翔
数日後、僕は秋間さんと拓也さんと一緒に慶花さんの取り調べに行った。
今回の取り調べは近くの警察署で行われた。
「なぜあなたは弟さんの死から四年もした今、復讐を行おうと思ったんですか。」秋間さんが聞く。
「別に最初の頃は勇人は悪いことをしたし、彼の死は仕方ないものだと思った。だけど、ある男が言ってきたの。弟は逮捕だけで済む状況なのに殺されたって。弟は私が彼のために何もしないのが悲しいと。だから、復讐するべきだって。私は勇人が大好きだった。だから、勇人が悲しんでると言われるとどうしてもその提案を拒否できなかった。」
彼女は泣いていた。僕にはその涙が罪を犯したことの後悔からのものか復讐を果たせなかったからのものかわからなかった。
「その男はどういう人でしたか。」
「男はオリーブ色のファーコートを着ていて、顔は隠れて見えなかった。黒いネクタイをつけてた気がした。」
また桐ヶ谷か…僕は思った。僕は今回もノートパソコンで会話の記録を取っていた。
取り調べ室の壁に寄りかかっていた拓也さんも同じことを思ったような顔をしていた。
「そうか…爆弾は彼から?」秋間さんが聞いた。
慶花さんは頷いた。「実行する数日前に彼と黒いスーツ姿の人複数人と一緒にあのビルに爆弾を設置しました。」
「そうか。以上だ。」
そう言って空き間さんが経とうとした時、慶花さんが喋り出した。
「本当なの?あの男が言ってこと。本当にあの時、弟は死ななければなかったの?」
「あの時、何をしても君の弟さんは爆弾を解除しなかった。彼の姉だから知ってるかも知れないが、君の弟の特能力で作り出した爆弾の解除方法は二つしかない。それは彼が彼の意思で解除するか、彼が死ぬかだ。あの時、爆弾の爆破時刻まで一分を切っていた。爆弾が爆発すれば、たくさんの人が死ぬ。だから、最終手段を選んだ。このような状況だった。君がこれを彼が死ぬべき状況だったと思うかはわからないが、あの時僕たちにはそれ以外できなかった。君が僕たちを恨みたければ、恨み続ければいい。君の弟を殺したのは僕たちだと言う事実は変わらないからな。」
秋間さんが椅子の背もたれを持って、慶花さんに背を向けたまま彼女に言った。
少し間が空き、秋間さんが悲しそうな声で話し始めた。
「弟については本当にすまなかったと思ってる。あの時、本当に他の手段がなかったかと僕は今でも思う。」
そうして、秋間さんはドアへ向かった。
「君の弟は本当に言っていたよ、君に生きていてほしいと。」秋間さんがドアノブを握りながら言った。
僕たちは部屋を出た。部屋からかすかに泣き声が聞こえた。
何か違和感を感じた。なぜみんなこんな素直に『烏』の情報を言うんだ、口止めされてないのか?そもそもどちらの事件も犯人を逮捕するのが簡単すぎた。いや、そもそもこれまでの『烏』関係の事件では、犯人はだいたい逮捕されないで終わっている。『烏』が、たとえ手下中の手下だとしても、犯人を逮捕させるヘマをするとは思えなかった。
「そうか…この事件の主犯も『烏』の桐ヶ谷というやつか。実は最近の事件のほぼ全てにあいつが関わっていることが分かったんだ。」月見さんが言った。
「やっぱり、僕を狙ってのことですか…?」
「多分ね…これで君を精神的に追い詰めて、投降させたいのだと思う。君が誰かに迷惑をかけていると思うと、すぐにそういうことをしてしまうからね。あいつらはよく君の性格をわかったいる。
たとえ狙いが君じゃなくても、あいつらがやることにはなんらかの意味がある。この小さな事件たちは多分何かもっと大きなことに必ずつながっている。」
月見さんがため息をついた。
「と言っても、そのもっと大きい何かを止めることはほぼ不可能。あいつらはその大きなことを達成するためには手段はいくらでもある。この一連の事件を止められたとしても、彼らにはあまり影響がない。」
「だけど、何もしなかったら、事件はただ増え続けるだけで、手に負えなくなってしまうかも知れません。」僕は事務的に言った。
「わかってるよ。みんなに四時に会議室に集まるように言ってくれ。少なくとも、この連続事件を阻止する、そしてできれば彼らの実の目的を阻止するための対策を考えなければいけない。」