駄目ウマ娘製造機   作:あらあらモンペ

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こんな話が読みたいな→自分で書いてみよって感じです。
文字数は少なめにしていく予定です。
(…2話以降まだ考えてないなんて言えない)


1話

桜の舞う季節。

ピカピカの中央トレーナーバッジを指で撫でながら、軽い足取りで廊下を歩く。ここ、中央トレセン学園はとてつもなく広い。講堂からトレーナー室までの距離もなかなか遠く、運動を得意としない者ならばこの時点でげんなりするだろう。幸いにして運動はそこそこ出来るほうである。これからここで働くのだと思うとこの苦労も苦にならない。

現在は入学式・新任式が終わった後であり、新入生はガイダンス、在校生は授業と、普段はうるさいであろう廊下も静かなものである。

割り当てられたトレーナー室の前で深呼吸をする。

鍵を開け部屋に入る。備品として3人掛けのソファーや仕事用デスクなどが備え付けられており、資料をまとめられる棚やホワイトボードなんかもある。広さとしては1DKを少し広くした感じか。

デスクに座り、クルクルと回る。子供っぽいかもしれないな、と一人で内心笑いながらこれからの予定を考えようとすると、不意に入口の戸が開く。

 

「やっぱりここだったね。これからよろしくね。ミスタートレーナー?」

 

 

 

 

 

羽柴健治(はしば けんじ)は一般家庭に生まれた。3歳下の妹のいる普通の男の子だ。父はウマ娘専門の医師で、母はカウンセラー。両親ともに放任的だがマナーや礼儀にはうるさく、言葉を話し出してから直ぐにマナーに関する教育が始まる程である。

 

ある日健治は父親と一緒にとある屋敷に来ていた。なんでもこのお屋敷の主人と仕事で付き合いがあるそうで、これから月に2~3回訪問することになるらしい。そしてこのお屋敷には健治と歳の近い娘が居て、話し相手が欲しいとのことだ。

 

「いいか健治。失礼だけは無いようにな。やんちゃな娘らしいが、お前の方がお兄ちゃんなんだから、一緒に遊んであげなさい。なぁに心配しなくていい、失敗したら俺とお前の小遣いが無くなるだけだ」

「……分かったよ父さん」

 

「お待ちしておりました、羽柴様。旦那様がお待ちです、こちらへどうぞ。坊ちゃまはこちらのメイドがお嬢様の下へご案内いたします」

 

そう言われるや父はグッと親指を立てた後に執事についていく。健治は呆れながらもグッと親指を立てて返すと、メイドについていく。

妹の世話を進んでやっていた為か、気後れは無い。メイドさんに黙ってついていくこと5分ほど歩いたか、部屋の前でメイドさんが止まった。

 

「こちらでお嬢様がお待ちです」

「ありがとうございます。ふー。よし」

 

頬を軽く叩き気合を入れなおす。

 

「それでは…。お嬢様、失礼します。お客様がお見えです」

 

ノックをしてメイドさんが話しかけるも反応が無い。

 

「いつもの事ですので、このまま入られてもよろしいかと」

「…分かりました。…失礼します」

 

 宣言の後に扉を開け、中を見る。部屋は可愛らしく装飾されており、絵本や積み木、知育玩具が散乱している。周りを見渡せど部屋主が居ない。恐る恐る部屋の中に足を踏み入れるとベッドの膨らんだ布団がもぞもぞと動いた。よく見ると尻尾が出ている。寝ていて何もしないで良いのならそれに越したことはなかったのだが、布団から部屋主が姿を現す。妹と同じかそれ以下か、幼い少女は欠伸と共に伸びをしてこちらを見やる。

 

「おまえ、だれ?」

「おはよう。俺は羽柴健治。君の名前は?」

「ん~…わたしはシンボリルドルフ…。ん」

 

 そう挨拶をしたかと思えば両手を上に挙げて万歳をしだす。今朝の妹の姿と重なり、内心笑ってしまう。周りを見渡してみると入り口に服一式が置いてある。さっきのメイドさんだろうか。万歳しているシンボリルドルフの服を脱がせ、着替えさせていく。その後彼女は化粧台の椅子にちょこんと座って何かを待つ。まだ目が覚め切っていないのかポヤポヤしている。

 入り口に目を向けると紙切れが一枚、扉の下から差し込まれてきた。なるほど櫛を使って髪を整えろという事か。櫛を使いとにかく優しく、慎重に梳いていく。妹と違いふわふわで手触りが良い。大事にケアしているのが分かる髪質だ。いつの間にか入り口にお湯の入った桶とタオルがある。温水で湿らせたタオルをシンボリルドルフに渡すと、それを使って顔を拭く。

 ようやく目が覚めたのかこちらを見て、固まってしまった。

 

「おはよう、シンボリルドルフちゃん。俺は羽柴健治。よろしくね」

 

 

 最初はこちらを警戒してかむすっとしていた彼女だが、一緒に遊ぼうと言っただけですごく喜んでくれた。

 彼女が言うには同い年の子たちから敬遠されているそうな。近い年齢の友達が出来て嬉しいのだろう。

 積み木を交互に重ねて落とした方の負けゲームを提案すると喜んで受けてくれた。

 現在19戦19勝。健治の圧勝である。

 途中シンボリルドルフが泣きそうになるが、『こうすればよかった』『こうすれば勝てた』と優しく諭すと、しっかり話を聞いて次に活かそうとする。最初は低い段で崩れていた積木も、今では彼女の身長いっぱいまで高く積み上がり、健治に倒させようと細工までする始末だ。

 

 直感が訴えかけてくる。この積み方は危険だ。こちらが考えなしに積もうものなら間違いなく倒れる。そんな予感が健治には感じられた。攻めて次のシンボリルドルフの番に倒させるか、安定を取るか。真剣に考え健治が打ち出したのは攻めだった。倒れないがグラつくギリギリを狙ってわずかに震える手を抑えて積み木を置く。手を離した瞬間に積み木は無情にも倒れてしまった。

 

「やった!勝った!!ケンジに勝った!!!」

 

 全身で喜びを表現するシンボリルドルフ。両者共に真剣であったからこそ、そこに遠慮は無い。

 喜びのあまり抱き着いて来るが、これも勝者の特権。敗者は受け入れるのみである。小さな体躯からは信じられないような力で締め上げられ、ミシミシと骨のきしむ音が聞こえてきそうだが成すがままにされる。

 

「おめでとう、シンボリルドルフちゃん」

 

 そういって健治は何とか彼女の頭を撫でる。

 

「んふー。ケンジ!次は何して遊ぶ!?」

「そうだなぁ。ちょっと疲れたし絵本読もうか」

「わかった!」

 

 そう言って彼女が取り出したのは健治も読んだことのあるドラゴンと少年の絵本だった。クッションの上に座るとシンボリルドルフは健治の膝の上にちょこんと座り、絵本を促してくる。苦笑しつつもそのまま絵本を読み始めるとシンボリルドルフの背中がこちらに寄り掛かって来た。顔を覗き込むと彼女は真剣な表情で次を促してくる。そのまま絵本を健治の考えた解釈を交えつつゆっくりと読み進めていると、不意にドアがコンコンとノックされる。

 朝会ったメイドさんがするりと部屋に入って来た。

 

「失礼します。昼食の用意が出来ました」

 

 そう伝えられ、部屋の中に食事が運ばれてくる。健治はシンボリルドルフを椅子に座らせ、自分も別の椅子に座る。

 すると彼女は椅子から降りて健治の膝の上に登ってくる。マナーとしてはいけないことなのだが、昼食を家族ととっていない現状を考えると、健治は何も言えなかった。

 

「本当はご飯を食べるときはキチンと椅子に座らないとダメなんだからな。でも今日は許す。一緒に食べよっか」

 

 怒られると思っていたのか、膝の上で俯いていたシンボリルドルフはパァっと笑顔で振り向いて来る。

 

「本当か!?ふふふ、わたしの椅子になることを許そう!」

「何を言うかこのこの!」

 

 わき腹をこちょこちょするとキャッキャと笑う。ひとしきり笑わせて食事をとると、メイドさんが食器を下げてくれる。一緒に昼食を食べてしまったが、良かったのだろうか。健治はふと思ったが、父の用事がまだ時間がかかるのだろうと考えをまとめた。

 昼食を食べ終わると知育玩具を使い一緒に遊ぶ。シンボリルドルフが目元を擦る頻度が増えたので、お昼寝の準備をする。一緒の布団に入り、先ほどとは別の絵本を読んでいるとスースーと寝息が聞こえてきた。

 コンコンと気持ち小さくドアがノックされると、またしてもメイドさんがするりと入って来た。

 

「お嬢様と一緒に遊んで頂きありがとうございます。健治様のお父様とご当主様の要件が済みましたので、玄関までお送りいたします」

「ありがとうございます。少し待っていただいても良いですか?」

 

 そう言って健治は近くにあった画用紙と色鉛筆で書置きを残す。また来ることになるのだが、寝ている間に友達が居なくなるのは、良い気分にはならないだろうと考えたためだ。書置きを残し、頭を軽く撫でてから部屋を後にする。

 

「今日はどうだった?」

 

 父に問われて思い返す。

 

「普通に良い子だったよ。友達になれたし、また行くのが楽しみ」

「そうか、それは良かった。いいか?出会いは一期一会。一度の出会いでも楽しかったと記憶に残るように大切にしなさい」

「うん!」

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 2週間後にまた訪問することになった。今回はメイドさんに屋敷の裏側に案内され、着いてみるとそこは大きなグラウンドだった。通っている小学校のグラウンドよりも広く、足元は綺麗に整えられた芝が敷き詰められ、楕円形に柵が設置されている。テレビで観たことのある…そうだ、ターフという奴だ。

 呆然としていると屋敷の方から人影が来る。

 

「遅かったではないか。ケンジ」

「こんにちは。シンボリルドルフちゃん。前は何も言わずに帰ってごめんな」

「いや、いい。それより一緒に走ろう。走ると気持ちが良いからな」

 

 よく見るとシンボリルドルフは運動着だ。なるほど今日は運動で勝負という事か。健治はこれでもスポーツはある程度こなせる。器用貧乏とでもいうべきか、尖った才能は無いまでも、体育で◎を取れる程度には運動神経がある。

健治とシンボリルドルフはターフに並び、メイドさんが手を上げる。

 

「よーい、ドン!」

 

 掛け声と共に振り下ろされる手を見て健治とシンボリルドルフは駆け出した。距離は決めていない。どちらかが負けを認めるとそこで決着である。

いくらウマ娘とは言え、まだシンボリルドルフは幼稚園児。それでも小学生の健治の後ろに食らいついているのだから凄まじいとしか言えない。100mを通過した所で健治に疲れが見え始める。シンボリルドルフも負けじと足を動かすが思うように動かせていない。両者譲らないまま200mの地点で二人ともが力尽き、芝の上に倒れ込んだ。

 

「…ケンジは速いな」

「シンボリルドルフちゃんこそ…こんなについて来られるなんて凄いよ…」

「ルナで良い。父上も母上もそう呼んでくれている」

「…わかった。ルナちゃん。どうする?まだ走る?」

「…走る」

 

 それからひたすら走りまくった。日が傾く頃には健治が勝つことは稀になり、回復の早いシンボリルドルフの独壇場であった。

 

「ハァハァ…ルナちゃん…もう走れない…今日はこの辺にしておこう」

「えー!健治は体力無いな!まぁいいだろう。今回は私の勝ちだな!」

 

「お嬢様、お召し物が汚れておりますので、一度お風呂に入られるのがよろしいかと」

「ああ、わかった。ケンジ。お風呂入ろう」

 

 そうして一緒に大きなお風呂に入っていざ帰ろうとすると、

「羽柴健治様。お父様からの言伝です。『明日は祝日だから泊まらせてもらいなさい。』とのことです」

「良いのでしょうか?」

「ご当主様からの許可は頂いております。あとはルドルフ様と健治様次第でございます」

「ケンジ!泊まっていこう!一緒に寝よう!」

「わかったわかったから」

 

 背中によじ登ってくるシンボリルドルフを下ろそうとするが、なかなかの力で離れてくれない。ウマ娘特有の体温の高さと風呂上がりの温かさで背中が熱い。

 

「それじゃあお世話になります」

 

 そうしてシンボリルドルフと食事を摂り、絵本で勉強していたら気付くと9時だ。シンボリルドルフもうつらうつらとしており、ゆっくり抱えてベッドへ寝かせる。健治も昼間の疲れがどっと押し寄せてきた。一緒の布団に入るとグリグリと頭を胸に押し当ててくるため、そっと腕を回して抱き込むようにする。頭を撫でているとグリグリ攻撃が止み、スースーと心地良さそうな寝息が聞こえだした。健治もシンボリルドルフの温かさが気持ちよくなり、すぐに意識を手放した。

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