食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
両手両足再生治療中の北上様だよ〜
…いたい
北上「んじゃあ、山雲のこと助けてくれてたんだ?ありがとね」
天龍「そっちも、朝霜を面倒見てくれてたわけだろ、悪いな」
那珂「んーん!」
北上「成り行きだしね」
天龍「こっちもだよ、だからこそな、しっかし…朝霜の事は、青葉に任せたんだけどなぁ…」
天龍(いや、今はまだ衣笠に体取られてんのか?だとしたら流石に長すぎねェか?)
北上「青葉?」
天龍「大阪とか兵庫のあたりを根城にしてるやつだよ、つっても良い生活してるわけじゃなくて、日雇いで忙しいらしい」
北上(…なるほど、で、そいつが朝霜の面倒を見てたのに、それを放棄した?…ほんとにそうなのかな?
朝霜が1人で生きる診断を求めたのは捨てられたから…でも、筋は通るけど…)
春雨「起きた時に聞けば、全部わかると思います」
北上「んー…ってかさ、2人でここ制圧したの?人間の敵とかもいたんでしょ?そこそこな数」
那珂「え?うん」
天龍「まあ、そうだな?どんだけいたか数えてねえけど」
北上(傷ひとつないんだけど、こっちの方がバケモンじゃない?)
那珂「それより、立てるの?」
北上「…無理、手首にも、足首にも力入らないから、もうしばらくかかるかな…」
那珂「そっかぁ…」
天龍「なんでそんなに落ち着いてんだ?もっと焦れよ」
北上「焦っても仕方ないじゃん」
那珂「なんか、ネジが2、3本足りないよね…」
北上「……」
酷い言われ様…
北上「とりあえず、脱出しようか」
那珂「うん、もう欲しいものは手に入れたから」
天龍「欲しいもの?なんかやってんなとは思ってたが…」
那珂「深海棲艦と人間のつながりを示すデータ、拾ってきちゃった!」
北上(なんかの火種になりそうなものを…)
北上「…よ…っと…」
ふらつきながらも立ち上がる
春雨「大丈夫ですか…?」
北上「厳しそうだから、春雨、肩貸してくれる?」
那珂「じゃあ2人はこっちで背負おうか」
天龍「おう」
天龍「…なあ」
那珂「言いたい事はわかるけど、とりあえず黙秘しよう」
春雨「出た途端、警察に囲まれて護送車両に詰め込まれるなんて…」
北上「まあ、無傷で返り血多少浴びてるのと、ぐちゃぐちゃの肉塊と、どっち逮捕するかは明白だよね」
那珂「返り血浴びるのは二流だよ?」
天龍「殺してねーよ!ちゃんと峰打ちだ!あとオレが注意惹きつけてるからお前が無傷なの忘れんな!?」
那珂「えー?なんのことー?」
北上「佐世保と呉って仲悪いんだ?」
天龍「…いや、合同作戦とかやってた間柄だから…基地の仲は悪いわけじゃねえけど…」
那珂「水雷戦隊が出る時、軽巡が指揮をとることが多いんだけど、ね?」
北上(作戦の大筋で衝突…仲悪いのは川内型と天龍型だけか…)
春雨「…あ、車、止まりました」
車両のドアが開き、警察の制服を着た人が覗き込む
葛城「降りなさい」
天龍「あいあい、ったく…」
那珂「…はぁ…」
北上「……あんた、艦娘?」
葛城「無駄な口を叩かないで」
北上「…まあ、いいけどさ」
天龍「牢屋行きかと思ってたら、意外と普通の部屋じゃねーの」
那珂「…って言うか、会議室?なにここ」
どう見ても、勾留する部屋には見えない
椅子の前に円形に並べられた長机…
真ん中のプロジェクター…
北上(…このパターンは…)
席に座り、両足を長机に乗せる
春雨「行儀悪いですよ…?というか、足乗せないでください…」
那珂「足首より上は自由に動くからって…」
北上「どうせ見てるんでしょ?大淀、カメラどこにあるのか知らないけどさぁ」
春雨「え?」
入り口にいた警官風の奴らが小さく反応した
やっぱ当たりだ
北上「それとも直接来てる?いや、あの匂いがしないから居ないか、ねえ、プロジェクターつければいいの?誰かさっさとつけてよ」
那珂「何言ってるの?」
天龍「…コイツ、やっぱおかしいのか?…って…」
プロジェクターが勝手に起動する
北上「ほらやっぱり…」
大淀『ご無沙汰してます、先輩』
春雨「お、大淀さん!?」
大淀『とりあえず、脚をおろしてください、元身内としても恥ずかしいので』
北上「おー、この態度であんたを不快にできるならいくらでもやるよ」
天龍「どうなってやがんだ…?」
那珂「…大淀って人の事は、少しだけ聞いてるけど、まさか…」
大淀『…はぁ……お察しの通り、そこにいるのは私の部下です、処理が面倒になる前に、皆さんを回収させていただきました』
春雨「処理って…?」
大淀『あなた達があの場にいた痕跡を消してるんです』
那珂「な、なんで…?」
大淀『艦娘に対して、世間がより攻撃的な目を向けることになるのを防ぐためです
あなたがやった行為は正義かもしれませんが、世間から見ればより凶悪なものとして、艦娘を悪しきものとして見るようになる行為でもあります
確かに、抑止のためには力を誇示する必要あるでしょうが』
那珂「…でも、早でも、私は私の人生を
大淀『賭けにでるのは勝手です、好きにして構いません
でも、もしかしたら平和的な道が芽吹く寸前だったかもしれないのに、それを捨てるんですか?』
那珂「…でも、艦娘に手を出しちゃいけないって、しらしめなきゃ…」
大淀『あなた達に裁く権限はありませんよ?それではただの私的な暴行に過ぎません』
那珂「だけ、ど…」
大淀『なので、国に裁かせます』
那珂「え…?」
大淀『あなたが関与した情報は一切漏らしません、公には警察が艦娘を拉致した誘拐犯を制圧したと報道されます、何か不満は?』
那珂「無い、けど…どうして…?」
大淀『これが仕事ですから』
天龍「なんだよ、いいヤツじゃねえか」
春雨「はい!大淀さんは良い人ですよ!」
北上「……」
那珂「…いい、の?」
那珂がこっちに申し訳なさそうに聞いてくる
北上「なんであたしに聞くのさ」
那珂「…すっごく嫌そうだから…」
北上「…いいんじゃない、別に」
大淀『変わりませんね、まだ私が嫌いですか?』
北上「悪い?」
大淀『安心しました、私の知らない北上さんになってなくて』
北上「…なにそれ」
大淀『明日には皆さんを解放します、しかし、情報統制の都合上、今日はここに泊まってください
食事は好きなものを用意させます』
那珂「え!?いいの!?」
春雨「な、なんでもいいんですか!?」
天龍「どうした急に…」
北上「そういや、しばらくマトモな物食べさせてなかったっけ」
春雨「ひ、久しぶりに虫とザリガニ以外のものが食べられます…」
那珂「今日は生野菜じゃないんだね…良かった…!」
天龍「コイツらどういう生活してるんだよ…」
北上「え?いや…サバイバル…?」
大淀『報告は聞いていましたが……ええと…好きな物を、言いつけてください…本当に、ご遠慮なく…』
北上「…はあ…」
大淀『それと、天龍さん』
天龍「おお?」
大淀『山雲ちゃんを保護していただき、ありがとうございました…あとは私たちで引き取ります』
北上「はあ?…あたしは許さないよ」
大淀『それ以上人を増やしては、先輩といえど守りきれませんよ?』
北上「…だとしても、逃げたアンタにそんな権利なんか…」
天龍「待った!」
天龍が机を叩いて立ち上がる
天龍「オレは、まだ山雲と話してない、せめてみんなで話してから決めろ、オレも話す」
北上「なんでさ、山雲とは会ったばっかでしょ?」
天龍「…だとしてもだ、頼む」
北上「…別に良いけどさ」
天龍「無理強いはしないでやってくれ、山雲は…優しいしさ、多分、アンタらを優先するとは思う、でも…感情がぐちゃぐちゃになると思うし…」
大淀『分かりました、なら先に、お二人で話しても構いませんよ』
天龍「!!…すまねえ、助かる…!」
天龍(山雲が壊れるのだけは、なんとか避けてやんねえと…)
北上「でもさ」
天龍「あん?」
北上「朝霜はどうすんの?アンタの知り合い、なんでしょ?」
天龍「……」
朝霜「…おー…?…なんだ、ここ…」
天龍「起きたか」
朝霜「…天龍さん!?な、なんでここに居んだ!?あ、北上さん達に喧嘩ふっかけて無いよな!?」
天龍「…ははは…悪りぃ、もう遅えわ」
朝霜「ええぇ!?…どうなったんだ…?」
天龍「もう仲直りしたって、心配すんなよ」
朝霜「…ナラ、良いけどさ…」
天龍「……朝霜、お前、なんで1人なんだ」
朝霜「…い、や…」
天龍「青葉はどうした、何があった?」
朝霜「……言いたくない」
天龍「オレは、無理やり聞きに行くぞ…場合によっちゃ青葉をしばき倒す」
朝霜「や、やめろ!やめてくれよ…!もう迷惑かけたくないんだよ!!」
天龍「…それが理由か」
朝霜「あ……そうだよ、なんか悪いのかよ…!」
天龍「バカが…!お前、すぐに青葉のとこに戻れ!」
朝霜「なんでだよ!?」
天龍「何も言ってないんだろ!?…勝手に出てきたんだろ…!青葉がお前の事をどれだけ心配してると思う!」
朝霜「…でも…」
天龍「お前の優しさは、傷つける事しかしてねえぞ
自分が消えれば良くなるとでも思ったのか?…とんだ見当違いだな、ええ?」
朝霜「…なんでそこまでいうんだよ!アタイは!」
天龍「龍田が!…お前を生かしたんなら、オレにもお前を生かす責任がある、そして、それを…青葉を信じて託したんだ、なのに、お前の感情ひとつでひっくり返すなよ」
朝霜「…でも…あのままじゃ、青葉さんが…」
天龍「……オレも一緒に会いに行く、頭も下げて、生きていくのが難しいなら全力で手を貸す、だから、帰るぞ」
朝霜「……」
小さく朝霜が首を振る
天龍「2度と会えなくなるぞ、死んだのもわからず、2度とだ…会おうとした時にはもういねえ…」
朝霜「……それ、は…」
天龍「大丈夫だ、大丈夫だから……な…一緒にいくぞ」
朝霜「…ん…わかった…」
山雲「本当によかった〜、こんなに早くまた会えるなんて、思ってなかったから〜」
北上「こっちも、まさか生きてるなんて思ってなかったよ」
那珂(…感動の再会のはずなのに、さっぱりしてるなぁ…)
春雨「北上さん、何食べますか?」
那珂(こっちは出前のメニュー表見てるし…)
那珂「…まあ、元からネジ飛んでるとは思ってたし…開き直って、何か食べよっと…」
会議室のドアが荒々しく開く
天龍「おう!こっちは終わった!」
北上「うん?」
天龍「お前ら、次の目的地は?」
那珂「え?……いや、西に…」
天龍「だよな?よし!朝霜、決まりだぞ!」
朝霜「お、おお…」
北上「…なんの話?」
天龍「オレらもついて行く、良いだろ?」
那珂「え?……ええぇぇぇっ…?」
北上(お、ハンバーガーある…)
北上「あむ……んー……やっぱ味落ちた?」
春雨「こっちの唐揚げ弁当、唐揚げひとつ少なくなってました…」
山雲「北上さ〜ん、ポテトひとつくださいな〜」
朝霜「あ、アタイもポテト食べたい!」
…すぐ隣は
天龍「まだ納得できねえか?」
那珂「いや……うーん…6人旅で徒歩だよ?ドラクエじゃん…」
天龍「…いや、お前は何に納得してないんだ?」
那珂「……あー…えーと」
天龍「なあ、過去のわだかまりは…」
那珂「じゃなーくーてー!…はぁ……天龍ちゃん」
天龍「ちゃん!?オイ、ちゃんてなん…」
那珂「これ着て、歌って踊ってくれる?それが条件」
天龍「…なんだこれ、おいお前まさか……」
那珂「私達の、アイドルグループとしての最後の1人を、天龍ちゃんに任せるよ!」
天龍「……やっぱ、考えさせてくれ…」
那珂「艦娘に二言は無し!はい決まり!」
天龍「いや、これは…うげぇ…」