ヒーローガールとヒーロー気質の転生者 作:振り子メンタル
今回は、ちょっとした幕間のようなものです。
それでは、本編をどうぞ!
「ふぅ…ただいま?で良いのか?」
『お帰りなさい…ソウヤ様、異常はありませんか?』
「うん、大丈夫だ…」
心の中に帰還した俺は、残留思念とそんな会話をする。
『…ふむ。ソウヤ様、これからは自由に外へ出られるようですよ』
「えっ!本当か?というか、そんなのわかるの?」
『はい。私はあなたの中に宿る力です…変化があればすぐにわかります。今のソウヤ様なら、世界の壁すらも越えられるでしょう…誰かの強い祈りがあなたに届けば、ではありますが』
「なにそれすごい…まぁ、流石に精神体の時、限定だろうけどさ」
『そうですね…生身の状態では難しいでしょう』
「だよな…」
もし、別の世界の誰かの強い祈りが俺に届いたら、今の俺なら助けに行けるってことか…まぁ、そんなこと滅多にないだろうけど。
「それにしても、何で急にそんなことが出来るようになったんだ?」
『ソラ様との新たな力のおかげでしょう。ソラ様との絆が更に深まり、新たな力が芽生えたことになり、ソウヤ様の存在がより強固になったことが理由だと思われます』
「なるほどな…」
ソラとの絆のおかげか…本当に俺はいつも助けられてばかりだな。
「…そういえば、前から気になってたんだけど…残留思念って何者なんだ?」
『ついにそのことを聞いてしまいますか…』
「あはは…正直、一番最初に聞くべきことだったけど…それで、一体何者なんだ?」
『そうですね…ちゃんと話しておくべきですね」
そう言いながら、残留思念は改めてこちらを見る。
『ソウヤ様は、転生する前に助けた女性のことを覚えていますか?』
「もちろん。顔までは思い出せないけど、長い黒髪の女性でキレイな人だったような…」
そうして、残留思念に視線を向けると、雷を受けたかのような衝撃を受けた。
似ている…髪とか、全体に白いけど雰囲気が似ている気がする。
まさか!
「もしかして、残留思念は俺が前世で助けた女性なのか?」
『はい、その通りです。改めて助けてくれてありがとうございます』
「そうだったのか…どういたしまして。…それにしても、こんなことがあるんだな」
まさか、俺が転生する前に助けた女性が俺にプリンセスの力を渡してくれた人だったなんて。
「…でも、どうして俺にプリンセスの力を渡してくれたんだ?」
『それに関しては少々長くなってしまいますが、聞いてくれますか?』
「まぁ、それは全然構わないけどさ。そんなに長くなる話なのか?」
『はい』
「…わかった。聞かせてくれないか?」
『ありがとうございます…まず、私の正体から』
「うん」
『私はプリキュアの伝説の始まり。かつて、闇の勢力がスカイランドを襲った時にヒーロー…プリキュアを祈りによって呼び寄せたプリンセスです』
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闇の勢力との戦いの後、スカイランドには平和な時代が続きました。
私はプリンセスとして、スカイランドの人々を守り、導き…平和に過ごしていました。
そんなある日、当時のアンダーグ帝国のトップが攻め込んできました。
私はみんなを守るために戦い、アンダーグ帝国のトップと一進一退の攻防を繰り広げました。
そして、半ば相討ちのような形で決着し、私とアンダーグ帝国のトップはお互いにその命を散らしました。
そして、私は生まれ変わり、ソウヤ様が前世で暮らしていたあの世界に行きました。
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「つまり、あなたは元々、大昔のスカイランドのプリンセスで、転生して、俺が前世で暮らしていた世界に来たわけか」
『はい。スカイランドのプリンセスとしての記憶を持ち、転生した私は最初、あの世界を魔法の世界だと思って過ごしていました』
「まぁ、スカイランドの記憶を持ったままだとそうなるよね…それで、どうして俺にプリンセスの力を渡すことになったんだ?」
『それは…』
残留思念は表情を曇らせながら、言葉を紡ぐ。
『…ソウヤ様が死ぬ原因になったあのナイフを持った不審者のことは覚えていますか?』
「そりゃあまぁ…忘れるわけないよ。でも、あの不審者が一体…」
『…あの不審者は、アンダーグ帝国のかつてのトップのアンダーグエナジーに乗り移られていたんです』
「どういうことだ?」
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ソウヤ様が私を助けてくれたあの日、家への帰り道に、突如として声を掛けられました。
「見つけたぞ…プリンセス!貴様のせいで、微弱なアンダーグエナジーでこの世界を彷徨うことになった上に、こんな脆弱な人間の体を乗っ取るしか出来なかった…この屈辱、果たさずにはいられん」
「まさか…まだ完全に消え去っていなかったの?この世界に来てまで、なにをしたいの?」
「お前を亡き者にし、この世界をアンダーグエナジーに染めてやる」
「そんなことのために、罪のない人を巻き込むつもり!?許されないことよ!」
「貴様に許されたいなどと思っていない…死ね!」
そうして、アンダーグエナジーのあやつり人形とかした不審者が私にナイフを突き刺そうとした。
「危ない!」
その時に、ソウヤ様が私を庇ってくれました。
「大丈夫ですか!?どうして私を助けてくれたんですか?」
「…良かった…無事で。早く逃げてください…」
そう言いながら、ソウヤ様は息も絶え絶えといった様子で、倒れ込んでいました。
私はそんなあなたの様子を見ながら、心の底から何かが湧き上がってくるのを感じていました。
「とんだ邪魔が入ったが、今度こそ!」
「…それはこちらのセリフです!今度こそ消え去りなさい!」
あなたが庇って刺されたことに、悲しみ、怒り、罪悪感…いろんな感情がごちゃまぜになりながら、私は転生しても使えていた浄化の力を使い、アンダーグエナジーを浄化しました。
「おのれ…!一度ならず二度までも…!だが、アンダーグ帝国は不滅だ!長い時間を掛けて、スカイランドに再び侵攻する!その時が楽しみだ!」
そう言って、笑いながらソレは消え去りました。
「あれ?…私はどうしてここに?…なにこれ!?血のついたナイフ…?これを…わ、私が?あぁ…あぁ…うあぁぁぁ!」
そう叫びながら、操られていた人はその場から逃げ出してしまいました。
「うぅ…」
「大丈夫ですか?しっかりしてください!」
そうして声を掛けると、ソウヤ様がアンダーグエナジーに蝕まれてしまっていました。
命の灯火が消えかかっており、このままでは転生も叶わない状況であると、直感した私はある覚悟を決めました。
「聞こえているかはわかりませんが、聞いてください。これからあなたに私のプリンセスの力を託します。これでアンダーグエナジーは浄化できるはずです」
そう言って、さらに私は言葉を続けました。
「…ですが…ですが…あなたの死を避けることは出来ません…そして、これから私はあなたに自分勝手な願いを託します」
そう言いながら、私はソウヤ様にプリンセスの力を託しました。
「どうか…アンダーグ帝国が再びスカイランドを襲った時、スカイランドを…そこに生きる人々を守ってください…そして、プリキュアが再び現れた時に、あなたの力でプリキュアを導いて…私のヒーロー」
そうして、私はあなたをこの世界に転生させました。
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「なるほど…俺にプリンセスの力が宿っていたり、この世界に転生したのはそういう理由だったのか…」
『はい…そして、すみません。ソウヤ様が戦いに巻き込まれてしまったのは私の身勝手な願いのせいです…あなたを巻き込んでしまい、本当にすみません』
そう言って、残留思念の彼女は頭を下げた。
「良いよ。あなたがプリンセスの力を託してくれなかったら、俺が転生することはなかったし…ソラ達に会うこともなかった。むしろ、お礼を言いたいぐらいだよ…ありがとう」
『いえ、お礼を言うのは私の方です…私を助けてくれてありがとう…私の願いを叶えてくれてありがとう』
「どういたしまして…そういえば、俺にプリンセスの力を託した後、あなたはどうなったんだ?」
『それはわかりません。あくまで私はあなたの中に宿るプリンセスの力、そこに残った残留思念にすぎませんから』
「そっか…プリンセスの力を託した後、幸せに生きていてくれてたら良いんだけど」
『幸せ…とは言い切れないかもしれませんね…きっと、スカイランドのことも気にかけていたでしょうし、ソウヤ様を転生させたことも気にしていたでしょうから』
「そうか…なら、せめてここに居るあなたぐらいは笑顔にしないといけないな」
『えっ…?』
「まぁ、どうすれば良いかわからないけど…とりあえず、話を続けてみる?」
『…!ふふっ!そうですね!もっとソウヤ様のことを教えて下さい。もちろん、私のことも覚えている範囲でお教えしますよ』
「よし!それじゃあ、色々と話そうか。お互いを知るためにも」
そうして、俺は残留思念との対話を続けるのだった。
といった感じのメインルート第56話でした!
今回は、ソウヤが転生した理由と、残留思念の過去話でした!
次回からはアニメの17話部分に入っていくことになると思います!
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!