食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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四十四食目

やあ、そうだよ、北上様だよ

うん、うまくやった、あたし達は成功した

…何かは変わった、変わるはずなんだ

ようやく、何かが動き出す…

 

閑話休題(それよりも)

 

那珂「…ここ、市場?街中なのに?」

 

北上「みたいだね、朝市(あさいち)ってやつ?」

 

那珂「…良い匂いする…しかも海産系の…」

 

北上「岐阜は海ないはずなんだけどね、良い匂いだよね」

 

…深海棲艦のおかげで漁獲量が上がったみたいなニュース、いつだったか見たっけな

魚介の流通も良くなったとか…

 

北上「…春雨まだかなぁ…」

 

春雨1人で食料買いに行ったけど…

 

北上「残りいくら?」

 

那珂「1万と4千円くらい」

 

北上「関西まで持つかなぁ?」

 

那珂「むしろ帰りどうしよう…」

 

北上「…考えたくないなぁ…って…」

 

那珂「……気づいた?」

 

北上「んー…ここまで見られるのは久しぶりだ」

 

…いつの間にか、注目の的になっちゃってまぁ…

 

那珂「…でも」

 

北上「うん、ファンって感じじゃなさそうだね?」

 

那珂「……世間の目は、変えられなかったのかな…」

 

残念ながら、好意的な目ではない

…すぐに変わるとは思ってなかったけど

 

北上「…大丈夫だよ、あたしが保証する、いつか何かが変わる、それがゆっくりでも、諦めちゃダメだよ」

 

那珂「…うん」

 

北上「でも春雨巻き込むのはまずいから、一旦離れようか」

 

アイドルやらずに裏方に専念してくれるおかげで春雨は顔バレしてないし

こういう買い物したりには適してるからね

 

那珂「じゃあ、行こう…か…?」

 

北上「…どうかした?」

 

那珂「……狙われてるよ」

 

那珂が上を見上げる

 

頭上をトンビみたいにくるくると回ってる…

…戦闘機?この距離であんなにはっきり見える?

くっきりと姿が見えて、そしてあの小ささ…

 

北上「…艦載機か」

 

那珂「うん」

 

北上「……ああ、加賀か」

 

…少し離れた位置にいたからわからなかった

じっとこっちを見てる

 

加賀「……」

 

北上「…人気ないところ、行かなきゃね」

 

那珂「なんで?」

 

北上「多分、激しい話し合いになるからさ」

 

那珂「…わかった」

 

 

 

加賀「わざわざこんな山に誘い込んで、どうするつもり?」

 

北上「多分、激しい話し合いになると思ってさ」

 

加賀「そう、なら“話は”早いわね」

 

那珂「…やり合わない選択肢はないの?」

 

北上「いや、無いね、あたしも一回殺されかけてるしさぁ…」

 

加賀「それはお互い様よ」

 

北上「なら尚更だね、白黒はっきりつけたいんだよ、あたしは」

 

加賀「この話で唯一意見が一致したわね」

 

那珂「そんな戦闘狂みたいな…」

 

加賀「たとえ戦わなくても、無理にでも私はあなた達を止めて連れ帰るわ」

 

那珂「あー…」

 

北上「どうする?」

 

那珂「ごめんなさい、北上さん、やっちゃって」

 

北上「オーケー…さあ、やるよ、加賀」

 

加賀(北上、そっちが全ての距離を“コントロール”しながら戦うのが得意なのはよく知ってる、当然対策してきた)

 

北上「…なにそれ」

 

那珂「ええぇ…!?それは、ズルじゃ…」

 

加賀「言ったはずよ、無理にでも連れ帰ると」

 

加賀の手のひらから艦載機が垂直に浮き上がる

 

北上「垂直離陸とか、ヘリコプターじゃん…」

 

加賀「この子達は明石が作った、最新式の戦闘機モチーフの艦載機よ…もちろん、性能も折り紙付き」

 

北上「無理にでもって、そういうことね…」

 

加賀「明石からは、胴体と頭さえくっついて、心臓が止まってなければ蘇生できると言われたわ

…それを信じて、あなたを殺すつもりで行くけど、どうする?」

 

北上「いいねぇ…シビれるねぇ…」

 

那珂(ほ、本気でやる気だ…!?)

 

加賀の手から続々と複数の艦載機がゆっくりと離陸し、加速して飛び立つ

 

北上「ホント、変な動きするね、戦闘機が真上に上がるなんて…それ回収できるの?」

 

加賀「真上に上がれるってことは、真下にも下がれるってことよ」

 

北上「ちゃんと帰れると良いけどね」

 

足元の砂利を掴み取って放り投げる

…物の見事にかわされたか…いや、一ミリも動いてない

 

北上「なんだ、武器は艦載機だけじゃ無いのか」

 

加賀「…今の回避で何がわかるっていうのよ」

 

北上「いやわかるよ、あれが当たらないなんて予測立てられたら、何?眼?」

 

加賀「……」

 

加賀が眼帯を(めく)

…青く光る目…義眼か

 

北上「そこまでやって負けたらダサいよ?」

 

加賀「武器も無しに勝つ算段があるの?」

 

北上「…なんのために、山に誘い込んだと思ってんのさ」

 

木々の中へと走る

 

北上(最初に頭上飛ばしてきた時からそっちの手札に艦載機があるのはわかってたんだから、対策はして…)

 

北上「…ヤバ…」

 

慌てて伏せる

周囲の木が木っ端微塵に吹き飛ばされる

 

加賀「…武装も、昔の艦載機よりグレードアップしてる…誘導弾もあるわ、使ったら殺しかねないけど」

 

北上「はー、怖い怖い…」

 

砕けた木を拾い上げ、茂みの中を走る

 

加賀(流すと思ってるの?)

 

北上(…加賀の感知の仕方が、あたしの予想通りなら…!)

 

手元の木をライターで炙り、茂みの中を突き進むように投げる

 

加賀「熱感知だとでも思っているの?」

 

北上「どっちでもいいよ、どっちにしても、効果覿面(こうかてきめん)だからさ」

 

那珂(白い煙…?…いや、水蒸気みたいな……茂みに引火させた!?)

 

加賀「…なるほどね、レーダーも、肉眼も、両方同時に潰したわけ」

 

北上(…やっぱ、機械の目を通して艦載機の視界が見えてるんだ?…ヤバいな、それ)

 

勝利条件はお互いに本体を叩く事

なのに、加賀には護衛がある

 

それも、音速のだ

 

加賀「…低空飛行で遊びに付き合うのはヤメ、本気で仕留めにかかるわ」

 

北上「……」

 

艦載機が高く高く飛び上がる音がする

…これは良く無い、上からじゃ逃げ場が無い

 

北上(視界が悪いのはお互い様だ、ならやりようはある)

 

足元の石をありったけ拾う

 

加賀(…!煙の合間、動いた!)

 

服と茂みの擦れる音を頼りに、艦載機の銃撃…しかもかなり正確な…

 

北上(殺すつもり満々なんじゃないの?)

 

加賀「いつまで煙の中に隠れてるつもり?…酸素はいつ切れるかしら、まだ息は持つの?」

 

加賀のそばの茂みが揺れる

 

加賀「っ!…キツネ…?…さっきの音とは真逆すぎる、流石に…」

 

戦闘機が数機、飛び出したキツネにに接近し、通り過ぎる

 

加賀(…やっぱり居ない……いや!)

 

北上「今気づいても、もう遅い…!」

 

たとえ、小回りが効くとしても

たとえ、数瞬で反転できたとしても

真後ろに攻撃はできない

 

茂みから飛び出して加賀に飛びつく、そして、片手で首を取り、もう片方の手で顔面を殴る

 

加賀「あぁあっ!!このッ…!!」

 

北上「っ…!」

 

背後から突っ込んでくる艦載機を加賀から飛び退いてかわす

艦載機は地面に突っ込んで爆散した…ってか、あんだけ(えぐ)れる威力って…

 

加賀「ふーっ…!……落ち着きなさい、呑まれない……」

 

北上「ねえ、今の当たってたら死んでたけど?」

 

加賀「すでに尊厳的には死んでるようなものじゃない?というか、なんで上裸(じょうら)……

…ああ、あの時煙の中に見えたのは、既に服だけ…」

 

北上「正解、服に石詰めて投げたんだ、本物っぽかったでしょ?

艦載機共も地面に突っ込んで居ないんなら、ようやく五分(ごぶ)だ」

 

加賀「……近接戦闘は、大淀のところに行ってから学んだわ、構えも、足捌きもね…」

 

加賀が構えを取ろうとした瞬間に、顔面に石を投げつける

 

加賀「っ!?」

 

直撃、ふらついて顔面を抑えた今、仕掛ける

 

北上「自分は艦載機使って、コレに卑怯とか言わないよね?」

 

顔を上げた瞬間、殴り倒す

殴って蹴って、反撃させない

 

那珂(うわぁ……えっぐぅ…)

 

加賀「ぐっ…!ぁっ…!」

 

北上「……こんなとこか」

 

こんだけボロボロにしたら、流石にしばらく立ち上がれないはず

 

北上「行くよ、那珂」

 

那珂「え、いいの…?」

 

北上「…まあ、服は撃たれてボロ布だろうから後でどうにかするよ」

 

那珂(そうじゃなくて…)

 

加賀「…待ちなさい」

 

北上「今更話し合いでもしたい訳?

 

加賀「あなた達がやってる事は、救いにはならないわ」

 

北上「…はぁ…別に知らないよ、そんなの…って」

 

加賀が無理矢理立ち上がってる…

 

加賀「…わかってるの?貴方達のエゴで静かに暮らしてた大多数が再び理不尽に差別の目を向けられることになったのが…

それが貴方達の目的なの?これ以上、余計な事はしないで」

 

北上「だから…」

 

那珂「それは違う!…と、思います…」

 

北上「那珂?」

 

那珂「……私は…このまま、静かに死んでいくのは嫌だ…それに、変化したくないのは…加賀さんが、普通に暮らせてるから…だと思います…」

 

加賀「…どういう意味よ」

 

那珂「だって、北上さん言ってたもん…虫食べなきゃ生きてけないような所にいたんだよ…?」

 

北上(いや別にそれは好きで食べてるだけなんだけどな)

 

那珂「それに、ゴミを漁らなきゃ生きてけないような子達も居るんだよ…?

なのに、変わらなくていいの…?…大人しく、最下層の生活をして、人生を不満なまま終えなきゃいけないの…?違う、間違ってるよ、そんなの…!」

 

加賀「……だとしても…」

 

那珂「誰かはどうしても犠牲になるよ!…世界ってそういうものだもん、だったら私がなる!…なんにだってなるから…だから、今は、みんなに勇気を与えられるアイドルで居させて…

後少しでいい、少しだけで良いから…私が、世界を変えるから…」

 

北上「那珂…」

 

加賀「…貴方、自分が何言ってるかわかってるの?

…そんな事できるくらいなら、なんでこんな…」

 

那珂「そのセリフは…少なくとも、加賀さんは言っちゃダメだ…よ……あー…と、思います…」

 

加賀「……」

 

北上「ま、加賀は好き放題してきたんだ、ここは今まで楽しんだ分だと思いなよ」

 

加賀「…そうね、いいわ、ここは譲ります」

 

北上「……納得してないでしょ」

 

加賀「傷が癒えたら仕返しに来るわ、次は気取られる前に撃たせてもらうけど」

 

北上「あっそう」

 

加賀「……でも、確かに私は自分の今の地位を失うのを恐れていたわ、それについては改めるつもりよ」

 

那珂「…ありがとうございます」

 

加賀「川内には、できた妹がいるのね」

 

北上「だね」

 

那珂「…えへへ…」

 

 

 

 

 

春雨「な、ななななっ…なんで裸なんですか!?」

 

北上「いや、まあ、服一枚で命拾ったんなら安くない?」

 

那珂(あー、確かに)

 

春雨「それは安いですね…ってなりませんよ?!

…なにがあったんですかぁ…」

 

北上「それより、何か服買ってきてくれない?」

 

那珂「まあ、流石にそれじゃ公然わいせつ罪…」

 

春雨「…それよりも、ご飯にしません?」

 

春雨が飯盒(はんごう)を取り出す

 

那珂「なにそれ…変な形」

 

北上「えっ」

 

春雨「…飯盒知らないんですか…?え…?」

 

那珂「…はん、ごう…?」

 

北上「焚き火でご飯炊いたりする道具だよ」

 

那珂「…あー!キャンプとかで使うって聞いたことある!でも今はスキレットとかそういうのがあるから使わないんだっけ!?」

 

春雨「…使いますよ…?」

 

北上「ジェネレーションギャップってヤツ?いや、都会っ子だから…というか、春雨ダメージ受けすぎ」

 

春雨「……取り敢えず、ご飯食べましょう…ほ、ほら…美味しそうですよ…このワカメ…」

 

北上(なんでワカメ?…え…?市場で買ったのワカメだけ…?)

 

那珂「…ワカメ…酢の物?」

 

北上「いや、お味噌汁でしょ」

 

春雨「…えっと、コレと食べます」

 

那珂「…タケノコ?」

 

春雨「実は、山道を歩いてる時に見つけて…」

 

北上「へえ、どう食べるの?」

 

春雨「炊きます!」

 

那珂「…タケノコ炊くんだ、ご飯じゃ無くて…」

 

北上「いや、普通に煮るのを炊くって言ってるだけだよ」

 

 

 

春雨「で、こちらが若竹煮です!はい!」

 

北上「うわぁ…とんだねぇ…?」

 

那珂「??…何が…?」

 

北上「いや、なんでも…ていうか」

 

ワカメとタケノコ煮ただけじゃん…

 

春雨「どうぞ!」

 

那珂「…はむ…」

 

北上「…あむ……んー…これは…」

 

ワカメとタケノコ…だね

 

那珂「……」

 

北上(思ったよりなんでもなさすぎて那珂も意気消沈してる…)

 

春雨「…美味しくないですか?」

 

北上「いや、美味しいは美味しいんだけど…」

 

那珂「…あれだけ時間かけてタケノコ煮て、ワカメと一緒に更に煮込んで、これかぁ…って…」

 

春雨「……その…これでも、昔から伝わる伝統ある日本料理で…」

 

北上「あーいや、ごめん!…えっと…」

 

那珂(あんなに自信満々に出されたら期待しちゃうよ…)

 

春雨「…あむっ……美味しいのに…」

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