セセリアさんがナルシストに言い寄られるようですよ? 作:ガラクタ山のヌシ
ある日のブリオン寮の談話室にて、生徒手帳で何となしにとあるハウツー記事を読んでいる生徒がいた。
「ふ〜ん…会えない時間が二人の愛を深める…ねぇ〜?」
「えぇ〜?毎日会ってるのに全く熱が冷める気配もないお二人さんがいるじゃん?」
会話の内容的に、本に書かれていることがどんなことか、想像もつくと言うもの。
普段はそのまま恋バナへと発展させるだろう二人は、しかし第三者から見れば若干の気まずささえ感じさせる。
とは言え、それもそのはず。
何故ならば………。
「いやぁ〜…でもさ〜…」
そう言うなり、話している二人は遠巻きに一人の生徒の方を見遣る。
「ったく…アイツ…アタシを放ったらかしにして実家の用事って…まぁ?大事なのは分かるし?アタシは寛容なほうだから?別に良いんだけど?どうせなら一緒に挨拶すれば色々出来たってのにさ〜…いや別に文句があるとかじゃなくって〜…」
イライライライライライラ…
ソファに座りつつ、そう効果音が聞こえて来そうなほどに不機嫌なオーラを醸し出すのはブリオン寮所属の女生徒であるセセリア・ドート。
気を紛らわせるためにと、一時的に学園内を散策していたのだが…どこもかしこもドゥラメンテとの日々が思い出され、却って気が滅入るとのことで、こうして寮まで戻って来たとのこと。
この時期に親類縁者が集まるのは火星ではよくある事らしく、別に硬い席というわけでもないのだが…。
いかんせんドゥラメンテは親戚が多く、彼の祖父や父の関係者のこともあって、色々と準備も必要とのことで、セセリアは今回の留守番を頭を下げて頼まれたという次第。
告白の時もそうだが、マルシャンはこういったしきたりや儀式めいたことを重んじる側面が強い。
ドゥラメンテとしては、退屈をさせまいというあくまでも気遣いのつもりだったし、セセリアもそれを分かっていたから二つ返事で了承したのだが…。
それでもやはりまだ十代の子ども。
寂しいものは寂しいし、辛いものは辛い。
ドゥラメンテが長期休暇を使って火星プラントへと帰省してからのこの数日、セセリアはドゥラメンテがいない間も彼に相応しい良い女であろうとこれまで以上に気を張り、勉学も決闘委員会の仕事も、そして薔薇園の手伝いも目に見えて頑張っていた。
それに加えて、普段からドゥラメンテ関係でセセリアをからかっていた負い目もあったのだろう彼女らは同じ寮の仲間としてセセリアに強くは言えなかった。
「まぁ、彼くんが帰ってくるのは明日だし〜…セセリアもむしろよく今日まで持ったよね〜?」
「明日は一日中彼くんにくっついて過ごすのかなぁ…」
そして、運命の翌日…。
「セセリア、いま帰ったぞ。寂しくはなかったか?」
学園に戻るなり、ブリオン寮を訪ねてくるドゥラメンテ。
火星土産に色々と入った袋も持参している。
「ま、まぁ?アタシはいつも通りヨユーでしたけど〜?なに?あんたは寂しかったってワケですか〜?」
「フッ…あぁ。オレはとても寂しかった」
「そっ…そうなんだ〜?」
とても素直にそう告げるドゥラメンテ。
そんな彼に彼女は赤くなった顔を隠すようにうつむく。
「それじゃあ、しょうがないから…その、今日は一緒にいてあげる…」
次第にか細くなっていく声で、セセリアはそう告げる。
無意識なのか、彼の制服の裾を掴む手を離そうとしない。
「…あぁ。そうだな」
そんなセセリアの様子に何かを察したのか…ドゥラメンテは本当にその日一日中、セセリアと一緒にいたと言う。
お盆的なお話が書きたかった次第。