食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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閑話 皺寄せ

加賀「…全く…酷い目に合わせてくれたものね…」

 

…目がよく見えないほど顔面を執拗に殴られたし、石もぶつけられた

最新鋭の艦載機も、つい全て無駄にしてしまった

 

加賀(…それにしても、この姿で街を歩くのは目立ちそうね…)

 

加賀「…あら……まだ、生きてた子が居たのね」

 

…一機だけ緊急着陸に成功していた…しかも、まだ飛べる

 

加賀「悪いけど、もう一度飛んでくれるかしら…迎えを読んでくれると助かるのだけれど」

 

壊れかけの艦載機を無理矢理飛ばし、迎えを呼ばせる…これで少しは休める…と思ったのに

 

加賀「…うるさいわね…こんな山奥で、何を…」

 

瑞鶴「こんな…ふざけんなぁぁぁっ!!」

 

加賀「…瑞鶴?」

 

…声が…聞こえたから、そっちに向かった

そうしたら…

 

加賀「…これは、何」

 

…血痕…何故?

瑞鶴の叫び声、そしてこの血痕

 

加賀「…不味(マズ)そうね」

 

北上なんかと戦うんじゃなかった

必要な時に足が動かない、走りたいのに、走れない

 

加賀「…居た…」

 

まだ、手遅れではないらしい

ただ、瑞鶴が抱き抱えている子供…意識がない?酷い出血…

 

瑞鶴「ホント、なんなのよアンタら…!」

 

男A「女、そのガキ渡せ、そいつは俺の財布盗もうとしたんだ」

 

瑞鶴「違うでしょ、見てたわよ!落ちたのを拾っただけ!しかも差し出そうとした瞬間殴るなんて、アンタら人の心あるの?!」

 

男A「チッ…さっさと渡せ!

 

瑞鶴「なんでアンタらなんかに…!」

 

男B「いや、現場抑えられてるんだ、2人まとめてでいいだろ?適合手術ってので若い女ならみんな関係なく“使える”ってよ」

 

加賀(…下衆ね)

 

瑞鶴「…力ずくでっていうならやればいい、アタシだって…!」

 

男A「なら、遠慮な…ぁがっ…?」

 

瑞鶴「えっ…あ…!」

 

加賀「……」

 

耳のやや下、後頭部側を、蹴りで打ち抜く

 

男B「なんだ貴様!」

 

瑞鶴「加賀さっ…え、既にボロボロ…?」

 

加賀「そこは触れないでいいのよ、瑞鶴、随分と情けないのね?その子は何?」

 

瑞鶴「説明は後でしますから!」

 

加賀「…まあ、いいわ」

 

男B「こ、この…!」

 

加賀「…動揺が見て取れる、北上にとっては、私はこう見えてたのかしら」

 

殴りかかってきた男の腕を捌き、腹部に蹴り、そして首を絞めあげる

 

加賀「だとしたら、勝てるわけが無いわね」

 

意識を失った男を投げ捨てる

 

瑞鶴「あ、あの…!あだっ!?」

 

近づいてきた瑞鶴の頭に手刀を落とす

 

加賀「何やってるの?貴方も近接格闘の心得はあるでしょう?戦闘訓練を活かしなさい」

 

瑞鶴「あ、そ、そこなんですね…」

 

加賀「大淀さんの護衛って話だったけど、仕事の内容が変わるくらいよくある話よ

それよりも、その子は」

 

瑞鶴「…私の監視対象です、その…石は投げられるわ、殴る蹴るの暴行を受けるわで…見てられなくて」

 

加賀「…確かに、額が割れて派手に出血してるけど、深い傷は無い…か」

 

命に影響が出るほどのダメージじゃない…

でも、こんな幼い子まで、こんな目に遭うならやはり那珂は止めなくてはならない

もちろん、北上も…

 

加賀「…っ」

 

瑞鶴「どうかしましたか」

 

加賀「…逃げるわよ」

 

瑞鶴「えっ」

 

リ級「……」

 

タ級「血ノ、匂イ…」

 

瑞鶴「…ここ、海に隣接してないんだけど」

 

加賀「そうね、でももはや関係無いみたいよ」

 

タ級「…オ腹、減ッタ」

 

リ級「今日ハ、沢山食ベラレル」

 

深海棲艦が倒れた男たちに覆い被さる

 

加賀「待ちなさい、その2人は警察に突き出すわ、食べさせるわけには行かないわね」

 

瑞鶴「ちょっ…!」

 

加賀「…どの道、こんなに近くでは逃げきれないわ、向こうは遠距離にも対応できるのよ」

 

瑞鶴「……」

 

瑞鶴が子供を地面に寝かせる

 

リ級「…5匹カ」

 

タ級「フフフ…」

 

瑞鶴「…ああもう!」

 

瑞鶴と並んで構えをとる

 

加賀「…瑞鶴、こっちを向かずに聴きなさい

私は今、義眼じゃ無い方の目が霞んでるわ、動きはこっちに合わせて」

 

瑞鶴「無茶言いますね…昔からですけど…!」

 

加賀「それと、背中、スカートとの間に拳銃が入ってる…相手は装甲をつけてない、上手く狙えば有効打になる」

 

瑞鶴「自分で使えばいいでしょう…?!」

 

加賀「見えないのよ、ちゃんとはね」

 

瑞鶴「ああもう!」

 

瑞鶴が拳銃を抜き取り、向ける

 

リ級「…例ノ弾カ?」

 

タ級「サア?…デモ、気ヲツケルニ越シタ事ハ無イ」

 

深海棲艦が艤装を展開した瞬間、距離を詰める

 

加賀(当たったら死ぬのは間違い無いけど、それほどの大きい武器、取り回しは最悪、なら、接近戦に持ち込めば…!)

 

瑞鶴が接近を援護する射撃

そして、距離を詰め切ったら近接格闘…

 

加賀「っ…!」

 

拳を、受け止められた

 

リ級「ナルホド、型ハ綺麗ダナ」

 

加賀(この深海棲艦…!?)

 

瑞鶴「やあぁぁぁッ!」

 

リ級「グ…!?」

 

瑞鶴がリ級の顔面を蹴り飛ばす

 

タ級「…ドウスル」

 

リ級「コッチモ、同ジ土俵ニ上ガッテヤル!」

 

タ級「了解シタ」

 

深海棲艦との格闘戦…

まさか、こうなるとは…しかし

 

加賀(…マズイ、思っていたより…強い)

 

瑞鶴(向こうも連携をしっかり組んで攻撃してくる…!)

 

片方が殴りかかってきたのを防いだと思えば、もう片方が横から現れて打撃を加える

もしそれを抑えにいけば、逆にそちらを二人掛かりで仕留めにくる

 

加賀(深海棲艦のクセに…!)

 

リ級「ドウシタ?ソノ程度カ!ソンナモノカ!!」

 

リ級と掴み合い、膠着状態…

いや、これこそが狙い…

 

加賀(瑞鶴!)

 

瑞鶴「今……あ!?」

 

瑞鶴が拳銃を向けた瞬間、タ級に蹴りで弾き飛ばされる

 

タ級「ダト思ッタ!…ココマデダ…!」

 

タ級が笑いながら、拳を振り上げ…

 

加賀(…今!)

 

リ級の腰を両手で掴み、持ち上げる

 

リ級「ナッ!?ナ!ナンダ!コノ馬鹿力ハ!?」

 

瑞鶴に向けて振り下ろされる瞬間を狙い、リ級ごと突っ込む

 

タ級「ウワッ!?」

 

リ級「ガアァァァッ!?クソッ!」

 

タ級の拳がリ級の側頭部を砕いた…!

 

加賀(向こうのほうが馬鹿力ね…!)

 

瑞鶴「さっすが…!」

 

タ級「クソッ!…イヤ、下ガルゾ!」

 

リ級「アア"ァ!クッ…!」

 

深海棲艦が距離を取り、艤装を展開する

 

加賀「瑞鶴、何してるの!撃ちなさい!」

 

瑞鶴「いや…拳銃…どっか飛ばされちゃってて…」

 

加賀「…なんて事、七面鳥を信頼した私がバカだったわ」

 

瑞鶴「はい!?」

 

加賀(少しでいい、僅かな瞬間、意識をブラせれば、もう一度接近戦に持ち込める…)

 

リ級「モウ遊ビハナシダ!」

 

…徹底してる

動いてるから当たらない、というより、接近できる位置を潰すような砲撃…

 

瑞鶴(確実に仕留められるようになるまで、消耗させにきて…)

 

加賀「…こんなの、突っ切って…!」

 

瑞鶴「加賀さん!?」

 

…無茶な道を通ろうとしている

わかっている、だけど瑞鶴ならきっとコイツらを仕留められる、なら…!

 

リ級(モラッタ…!)

 

主砲が向けられる

目は閉じない、一切の躊躇いなく.

 

加賀「…心臓と頭だけ、守る…!」

 

両腕を盾に、至近弾を受けながら突っ込む

 

リ級「バカガ!!…ウグッ!?」

 

タ級「ナ、ナンダッ!?ウッ!」

 

加賀(銃撃…誰が?)

 

瑞鶴「え…あ!今!」

 

瑞鶴が攻撃の手を止めた深海棲艦に接近し、馬乗りになる

 

瑞鶴(艤装の根幹!ここだ!)

 

タ級の艤装が瑞鶴の手によって操作され、リ級を捉える

 

リ級「ク…ナニガ……ッ!?ヤ、ヤメ…」

 

瑞鶴「もう、遅いわよ!」

 

 

 

 

加賀「…危なかった、助かったわ」

 

明石「いやー、間に合ってよかったです」

 

…明石が瑞鶴のミスで蹴り飛ばされた銃を撃って支援してくれなかったら、2人揃って死なずに済んだ、か

 

加賀「…どう」

 

明石「しばらく療養が必要ですね」

 

加賀「そう…それにしても、ずいぶん早く来たのね、艦載機を飛ばしたのは少し前なのに」

 

明石「いやー…それは、その……怒りません?」

 

加賀「なにが」

 

明石「…素手で複数の深海棲艦相手に大立ち回りする北上さん(バケモノ)相手にしたら、無事じゃ済まないだろうなぁ…って」

 

加賀「……私が負けるのを見越してきてたのね」

 

瑞鶴「加賀さん、拗ねないでくださいよ…実際負けてるんだし」

 

加賀「……」

 

瑞鶴の正面まで歩く

 

瑞鶴「…え、なんですか、まさか本当のこと言われて怒ったとか…」

 

加賀「ふんっ」

 

瑞鶴の顔面に頭突きを喰らわせる

 

瑞鶴「あだぁーっ!?…大人気なさすぎ…!」

 

加賀「……帰るわよ」

 

明石「はい、最新鋭の艦載機ロストした報告書も、たくさん書いていただかないと…」

 

加賀「……瑞鶴、なにしてるの」

 

瑞鶴「…私は戻りません」

 

加賀「どうして」

 

瑞鶴が子供を抱き上げる

 

瑞鶴「この子の監視もあるし、やりたい事もあります」

 

加賀「…何」

 

瑞鶴「……この子、意識が朦朧としてる時、ずっと…青葉さん青葉さんって、誰かを呼んでた…

その人に会わせてあげたいんです」

 

加賀「…そんなの、私たちの役目じゃ…」

 

瑞鶴「死んだら会えません、2度と、会えないんですよ」

 

加賀「……」

 

瑞鶴「私達がした後悔、させたくないんです」

 

加賀「…そう……勝手にしなさい」

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