セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
「セッセリ〜アじょ〜う!!今日こそデートしていただけるか〜!!」
早朝、アスティカシア高等専門学校のブリオン寮前で、無駄にイケメンが満面の笑顔でバスケット片手に大声で呼びかけている。
ちなみに今日は休学日であり、決闘委員会の仕事も無いのを、ドゥラメンテはシャディクに確認済みである。
「ちなみにプランは、森林エリアで日光浴をしながら、読書など如何か〜!?」
声の主がドゥラメンテ・シックールと分かると、ざわざわと人が集まる。
「おっ、セセリアの王子様じゃん」
「やっほ〜♪」
「おや、これはこれはフッ…歓迎感謝する!!」
窓から手を振っていた生徒に、ドゥラメンテが決めポーズをしつつ手を振り返していると、玄関から出て来たセセリアが叱る。
「ちょっと、迷惑でしょうが!?」
「おや、セセリア嬢。しかし、寮長殿には既に事前の許可を得てはいるのだが…」
「ちょっと!?」
セセリアはその言葉に、自寮をキッと睨む。
「セセリアちゃ〜ん…良い加減素直になろう?」
「そうそう。寮のみんなはもう応援ムードなんだって〜」
「どうせ今日部屋で動画なり見てる予定だったんでしょ〜?」
寮のメンバー達はみんな生暖かい視線を送りつつ、ニマニマしながらヤジを飛ばす。
普段はセセリアがそちら側なためか、本人は慣れない立場に少々狼狽えている様子だ。
「アンタたちは状況を楽しんでるだけでしょうが!!」
ハァ…とため息をつくセセリアに、ドゥラメンテは手を差し伸べて返答を伺う。
「それで…お返事は?貴女が本当に不快に感じるのならば、オレはこのまま帰るが…」
「……あぁ〜!!もうっ!!」
結局、二人は森林エリアに辿り着き、均等に照明が並ぶ通路の、そこそこの所でお昼の準備を始める。
バスケットからいそいそとクッションをベンチに敷き、その真ん中あたりにてきぱきとバスケットを開け、中身のサンドイッチをのんきに並べるドゥラメンテ。
「こんなに緑が豊富なところは、いつ来ても心が躍るなぁ!!」
一方のセセリアはムスッとした様子だ。
「あのさ…」
「おや?何か質問でも?」
準備の手を止め、セセリアの方を向く。
「この前…食堂で話してた女子って、誰?」
恐る恐る、といった様子でセセリアは切り出す。
「む?この前話していた女子…と言うと…ああ!!ニカ嬢のことか?なんだ、知っていたのか」
少し考える素振りを見せると、ドゥラメンテは嬉しそうな表情を浮かべる。
それに、セセリアはムッとした様子で
「な〜に?ガールフレンドがもういたってわけですかぁ〜?」
気持ちの余裕のなさからか、あるいは何か別の感情からか、嫌味ったらしいことを言ってしまうセセリア。
しかし、ドゥラメンテは笑顔を崩さない。
「ハッハッハ!!まさか!!彼女には以前、セセリア嬢のことで助力してもらったことがあってな。その関係で、我が友エドモンドと三人で食事を摂ったと言うわけさ」
けろり、とそう返すドゥラメンテ。
「えっ?紛らわしいのよバカ!!」
「むっ?気を悪くしたのなら謝ろう。この通り!!申し訳なかった!!」
素直に頭を下げるドゥラメンテ。
そんな姿も何故か絵になってしまうのだから憎らしい。
そして、露骨に安堵のため息をこぼすセセリア。
話題のためか、バスケットから取り出されたサンドイッチに目を向ける。
「それにしても…このサンドイッチ、形悪いわね…」
なんとなしに、セセリアがそうこぼす。
「そうか。それは申し訳ない」
「なんでアンタが謝るのよ?」
唐突な謝罪の言葉に、セセリアは訳がわからないと言った表情を浮かべる。
「フッ…食堂のスタッフにオレのわがままで迷惑をかけるわけにはいかぬ故!!他ならぬこのドゥラメンテ・シックールが早起きをして作った次第ッ!!」
「へ?これ、アンタが作ったの?」
珍しくキョトンとした顔でそんなことを言うセセリア。
「うむ。だがしかし…料理とはまっこと難しいものよなッ!!料理人の皆には頭が下がるッ!!」
その言葉に、セセリアは何やら複雑な様子。
「それと、読書用に本もいくつか持って来た故、暇つぶしにでも如何か?」
そう言えば、バスケットばかりに気を取られていたが、ドゥラメンテはカバンを肩にかけている。
本のタイトルは……。
『チャーリーを探せ』
『ソクラテスの弁明』
『美味しいトマトの作り方、肥料編』
『リア充王』
…………
「何このラインナップ?」
「フッ…自慢では無いが、オレは…あまり本を読まん!!」
「はぁ!?それで読書デートとか言ってたわけ!?」
「ハッハッハ!!いやぁ…お恥ずかしい」
「ったく…それじゃあ、今度読みやすい本持ってきたげるから。ちゃんと読みなさいよ」
「む?よろしいので?」
「アンタがアホだと、隣のアタシまでアホみたく思われるでしょ?それが嫌なだけよ」
セセリアはそれだけ言うと、半ば誤魔化すようにサンドイッチを手に取り、かぶりつく。
「…味は、普通ね」
「そうか!!」
「…美味しいって言ってないのに、なんで嬉しそうなのよ」
「フッ…普通に食べられるモノが作れて、少し…安心して…な…」
「…ちょっと?」
座ったまま目を閉じ、喋らなくなるドゥラメンテ。
何事かと、慌てた様子でセセリアが顔を覗き込むと…。
「zzzz……」
「…は?」
そのまま眠ってしまっていた。
恐らくは、慣れない早起きをした反動で、眠気が今になって来たのだろう。
「……誰も、いないわよね?」
セセリアは、キョロキョロと周囲を見回す。
バスケットを地面に下ろし、ドゥラメンテを自分の側に引き倒す。
ボスっ…とドゥラメンテの頭を膝に乗せると…
「頑張りすぎよ。バカ…」
いつも、自分のことを考えてくれている。
いつでも、自分のために何かをしようとしてくれている。
だからこそセセリアも、もう少しだけ気持ちの整理がしたかった。
「それが済んだら…ちゃんと返事するから…」
待っててもらえる?
その言葉に返事は無かったが…。
どこか温かい気持ちには、慣れた気がしたセセリアであった。
うむむ…乙女心は色々と難しい。