食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
那珂「…あそこかな、なんで悪いことする人はみんな人気ない場所好きなんだろう
…北上さん達がやられる前に突入しなきゃ」
いい感じに廃墟な工場に家屋…
ああいう陰気なところは近づきたくないんだけど
春雨「…ほんとにやるんですか…?
…警察に任せるとか…全部無くしちゃうかもしれないんですよ?!」
那珂「ずっと追いかけてた、それこそ、私の人生全てを賭けて」
春雨「…そんな、復讐の為に自分の人生を投げ出すなんて…」
那珂「……確かに、私は戦争なんかしたくない、平和な方がいいとは思ってる」
春雨「なら!」
那珂「でもね、艦娘に手を出しても相手はなんともないんだよ?おかしくない?」
春雨「いや、それは…」
那珂「おかしいよね?!
…艦娘に手を出すリスクも、同時に知らしめなきゃいけないんだよ!
私達は、非暴力を叫ぶだけじゃダメ…!ホントはわかってた、だから…
だから、アイドルとして有名になって、艦娘の地位を向上させられれば!…そうすれば、誰も手を出さなくなるかもって…信じてたのに…!!
その答えがコレなら、私は容赦しない…!」
春雨(…那珂さんの中では、もう、ダメだったんだ…
最後のチャンスを、人間が捨てたって思ってる…)
那珂「ついて来なくていいよ、危ないから」
春雨「…イヤです、私は、北上さんを助けに行きます、那珂さん、囮にした責任は果たして下さい」
那珂「……それは、そっか、わかった、ちゃんと指示に従ってね」
春雨「はい」
北上「っ…たた……あー…?なにこれ…って……穴だらけ…?」
…磔にされてる、しかも、ご丁寧に太い釘で両手両脚貫いてくれちゃって…その上から縛られてる…
北上「…っ…たく…意識したら痛みが…何か別のこと…そうだ、朝霜は…」
…居た、体育座りの状態で縛られてる、意識もなさそうだけど、目立つ怪我は2人ともない…
…2人とも?
北上「……あれ、は…嘘…?…山雲!山雲だ!山雲!!」
朝霜の隣に縛られてるの、山雲だ、間違いない
でも…意識が無い…
北上(…どうすれば…)
コレほど入念に拘束されてちゃ、いくらなんでも外す手段はない
なにより、外しても…多分この位置に撃ち込まれてると筋が斬られてる
北上(というか、これ、前に神通やってた奴らと同じグループじゃない?
…あの時、車に注意を向けた時に背中を撃たれた麻酔弾…確信はないけど、あの時のと似てたし、この念の入れよう…)
…なら、那珂が止まらなくなる…それは、ある意味まずい
北上「……にしても、誰も出てきやしないか…
…煽る相手もいなきゃ、何もできないね」
…久しぶりに、待つしかないか
那珂「…見張りを排除、ここからはバレるまでの時間の問題だよ、さっさと行こう」
春雨「はい…でも、なんだか騒がしくないですか?」
那珂「…口論してるみたい、深海棲艦も噛んでるけど、見張りは人間だったし、複雑なんだと思うよ」
春雨「…なら、今のうちに?」
那珂「うん」
ゆっくりと、でも素早く進む
でも、見かけた奴は…
那珂「ふっ…はぁっ!」
一撃で仕留めて排除しながら
春雨(つ、強い…けど…)
春雨「…殺しはしないんですね」
那珂「武器がないから、時間かけても仕方ないでしょ?」
春雨(…あればやってたんだ…)
那珂「……アレは……春雨ちゃん、下がってて」
春雨「え?」
那珂「一撃で仕留められなかったら、自分の身を守ってて、アレ相手にしながら守る余裕はないから」
春雨「は、はい…?」
…足音を消しながら、ゆっくり加速…
目標は首筋、掴んで押し倒すイメージをしっかり作り、接近して…飛び上がる
那珂「っ!」
しまった、背後の明かりのせいで影が…
天龍「ッ!!」
かわされた…!
最悪だ…
天龍「……テメェは、呉の川内型じゃねえか」
那珂「そういうそっちは、佐世保の天龍…」
天龍「ハッ!…相変わらず薄ら汚ねえ奴らじゃねぇの、昔やった演習のアネキの敵討ちか?」
那珂「あの演習自体は、ウチの勝ちだったよ」
天龍「っても、川内はオレに一方的にやられちまった、だろ?…圧倒的な差だったじゃねえか」
那珂「…確かにね、でも、それを言うなら神通お姉ちゃんとの妹対決はこっちの勝ちだったでしょ?…っていうか、そっちの妹さんは?」
天龍「……死んだよ」
那珂(…なるほどね、それでヤケでも起こした?だからこんなことに手を貸して…)
天龍「…殺される覚悟はできてんのか」
那珂「お互い様…!」
天龍「上等!!」
振り下ろされる初太刀を大きくひいてこわす
天龍「同じ
那珂「…
天龍「期待してねえよ」
那珂「やあぁぁッ!」
距離を詰め、踏み込み…
天龍(来い!)
那珂「ッ!」
構え無しの状態から、一瞬で突きが…
慌てて
那珂「ウザ…!」
天龍「テメェこそ」
…流石に、武器を持ってる相手はやり難い…
那珂(徒手格闘は1番得意だけど、相手も刀を使いこなしてる…流石に…!)
天龍(…上手いこと、いなされてやがる…しかも、隙を見せれば細かい打撃を打ち込もうとしてくる…
一手持ってかれれば、そのまま引き摺り込まれる)
蹴りを出そうとした瞬間、またノーモーションの突き…
那珂「…そっか、その刀、艤装なんだ?
…あ、わかった、だから
天龍「チッ…」
那珂(…動揺してない…いつ仕掛ける?今?…いや、まだ?)
天龍(……タネが割れた以上、向こうが戦い方を変える前に仕留めねえと…どの道、有利はこっちだ)
那珂「っ!?」
向こうから、攻めてきた…!
天龍「オラオラァ!どうしたぁ!!」
那珂(様子見メインのさっきまでと変わりすぎて、動きが、読めない…!)
天龍「このまま、叩き潰す!」
北上(なんか、騒がしくなってきたなぁ…那珂だとしたら、もう止まらないか……ってか)
北上「…磯臭いからさ、えーと…消えてくれる?」
戦艦棲姫「圧倒的ニ不利デ、一息ニ貴様ノ事ヲ殺セル存在ヲ前ニ、ヨクモソンナ口ヲキケル物ネ?」
北上「あたしが深海棲艦に頭下げるとでも思ってんの?」
戦艦棲姫「…オ前ノ事ハ調べ尽クシタ、必要以上ニ対策モタテサセラレタ、無用ダッタガ」
北上「そっか、そりゃよかったね、無駄な手間かけるのは嫌いだけど、描かさせるのは大好きなんだ、あたし」
戦艦棲姫「……コレヨリ貴様ヲ、ユックリト殺シテヤル」
北上「いや、そういう事いう奴大抵失敗するからさっくり殺しなよ、時間かけて失敗して泣き見るのはそっちだよ?
それとも、あたしがそんなに怖い?」
戦艦棲姫「ナニ?」
北上「そんなにしっかり対策立てて、一思いに殺しても、怖くて怖くて、毎晩枕元が怖いせいで痛めつけるなんて発想になる
痛めつけて痛めつけて、自分は勝ったと思い込みたいから」
戦艦棲姫「ナニヲ、戯言ヲ」
北上「あんたのツラ、見覚えも無いけどさ、そんなに怯えてくれるなんて良い仕事したよね、あたしも」
戦艦棲姫「…ソノ口ガ何ノ為ニツイテルカ、教エテアゲマショウカ?」
北上「美味しいもの食べる為だよ、あとあんたを煽る為」
戦艦棲姫「…ソノ口ハ悲鳴ヲアゲル為ニ有ル、ヤリナサイ」
バケツを持ったヒトガタが現れ、何かの液体をかけられる
北上「ぶっ!…ゴホッ…口入ったんだけど……ペっぺっ……苦ぁ……あ?」
…釘打たれてる傷口が…
北上「…っ…!…ぐ、痛…!?…ぁ……!…こ、れ…修復材か…!」
戦艦棲姫「ゴ明察ネ」
無理やり塞がろうとして、変な感じになって…しかも…
北上(釘にまで、皮膚が広がってる…趣味悪いことしてくれるね…)
戦艦棲姫「…ヤッパリ艦娘ッテ不味ソウネ、トッテオキモ見セテアゲル…ホラ」
北上「あ…?……あ、そいつ…!」
…春雨達を探しに行った時に見た…深海…棲…艦…?
北上(…匂いは、間違いないのに…なんで?)
…人の姿形をしてる、完璧に人間だ
戦艦棲姫「ドウシテ?思ッタヨリ、反応ガ薄イ……他ノ深海棲艦達モ、コイツノ恐怖ニ反応シテナイ…イヤ、ソモソモ殆ド恐怖ヲシテナイ?」
北上「あたしが深海棲艦なんかにビビるわけないじゃん…あー…いったいなこれ…」
戦艦棲姫「…コイツ…オカシイノ?」
北上「そんなに褒めないでよ」
…深海棲艦に憐れむような目向けられるとは思わなかったな
戦艦棲姫「コイツ…自分ノ、ア…」
戦艦棲姫の背後の壁が吹き飛び、人間にしか見えない深海棲艦と戦艦棲姫に背後から瓦礫が直撃する
北上「おっ?」
戦艦棲姫「ウグッ!?」
…コイツが連れてきた深海棲艦、みんな消えたし
っていうか…
天龍「弱え弱え!なぁ!ええ?!」
那珂「くっ…!」
…何この2人、那珂と戦ってる方もさっきのと同じ、人間っぽい深海棲艦?
天龍「オラァ!!」
那珂「う…!」
…押されてるな、那珂
一方的な感じになってる…
北上(…このままじゃ何もできないけど…何か、何…か……あ)
…那珂と一瞬目が合う
余裕がないからか、無視されたけど…目は生きてる、それどころか…
北上「…うわぁ……那珂ってあたしが1番嫌いなタイプじゃん」
天龍「
刀が振り上げられたのを見て、那珂が距離を取る
天龍「…ハァッ!」
那珂「…!」
北上「えっ」
那珂、刀を足元の戦艦棲姫盾にして受けたけど
しかも斬った方も気にしてないけど…
北上(これは…)
天龍「今度こそ!」
刀を振り上げられた瞬間、那珂が構えをとって距離を詰める
天龍(刀の間合いより更に内に来る気か!だとしても、確実に死んだ!)
那珂「…はぁっ!!」
両肩への拳での突き…
天龍「っ!?」
内から外へ開くような衝撃に、振り下ろす挙動が一瞬止まり…地面から真っ直ぐな蹴り上げ、そして、その勢いのまま脚を脳天に振り下ろされる
天龍「ぐ、あ…!」
那珂「…ふっ!」
腹部への
那珂「…これで、2勝1敗」
天龍「クソ、が…!」
那珂が天龍の刀を拾い上げる
那珂「…妹さんの事は、知らずとは言え、余計な事言ってごめん」
天龍「互い様、だろうが…クソッ……さっさとやれ」
那珂「うん」
那珂が刀を振り上げる
北上「いや、待ってよ、先に助けてくれない?」
那珂「…待ってて、先にこの人を…」
北上「流石に敵でも艦娘殺すのはヤバくない?深海棲艦の匂いしないし、その人」
那珂「…いや、でも…」
天龍「…なんでお前が人質と会話してるんだ?」
那珂「え?」
北上「やっぱ、誤解ありそうだね、とりあえずこの突き出た皮膚切り裂いて、中の杭抜いてくれない?」
那珂「ちょっと待って意味わからない」
北上「やっぱ、靭帯つらぬかれて立てないし、手も動かせないかあ」
天龍「おい、なんでコイツ四肢に大穴空いてるくせに平然としてるんだよ…?」
那珂「…こう言う人だとしか……」
北上「…ってか、コイツら悪趣味だから、多分ここにもたくさん修復材あるよ、探してきてくれない?」
天龍「…あー…探してくるか」
那珂「うん…ちょっと待っててね」
北上「うん」
2人を見送る
北上「…あれ、あの深海棲艦と人間っぽいやつの死体は?…しまった、逃げられてる…」
春雨「あの、北上さん」
北上「おお、春雨?見てよ、山雲…」
春雨「それより」
北上「それよりって、山雲だよ、山雲」
春雨「今はいいですから!…あの、何か思い出しましたか?」
北上「え?…あー…」
北上(あの人間風の深海棲艦…あたしの忘れた知り合いなんだ…?)
…なんて答えればいいんだろう?
あの人間風の奴は、何者で、誰で…あたしのなんなんだろう
北上「んーん、なーんにも」
春雨「そうですか…その…余計な事を言ってごめんなさい、無理に思い出そうとしないでくださいね…」
北上「……わかったよ…ってか…うるさっ」
…那珂ともう1人、めちゃくちゃ暴れてるじゃん…
春雨「ずっと復讐したかったって言ってましたから」
北上「…やり過ぎたら、あたしらどうなるんだろ」
春雨「…それは…」
瑞鶴「そこについては心配いらない」
北上「…瑞鶴?なんだ、居たんだ?」
瑞鶴「これでも、仕事だから…上には報告済み、周囲にはもう部隊が展開して情報統制も始まってる
深海棲艦が人間を攫って襲ってるってね…何一つ嘘ついてないでしょ?」
北上「まあ、それで?逃げた2匹は」
瑞鶴「…それがね、異様に強かったみたいで、2人やられてる…死んでないからノーダメージみたいなもんだけど、片腕引きちぎられたり、内臓引き抜かれたり…
悍ましい事する奴もいたものね、まるでケモノみたい」
北上「うへぇ…」
春雨「……」
北上「…春雨?…どうし…て…」
いや、そうか、春雨が震えてるのは、あたしが忘れてるだけでソイツが知り合いだからだ
ソイツが敵に回ることの怖さを知ってるからだ
北上(…なら、あたしがやるしかないんだろうな…)
北上「…とりあえず、修復剤持ってる?」
瑞鶴「…傷口出して…ほら、これでいい」
北上「ん、ありがとう」
…ゆっくり修復してる感じがする…
でも、痛みは全然消えない…
瑞鶴「それじゃ、他のメンツに会うわけにはいかないから」
北上「戦争なんか危ないだけだから、やめときなよ」
瑞鶴「考えとくわ、それじゃ」
春雨「き、消えた…あ、あの、今の人は?」
北上「あー…」
那珂「あれ!?修復してる!」
北上「ごめん、春雨が修復材持ってきてくれたからもういいよ」
天龍「せっかくたんまり持ってきたのによ」
北上(バケツいくつもってんの…)