いよいよクラス代表を決める模擬戦当日となった。
セシリア対一夏が1戦目、おれ対セシリアが2戦目、最後に俺対一夏の順だ。
この日の第3アリーナは超満員で観客席にはぎっしりと人が詰まっている。
それもそのはずである。世界で二人しかいない男性搭乗者が模擬戦をするのだから。
IS学園の生徒以外にも各国の重鎮らがVIPルームからこちらの試合を観察している。
か早速1戦目が始まろうとしていた。
一夏の白式が届くのが遅れたため少し時間が押しているがまあなんとかなるだろう。
「それでは始め!」
それと同時に距離をとるセシリア。
I量子格納庫にあるスナイパーライフルを素早く手元に出し、正確な射撃で一夏を追い詰めていく。
ただ一夏も勘が鋭いのかスレスレで避けるか、手持ちの剣で防ぐかして凌いでいる。
ついにセシリアが痺れを切らしてビットを展開した。
期待の操縦をしながらビットを動かすのはまだ無理なようで、彼女は一夏の上を取りつつ、ビットの操作に専念している。
展開したビットは4つ、その全てを正確に操り一夏の死角から確実に攻めたてていく。
ISには360度センサーが着いているが、さすがに一度に360度見渡せるわけでもなく死角が必ずできる。それをセシリアは理解して巧みに操っているのだ。
確かに360度どこからでもレーザーが飛んでくるのは厄介だか、所詮厄介止まりであり、危険までは行かない。
以前までは、量子テレポーテーションは当たり前、虚空からいきなり触れただけで死んでしまう魔法が飛んできたり、光の速度をゆうに超えた突きや、蹴りそして因果逆転などが当たり前だったため、この程度ては驚かないのだ。
お、ついに一夏が動いた。このまま行くとジリ貧だと気づいたのだろう。全く勘だけは鋭いやつだな。
ビットの攻撃を最小限回避しつつブルーティアーズに突進。反応が遅れたセシリアのスナイパーライフルを弾き、距離を取ろうとするセシリアをイグニッションブーストでさらに詰める。
あとほんのちょっとと言うところで一夏のシールドエネルギーが切れてしまい、セシリアの勝ちとなった。
まあ、あそこまで効率を考えずに飛び回ればそりゃ燃料が先に切れるのはわかる。
ただ、隣にいる千冬さんの目が険しいことが一番の問題だ。こりゃこってり絞られるだろうな。
セシリアはシールドエネルギーをチャージするため一旦自分のピットに戻る。
俺は一夏がいるピットへ向かった。
『おつかれ。いい戦いだったよ、それに最後のあのイグニッションブーストで懐に入ったのはよかった。
でも、もう少し戦いの動かし方を知らなきゃいけないね』
「ありがとよ國重。あともう少しだったんだがなぁー。まあまだお前と1戦残ってるし、切り替えるわ」
『それがいい、では行ってくるよ』
「頑張れよ、負けんなよー」
『もちろん』
俺はそのままアリーナの上空に向かって飛び立った。
向こう側からセシリアが飛んでくる。準備は万端のようだ。
「先程は一夏さん相手に不覚を取りましたが、今度はそうは行きません。最初から全力で行かせていただきますわ」
『そちらがその気なら僕も今出せる全力で行かせてもらう』
俺はISの絶対防御以外の装甲を全て解除し、量子変換した。
「なんの真似ですか?」
『邪魔なんだよ。ISって、感覚も、経験も、全てにおいて変わってくる。そんな物を相棒と思えるほど、俺は短絡的では無いしね』
するとセシリアはなにかに気づいたようで、絶句している。
「なぜ?なぜあなたは空中でたっていられますの!?」
それもそうだ。今俺が展開している機能は絶対防御のみ、スラスターも、重力緩和装置もない。
俺が持っているのは湖の加護。これは水の上に立てるというものだ。
俺はこの加護を極限まで進化させ、空気中の水蒸気の上に立てるまでになった。
『まあ、色々とあるんだよ』
「説明になっていませんわ!!まあ、いいでしょう。所詮あなたはISをまとっていないと同然の素人、結果は目にめえていますわ」
『俺も目に見えているよ。さあ始めようか』
俺は亜空間から、一振の刀を取り出す。
この刀は2つ目の世界で刀匠から、譲り受けたものだ。
縁を断ち、運命を切り、業を切る。正しく担い手次第では全てを切り裂くことができる刀。
時間軸から逸脱した空間を創り、ひたすら刀を振り続けて約4億年。
いつの間にか斬りたいものだけを斬る事ができるようになっていた。
だから俺は、セシリアのISをだけを斬る。
俺はセシリアに向かって刀を一振する。するとセシリアのISが文字通り斬れた。
セシリアは全くの無傷であり、ブルーティアーズは真っ二つだ。
アリーナには沈黙が流れる。それもそのはず、今まではISはISでしか倒すことができないものだと思っていたのに、それを今俺が刀一振で真っ二つにしたからだ。
ISを真っ二つにされたセシリアは高さ30mから落下していく。
下で教員が待ち構えているが、何せこの高さだ。抱き抱えられても無事ではすまないだろう。
俺はセシリアに減速魔法をかけ、落下の衝撃をなくす。
これで一通りの作業が終わった。あとやることはひとつ。
『見ただろう?これでISはISにしか倒せないというクソみたいな固定概念は覆った。故に女尊男卑社会はこれにて終わりを告げる。
これでいいかい?西園寺首相?』
「ええ、十分にやってくれました。報酬は弾みます。
すいませんね、こんな憎まれ役をやってもらって」
『あなた達に助力すると約束しましたからね。それに僕もこの状況を嘆いていましたし。では作戦は今日で?』
「ええ、時間通りにお願いしますよ」
『わかってます。ではまた』
俺はそうやって通信をきる。
ああ、今夜はゴミ掃除をしなきゃな。それもとびきり不潔で不快なヤツらの。
その夜、女性地位向上を求める権利団体の過激派が1人残らず殺害された。
彼女らは司法や行政などに多大な影響力を及ぼしていたが、当然裏でも影響を及ぼしたと言えるだろう。
裁判に介入し女性の有利な方へ判決を変える。女性が人を殺しても釈放させるなど、いい加減政府も我慢の限界だったらしい。
この出来事は連日ニュースで報道される予定だったが、権利団体を悪く思っていた男性がテレビ局に圧を掛けたおかげで世に出回ることはなかった。