食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
…あー…基本服は着れればオシャレじゃなくていいと思ってる北上様だよ
でも、流石によく知らない人の顔が大きくついてるやつとかはイヤかなぁ…うん、流石に…
北上「なんでこんなの買ってきたの…?」
春雨「えっと…カートセールで300円だったので…」
那珂(主婦みたいな価値観で買ってる…)
北上「…このおっさん誰…?」
那珂「…衣装着る?」
北上「目立つからヤダ…いや、これよりはマシか…」
那珂「……流石に、衣装着るのはダメかぁ…」
春雨「…ワガママ…」
北上「うぐ…いや、確かにあたしの好みの問題なんだけどさあ…」
春雨「むー…」
那珂「春雨ちゃん…まだ若竹煮のこと怒ってる…?」
北上「絶対怒ってるよ…」
春雨「……あれ?」
北上「…血の匂い?」
那珂「え?」
北上「鉄分の匂いがする、血に近い……」
匂いをたどり、探る…
…居た、木にもたれるように寝かされてる…
那珂「こ、この子、怪我してるよ!?」
春雨「艦娘…」
北上「…こいつ…朝霜だっけ……出血は止まってるけど」
首元に手を当てる
脈はあるし、体温もある…少し低いけど、問題ない
北上「…春雨、薬買ってきて、那珂は水組んで煮沸消毒…血の匂いで獣がやってきたら困るからあたしは見張りする」
那珂「う、うん…」
春雨「わかりました…」
…2人とも、離れてくれたか
北上「……瑞鶴、アンタの仕事でしょ、放棄するの」
瑞鶴「なんで知ってるのよ…いや…それよりも…」
瑞鶴が木から飛び降りてくる
瑞鶴「…アンタたちのやったことは、不用意に敵意を刺激しただけよ、この子はその犠牲者…他にも、各所でそんな子が出てきてるはず…」
北上「かもね」
瑞鶴「かもねって…アンタ、自分のした事に…!」
北上「責任取って、朝霜はあたしが面倒見るよ、他に言いたいことある?」
瑞鶴「……ふざけてんじゃないわよ…!」
北上「ふざけてないよ、今は変わってる途中なんだ、だから…」
瑞鶴「少数の犠牲に目を瞑れって…?…なら、アンタのやってることは最低よ…弱い、私もね」
瑞鶴が背を向けて、山を下る方向へと進む
北上「じゃあ、どうするつもり?」
瑞鶴「決まってるでしょ、もう一回戦争するのよ、それで、勝つ…勝たなきゃ、ダメなのよ
深海棲艦を全滅させて、2度と生まれないようにして、それが…唯一の、道なのよ…」
北上「…だよねぇ」
わかってる
でも、深海棲艦を絶滅させたら、その時こそあたし達が不要になって…排除される時でもある
北上(…深海棲艦って存在のせいで、国があたしたちを生かしてる…なんとも、皮肉だね)
兵器はどこまで強力だったとしても、自由意志が無い
だから管理下に置く事ができるだろう…でも、あたし達は、兵器じゃない、どちらかと言えば兵士に近い
…人は、世界を滅ぼす兵器より、自分より強い人を恐れてる、それが今の、理由なんだ
北上「だから、あたしは那珂の話に乗ったのに…
ホントに、ダメなのかなぁ…なんとか、ならないのかな…」
…希望を追いかけているのは、楽しいかもしれないけど…どれだがけ犠牲になるんだろ…
北上「…血が固まって傷口塞いでるけど、あんまり放置したくないな」
春雨「北上さん、これ、
那珂「これ、お湯!ちゃんと沸騰させたよ!」
北上「よし…春雨、ごめん、これが1番清潔な布だから…」
春雨「別にいいですよ」
春雨の買ってきたシャツを脱いで半分は細長く破り、残りはそのままお湯につけ、固く絞って朝霜の血を
北上「…血でわかりにくかったけど、顔色が悪いな、出血しすぎてるんじゃないの…?」
那珂「それ、助かる範囲の話…?」
北上「今のところは多分ね、鉄分を取らせなきゃ」
那珂「なら…」
春雨「ちょ、ちょっと待ってください!?」
那珂が手首を掻き切ろうとするのを春雨が止める
春雨「何しようとしてました!?」
那珂「…鉄分をあげようかと…」
春雨「どうしてそれが血を飲ませる事になるんですか!」
那珂「だって、この子、艦娘だよ…?
…絶対私たちの犠牲者だと思って…」
北上「…犠牲が出るのは、わかってたんだ?」
那珂「……うん、反対感情を煽る事にもなるのはわかってた、でも、一度感情を煽った以上、もう止まれないよ、中途半端に終わらない」
北上(それは、いいんだけど)
那珂「私は、自分のやった事に責任を持つ、だからこの子を生かすために全力で…」
春雨「わかりましたから!なら、山菜を積みに行きましょう!?…ヨモギとかなら、たしか鉄分が多いはずです…」
北上「春雨、頼んだ」
春雨「はい…」
那珂「それなら、私1人でも…」
春雨「初心者に任せるとトリカブトを取ってくる場合があるのでダメです」
那珂(…なにそれ?鳥の兜?)
北上「この顔は分かってないよ」
春雨「毒草です、良く似てるんですよ…」
那珂「…ごめん、やっぱ2人で…」
北上「その方が良さそうだね」
那珂「取ってきたよ!」
春雨「ついでにいろんな山菜もとってきました!あと、椎茸もありましたよ!」
北上(うげ…)
北上「それ、ホントに大丈夫なやつ…?」
那珂「え?何が?」
春雨「大丈夫ですよ!はい!」
北上「…うーん…」
那珂が焚き火を起こして、木の枝に刺した椎茸を焼く
春雨「…えっと、これとこれで」
春雨が大きい石と小さい石を火に突っ込む
那珂「何するの?」
春雨「石を消毒してるんです、そのあと、石で山菜をすり潰して、食べさせます」
北上「…コイツ、あたしらで面倒見ていいのかなぁ…」
春雨「…わかりません」
那珂「でも、1人にはしとかないよ…」
北上「まあね、じゃあとりあえず方向性だけ決めようよ」
那珂「…今と変えない、絶対に」
北上「……ホントに?…あたしは、良いんだけどさ…」
那珂「差別が間違ってるって声をあげなきゃ、消えないんだよ…?」
春雨「…そうです、だから…」
北上「あたしは矢面に立つのは慣れてる
しんどい思いするのもね…でもさ、守るつもりの仲間に、背中を撃たれるかもしれない」
那珂「…そんなの、もうずっと受けてきたよ」
春雨「そうですね…守ってきた人達に裏切られたような思いで生きてきましたから」
北上「……」
加賀があたしを狙ってくれれば良いけど
那珂や春雨が狙われた時が怖い
加賀で終われば良いけど、この朝霜は誰にやられたのか?…民間人?
暴徒のような事をする民間人か
北上(あたし1人で、どんだけ守れるんだろ…)
…それを見誤ったら、人が死ぬ
それだけは、防がなきゃならない
那珂「…私、ちょっと出てくるね、さっき川見つけたんだ、お水…もっといるよね?」
北上「まあ…確かに、頼んだよ」
春雨「……北上さん」
北上「大丈夫、あたしは抜ける気ないし、ちゃんと守るから」
春雨「…はい」
朝霜「ん……んぅ…」
北上「お、起きた?」
朝霜「…だ、れ……大井さん…か?」
北上「誰それ?」
春雨「意識が朦朧としてるんだと思います」
朝霜「……ぁ…?…いっつつ…!…なんだ、これ…」
北上「酷いやられようだね、なにがあったの」
朝霜「…あー…北上サンか…」
北上「ん、そうだよ」
朝霜「…なんか、すごいことやってんだっけ…?ていうか……なんで裸なんだ?」
北上「アンタの包帯に服使ったから」
朝霜「…ああ、手当てしてくれた…のか……その…ありがとう…この前も、今回も…」
北上「いいよ、それで、質問に答えてよ」
朝霜「…コケた、階段から転がり落ちた…じゃ、ダメか?」
北上「なんで隠すのか教えてくれなら納得してあげる」
朝霜(ダメって言ってるようなもんじゃん…)
朝霜「…テレビ屋の画面でニュース見てさ……アタイは…アンタらの活動、応援してる
だから…」
北上「……なんで?そんな目にあったのに?」
朝霜「幸せになって欲しい人がいるんだ、きっと、アンタらが頑張れば…その人も生きやすくなると思ってる」
北上「…もっと苦しくなるかもしれないよ?」
朝霜「でも…わかんねえだろ?もしかしたら良い方向に行くかも」
北上「……そっか、そうだね、あたしが悲観的になっても仕方ないしね」
春雨「お話のところ悪いですけど、これ食べてください」
朝霜「…なんだこれ」
春雨「山菜ペーストです、ほら、早く」
朝霜(…茶色と緑の、不味そうな…)
北上(うわぁ…)
春雨「北上さんもお腹減ってますよね?」
北上「え?あー…」
春雨「キノコ、焼けてますよ」
北上(…ペーストよりはマシか…)
焼き椎茸を頬張る
北上(おお…ジューシーで美味しい!前にツキヨタケって毒キノコ食べて以来敬遠してたけど、美味しいじゃん)
朝霜「な、なあ、アタイもあっち…」
春雨「鉄分が足りてないので、こっちです、ほら、あーん」
朝霜「…あむ………まっじぃ…せめて塩味つけてくれよ…」
春雨「好き嫌いしてると大きくなりませんよ?」
朝霜「……あむ…」
春雨「よしよし」
那珂「あ!目覚めてる!」
北上「遅かったね那珂…って…なにそれ、小魚?」
那珂「川で獲れたんだ〜、焼いて食べよ!」
北上「おお…魚獲るの難しいのに…那珂ってやっぱこっち側なんじゃ…?」
那珂「って…あれ?椎茸は?」
北上「え?…あれ、無い…なんで?」
朝霜「今鳥が持ってってた」
上を見上げたら、くるくる回ってるトンビ…
北上「今度は戦闘機じゃ無いな…って!コラー!返せ!」
那珂「もう良いよ、ほら、こっち食べよ?」
北上(うーん…水上機使えれば鳥捕まえるの簡単かなぁ)
春雨「トンビは食べられませんよ?」
北上「…わ、わかってるって」
北上「あのさ、春雨」
春雨「はい?わ…北上さん、顔色が…」
北上「…すごくお腹が気持ち悪いんだけど」
春雨「え…あー…」
那珂「……やっぱりあのキノコ…」
北上「…2度と、キノコは食べない…ううっぷ…」
朝霜(…アタイよりこっちのが大丈夫じゃないな…)