セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
それは、セセリアの生徒手帳に届いた一本のメールから始まった。
「も〜…まぁたお母さんからメールが来たんですけど〜…」
ブリオン寮の談話室にて、そうこぼすセセリア。
「あぁ、セセリアに彼氏ができたって知ってから割と頻繁に来るようになったんだっけ〜?」
「ったく…ホンットあの馬鹿親父…」
大方の情報元だろう実父に、セセリアはいつもの如く毒づく。
最近ではあまり見なくなった光景に、周囲は何やら懐かしいものを見る目を向けている。
「で〜?要件はなんだって〜?」
「知らな〜い。ど〜せまた前とおんなじアタシの彼氏がどんな奴かって内容でしょ〜?」
「え〜?でももしかしたら大事な内容かもじゃん?一回くらいは確認しといたほうが…」
「…ま〜それもそっかなぁ〜」
同級生にそう言われて、渋々と生徒手帳のメール機能をタップする。
直近で届いたのは今から一時間ほど前。
セセリアは母の顔を思い浮かべると、めんどくさそうにため息をひとつこぼしつつそれを開く。
そうして、目にしたメールの内容は…。
「は?」
彼女が目を見開いて、思わずそうこぼす内容だった。
「さて…セセリアとのデートの準備は済んだ。後は…」
「おーいドゥラメンテ。オメーに客だぞー」
デートの支度を済ませたドゥラメンテに、廊下の方からエドモンドのぶっきらぼうな言葉が聞こえてくる。
「フッ…了解した。今向かおう」
そうして意気込んで、ドゥラメンテが寮の入り口を開けると…。
「ハァイ♪アナタがドゥラメンテくん?」
「セセリア…では、無いな」
ドゥラメンテが思わずそう返してしまうほど、髪や目の色がセセリアにそっくりなスーツ姿の女性がニコニコと愛想よく笑いながら立っていた。
とは言え、よく見れば髪の長さやら仕草のひとつひとつ…それから纏う雰囲気といったものもところどころ異なっている。
「あら鋭い。はじめまして、セセリアの母で〜す♪」
「おーい。セセリア嬢はもう来た…って誰だ?」
「む?あぁ、どうやらセセリアの御母堂らしく…」
そう説明しようとするドゥラメンテに、セセリアの母を名乗る女性は…
「まぁまぁ♪話は上がってからでも良いでしょ?私喉乾いちゃった〜」
そう言うなり、ドゥラメンテ達の寮へと上がってくる。
「なんつーか…フリーダムな人だなぁ…」
エドモンドはドゥラメンテが案内するのを見送りつつ、どこか彼の祖父に似た既視感を覚えたのだった。
「それにしても…よく見ると随分とめかし込んでるわね〜。もしかして娘とデートの予定だった〜?ごめんね〜?」
寮の談話室へと通されたセセリアの母は出された紅茶を飲み、世間話をしつつお茶請けをいくつか口にすると少し落ち着いたのか、一息つく。
「それで〜?最近あの子とはどうなの〜?」
「はい。結婚を前提に真剣なお付き合いさせていただいております」
唐突な来訪者にも関わらず、ドゥラメンテは臆せずピシッと背筋を伸ばしてそう答える。
「そう緊張しなくってもいいのよ〜?別に私はあなた達がお付き合いする事に反対してるってわけじゃ無いし〜?」
「そ、そうなのですか…?」
あまりに意外な返答に、ドゥラメンテはキョトンとしてしまう。
「えぇ。あの人…ウチの旦那がそれを認めた以上、横槍を入れるのは野暮だもの」
「では、一体何故…」
その問いに待ってましたと言わんばかりに食いつく。
「あ〜それはねぇ…あの子とどこまで…」
「ちょっと!!お母さん!!」
聞き慣れた声に、二人は談話室の扉の方を見ると、そこには怒り顔のセセリアが仁王立ちしている。
「いきなり学校までくるとか、何考えてんのよ〜!!」
実の母の突然の訪問に、セセリアはズカズカと問い詰める。
「あら、事前に連絡はちゃんとしたでしょ〜?」
「ええあったわねぇ〜!!つい一時間前に!!」
悪びれない様子の母に、セセリアは生徒手帳を指差しながら焦りとも怒りとも取れる形相を向ける。
「だぁって〜、セセリアったら彼くんとの進展具合とか何度聞いても全っっ然教えてくれないんだもの〜?」
「はぁぁぁ!?そんなの教える義理は無いでしょうが!!」
「あるわよ〜?だってゆくゆくは家族になるんだから〜」
「かぞっ…って、なに?反対しに来たわけじゃ…」
「無いわよ〜?相変わらずの早とちりねぇ〜?」
普段他の生徒を揶揄っているセセリアが、こうも容易く手玉に取られている。
ある意味で意外というか、年相応なその反応にドゥラメンテは驚くも、すぐに安堵の表情を浮かべる。
「良かった。どうやらセセリアと御母堂は険悪という訳では無いようだ」
「ハァ!?」
「あらあら、彼くんは分かってくれてるみたいねぇ〜」
セセリアの母は上品にクスクスと笑う。
「まぁでも、二人の仲がいいようなら良かった。私達は政略結婚だったけれど案外うまく言ってるし…それでも、あなた達が羨ましく無いと言えば嘘になるけど。大人気ないって思う?」
「そりゃそうでしょ!!ってか、何しに…」
「あらぁ〜?学園のデミトレーナーの整備具合の確認に…って言えば信じてもらえる?」
「それこそ部下にやらせれば済むことでしょうが」
「も〜…貴女のためにも建前は大事でしょ〜?それとも〜…正直に娘とお話がしたかったって言えば良かったぁ〜?」
「うぐ…」
終始やり込められた様子のセセリアを見るや、彼女の母はおもむろに立ち上がる。
「まぁ〜いいものが見られたし、懐かしい学園も堪能できたし〜?私はそろそろ帰らせてもらうわね〜?」
「む?しかし、親子水入らずの時間は…」
「クスッ…彼くんてば優しいのねぇ?大丈夫大丈夫。そのための生徒手帳ですものね〜?」
そう言うなり、セセリアの母はチラリと娘の方を見遣る。
「たまには連絡くらい寄越しなさいな」
セセリアの母がそう言うなり、どこからともなく現れたお付きの黒服が現れる。
「紅茶とお茶請け、美味しかったわ。ありがとね〜♪」
エレベーターで見送られながら、そう言って笑顔で手を振る。
時刻は夕方。
モニターに映し出された空は、いつの間にやら茜色になり始めている。
「はぁ〜…」
「セセリア。今日は…」
いつになく疲れた様子のセセリアに、ドゥラメンテは声をかける。
「セセリ…うん?」
「……」
不意に、ドゥラメンテに背後から無言で寄りかかるセセリア。
しかし、ドゥラメンテは振り解くでも無く彼女の次の行動を待つ。
「今日は…」
「今日は?」
「…今日は、この後ずっと一緒にいて」
どうやら今日のセセリアは、彼氏の前で色々と恥ずかしい思いをしたからか、本当にむくれている様子だ。
生憎と顔は見えないが…今頃は赤くなっていることだろう。
そして、そんな彼女の本心を垣間見たドゥラメンテは一瞬唖然としたかと思えば…。
「…ああ。エスコートは任せてくれ」
そう短く、しかし優しく返したのだった。
ヴィムとかプラスペラ来てたし、他生徒の親も来てたり〜…なんて、勝手な妄想です。