食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
大井「…私1人、置いていかないでよ…」
…衣笠は、突如現れた葛城に連れて行かれた
私だった久しぶりに葛城に会ったのに
しかも、監視役?
…何が起きているのかの説明もなく
私は1人、バーガーショップに置いてかれたし…
大井「……はあ…どうしろっていうのよ、なんなのよ、ほんとに…」
今になって、冷めたポテトを口に運ぶ萎びて、油もくどい
味も落ちるところまで落ちている…
だけど、これが妙に好きだ
なのに、どうにも味がしない
でも、食べないのは勿体無いからとりあえず口に運ぶ
大井「…ふぅ……ん?」
ふと、周りの客の会話が耳に入る
客A「艦娘がアイドルだなんてとんでもない、あんな野蛮な奴らが何を」
客B「夢を叶えるだとさ、ふざけた事を、散々戦争で金を吸い上げてたくせに」
大井(…なんの話?)
客C「記憶を代償に戦ってるなんてカッコいいよね!」
客D「かっこいいというより、可哀想じゃない?望んでなったわけじゃないんでしょ?
ほら、歳だって…アタシらと変わんないし」
大井「…なんで、みんな…艦娘の話なんかしてるの…?」
…おかしい、艦娘の話なんか普段は誰もしない
終戦して、時間がたって、ようやく
ようやく“忘れて”くれたのに…なぜ思い出して、今話題になって…?
大井(…ここに居たらまずい、出なきゃ)
…色んなところで、色んな話が聞こえてきた
夢を追う、また艦娘への憧れ、同情、支援の声
そして、憎しみ、怒り、それぞれの声が、どこに行っても聞こえてくる
大井(なによ、なんなのよこれ…)
…帰りの電車も、何処に行っても…
衣笠といる時は気にしてなかったのか、そもそも話題に上がってなかったのか
大井(なんで、急に…またバレるのにビクビクする日々が始まるの…?)
…何処かに逃げたくて、普段は寄り付かない、海辺の工場街に逃げ込んだ
息苦しくて、長居したくないけど、人がいないお陰で…ようやく、静かだ
恒常の音はうるさくても、人の声が、人の目がないというだけでこうも落ち着く…
大井(…と、思ったのに)
タバコの匂いと、男達の話し声…
人目のない路地に座り込み、とりあえず通り過ぎるのを待つ
男A「どうする、あんなニュース流れて、現場も雰囲気が変わるかも知れねえ」
男B「気にすんな、どうせあそこにいるのはブツで頭がパァになってるヤツらだ、アイツらは気にしねえよ」
男C「だと良いがなぁ…世間様の目も悪くなってきたぞ」
大井(コイツらも、艦娘の話…?…いや、違うか…さっさと変えなさいよ…)
男A「しかし、なんて言った?…荒潮だったか、あのガキのせいで上手くいかなかったな
あのガキ、どっかにタレコミ入れて飛びやがった」
大井「えっ」
…荒潮…?
男A「…今、声がしなかったか?」
男C「ああ?スクラップにしてる音がデカすぎて聞こえねぇよ」
男B「スクラップといやあ、例の施設、ひどい潰されようだったらしい…国の特殊部隊が潰したなんて噂もあったよな」
男A「無い無い、どうせ“海の神様”怒らせたんだろ?」
大井(海の、神様?)
男C「ブツ捌かせて、用が済んだら海の神様に売り払うって商売も、台無しか」
男A「上納金のアテが潰れちまったよ」
大井(…こいつら、なんて話を…)
…荒潮を、いや、荒潮達を食い物にしてた…
青葉も、他の艦娘達も、コイツらが…!
大井(…殺す?…いや、ダメ、今艦娘がやるのは不味い…
それに、こんな私怨で殺しなんてして、誰が喜ぶのよ…朝潮達は…?みんなは?その安否を確認する方が先…)
男A「ふぐっ!?」
男B「なんだテメッ…あがっ!?」
打撃のような、鈍い音が…
男C「お前ら何処の組の…俺らを誰だと…!」
大淀「わかってますよ、社会のダニです、なので、国の為に消えてください、さ、続きをどうぞ?」
大井(この声、大淀…?)
男A「テメェら、こんな街中で銃なんか…」
大淀「…黙らせましょうか、その人は撃って構いません」
くぐもった銃声が2発響き、そのあと男の悲鳴が響く
大淀「おや、すみません、2人が撃ってしまいましたか、指示をミスしましたね」
男C「こ、こんな街中で…!」
大淀「大丈夫、“スクラップにしてる音が大きすぎて、聞こえませんよ”…監視カメラも、潰しましたから…さて、大人しくなるまでどうぞ?」
また鈍い音が響き始める
大井(な、何が起きて…)
チラリと顔を出す
大淀「ふふっ」
大井「…!」
こっちを見てる…
最初から、居るのがバレて…?
しかも、戦闘服を着込んだ兵士が3人…
うち1人は、素手で男を殴り倒して…
大淀「…さて、連れていって構いませんよ」
兵士達が乱雑に男達を車に詰め込む
大淀「あなたも、来てもらえますか?」
大井「…や、やめて…私は何も…!」
大淀「良いから、来てください」
大井「……あの」
大淀「あ、すみません、お姉さん」
龍驤「あいよー!あ、また来てくれたん?」
大淀「6個2つで」
龍驤「今日はえらい少食やなぁ?いつもみたいにたくさん
大淀「1人で食べてるわけでは無いんですけどね」
龍驤「っと、それは失礼したな!はい、6個2つ」
大淀「どうも、そこのベンチで食べましょうか」
大井(…なに、これ……てっきり、殺されるのかと…)
大淀「怖がる必要はありません、ただ、見た事何も、喋らないでください」
大井「……朝霜は」
大淀「無事ですよ、今のところ悪い知らせはありません」
大井「…そう」
大淀「ここのたこ焼きは美味しいですねぇ」
大井「…はむ…」
たこ焼きを口に含む
…なんだか、食べたことあるような…
大井「……これ、青葉のに似てる…」
大淀「はい?どうかしましたか?」
大井「…青葉が、前にたこ焼きを持ってきたのよ、それに似てるなって…
たこ焼きなんてどれも変わらないけど…」
大淀「…案外、的外れでは無いですよ」
大井「え?」
大淀「このたこ焼きを焼いてる、あの人が、青葉さんに仕事を斡旋してましたから」
大井「…そう、じゃあ…アイツが」
青葉をずっと苦しめてた犯人…
大淀「変な気を起こさないようにしてくださいよ?」
大井「見過ごせって?」
大淀「こちらの仕事なので」
大井「……今更?」
大淀「ええ、“今から”です」
大井「…そう」
大淀「物憂げですね」
大井「私は、なんなのかわからなくて」
大淀「好きに生きれば良いじゃ無いですか」
大井「それは当たり前、もちろんそうさせてもらうわ」
大淀「……」
大淀がスマホでたこ焼き屋の写真を撮る
大井「…何してるの」
大淀「どうなるかなぁ、と思いまして…
自分の人生を捨てた人を敵に回した人の末路が」
大井「……誰のこと」
大淀「さあ、誰でしょう」
大井「………」