練習だと思って〜…ね?」
「セセリア…また学友に揶揄われたのか?」
彼の表情はこのままでは窺い知ることはできないが…それでも、優しい顔をしているのだろうことはわかる。
伊達に目の前の彼と結婚までしていない。
今の余裕の出てきた彼もいいが…たまに顔を覗かせるこちらもこちらで大好きだ。
「あ〜…ま、そんなとこ〜」
そのままセセリアは一日中ドゥラメンテに対して甘えに甘えたおかげか、翌日は朝に弱い彼女にしては珍しくスッキリとした目覚めで、いつに無く夫と、そして「パパと結婚する」が口癖の娘、そして…まだ見ぬ
本当は85話の直後に出せればよかったんですが…。
後から思いついたからね、仕方ないね。