食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
お腹いっぱい、ちょっとおねむな北上様だよ〜
うーん…いつもこうだったら良いのにな…
北上「さて、展示見に行くよ」
阿武隈「え、結局観るんですか?」
北上「緊急時、ここに来れば武器が確保できる…ってのは知っておくべきじゃん?」
阿武隈「…そうですけど」
北上「さ、入ろう」
入場は無料だし、案内用のパネルはアナログだし
お陰でなんの躊躇いもなく入れる
阿武隈「ところで…北上さん」
北上「ん?」
阿武隈「大淀さんからもらったスマホ、使ってましたよね?」
北上「ああ、生体ユニットの話?それはメッキみたいなの貼って遮断する加工ができるんだよ、難しいけどさ、オプションで選べるの知らない?」
阿武隈「だから私もスマホ壊さなかったんだ…レンジとかも使えますよね?」
北上「多分それ、基地で加工がされてる備品だけ、もしくは接続できないような古いやつね、最新のやつは壊すよ」
阿武隈「もう、こっちが手袋で解決しちゃえば…」
北上「それを試すためにわざわざ会計に行ったんでしょーが
でも…さっきはバイクのそばだったからよかったけど、スーパーや電気屋は手袋外さないとね」
阿武隈「今みたいな冬場なら誤魔化しも効きそうですけど、夏場はダメそうですよね…」
北上「あ、夏は虫とか多いから大丈夫、食べるもの困らないよ」
阿武隈「虫は食べません!」
北上「まーまー……よし、ここだ」
阿武隈「…あ……」
軽巡洋艦や駆逐艦の艤装の展示
特に、主砲や雷装は大体互換があるせいで阿武隈も見覚えがあるものが多いらしい
阿武隈「コレさえあれば、深海棲艦なんかに…」
北上「阿武隈」
阿武隈「でも、だってそうじゃないですか…」
北上「確かにそうでも、1人や2人じゃ何にもならない、守るはずな人間に背中を撃たれて終わりだよ」
阿武隈「……そんなのおかしいですよ」
北上「今、人間、深海棲艦、艦娘、その3つの勢力は艦娘を封殺して落ち着いてる
その仮初の平和を壊したら、2つが敵になる、だから耐えようよ」
と言っても、気持ちは痛いほどによくわかるけど…
北上「さて、一応向こうに重巡とか、戦艦の分の展示もあるよ
空母系は…うちはあんまり運用してなかったから展示する余裕持ってなかったし、全部実際に使ってなくなっちゃったんだよね」
阿武隈「ウチは空母が主力でした」
北上「やっぱ基地によって違うねぇ……ん?」
…あそこの、重巡コーナーから出てきた2人組
コンビニの2人だ、でも、様子が変っていうか…
…あんな袋持ってなかった、つまり
阿武隈「北上さん?」
北上「ごめん、予定変更、ついてきてよ」
阿武隈「は、はい…?」
2人組に後ろから近づく
北上「そこのオネーサン、ちょっといい?」
明石「っ…あ、さっきの」
夕張「ごめんだけど、今は急いでて…」
北上「正面はカメラがついてるよ、監視カメラのないルート案内してあげる」
明石「へ…?」
夕張「……教えて」
北上「こっちだよ」
ゾロゾロと引き連れ、裏口から外に出る
人気のない、薄暗い道
確かにここなら人に見られず外に出られる
でも、ここに連れてきた目的は…
夕張「…ほんとに出れた…」
明石「ありが…」
2人組の後ろに回り込み、緑髪の方を拘束して後頭部に銃口を押し付ける
阿武隈「北上さん!?」
夕張「っ…!な、は、離して!」
明石「な、なんで…」
北上「…艤装捨てなよ、そうすれば見逃してあげるからさ、元に戻すのもあたし達がやってあげるし、バレる前に戻したいんだよね」
夕張「何…?アンタ、何者…」
北上「北上、球磨型重雷装巡洋艦、北上改二」
明石「か、改二…!?つまり、艦娘…!」
夕張「…艦娘なら、なんでこんな事…」
北上「うちのナワバリで問題起こされると生活が苦しくなるって言ってんの…!わかんないかな、こっちは1日食い繋ぐのも大変なんだから…!」
阿武隈も必死に首を縦に振っている
そう、やはりここで締め付けがキツくなるような事案は起こされては困る…
明石「な、ナワバリ…?」
夕張「ちょっと待って?この辺りで暮らしてるって…どこで?どうやって…」
北上「答える気はないよ」
夕張「……わかった、わかったから勘弁して、コレも元に戻すから…明石、捨てて」
明石「…うん」
艤装が地面に置かれる
機関部、主砲、雷装
よくコレを隠して持っていけると思ったな…
北上「そっちも切羽詰まってるのはわかるけど、なんで艤装なんか」
明石「…売れるから…」
北上「……はい?」
夕張「知らないと思うけど、国外なら艦娘への差別は緩やかな場所もたくさんある
現金主義の国とかに行けば…バレる心配すらほぼないしね」
北上(…外国か…あんま知らなかったけど、そういう逃げ道もあるんだな…)
北上「だとしても、あたし的にはナシだけど…とりあえず、こっち向かずに消えてよ」
夕張「……ちょっとくらい優しくしてくれても良いんじゃない?」
北上「十分優しい対応してるよ、これ以上ごねるなら…撃たなきゃいけないけど」
夕張「本当にここで撃てる?騒ぎを起こしたくない艦娘が、こんな街のそばで」
北上「阿武隈ぁ…艤装回収して」
阿武隈「は、はい」
夕張「……」
阿武隈に注意が向いた瞬間、首元に膝蹴りを入れる
夕張「か……」
明石「夕張!」
北上「騒がないでよ、こっちのお姉さん…夕張って言うんだ?物騒なこと考えてたみたいだからさ」
夕張「くっ…!」
北上「阿武隈、片付けに行くよ」
阿武隈「し、失礼します…!」
北上「…ったく、面倒に巻き込まれちゃったね」
阿武隈「そう、ですね…」
北上「阿武隈、あたしらに他人に同情する余裕はないんだよ」
阿武隈「…はい」
北上「生きていくために守らなきゃいけないルールがある
生きてる為なら嫌でもやらなきゃいけないことがある、それが例え、虫を食べることだとしても」
阿武隈「それは嫌です…」
北上「チッ…」
阿武隈「……北上さん、そう言えば釣り糸とか、どうですか?」
北上「ああ、ナイロンの切れにくいやつね、買えたら買いたいなぁ…
仕掛けとかは縫い針曲げて作ったやつがまだ残ってるはずだし…小物ならいけるかもよ」
阿武隈「だったら毎日ご馳走ですね!」
北上「だと良いんだけどねぇ」
阿武隈「どうしましょう、早く買って帰りたくなってきました!」
北上「うん、早いとこ終わらせちゃお…う……ん?」
…この、匂いは…
北上「……」
阿武隈「北上さん?」
北上「ごめん阿武隈、ホントにごめん…今日あたしダメだ、我慢できない」
阿武隈「へ?え、何を…?」
北上「わからない?この…クリームとあんこの匂い…」
阿武隈「……あ!あれ!たい焼き!」
北上「実は大好きなんだよね…あ!おばちゃん!クリームとあんこ5個ずつ頂戴!」
阿武隈(うわぁ…いつも止める立場なのに…光の速さで買いに行っちゃった)
北上「やー、手渡し式の会計は楽で良いね、何も心配しなくて良いし!」
阿武隈(今まで見たことないくらい上機嫌…)
北上「ほら、早く食べようよ」
袋から取り出して、尻尾に齧り付く
中から熱々のクリームが溢れ出してきて、口の中一杯に甘さが…
北上「うまー…!!」
阿武隈(めっちゃ手振ってる…)
阿武隈「…むぐ……あ、美味しい!」
北上「でしょ!…あー…生地がすでにしっとり甘いんだよね、しかもカスタードクリーム…天国にいるみたい…」
阿武隈「これ、この前カロリーメイト食べてなかったらほんとに味覚がおかしくなるくらい甘いですね…幸せ…」
北上「尻尾もクリームたっぷりなのがいいよね」
阿武隈「ですね!」
北上「…ん?阿武隈もカスタード!?…あんこ一口もらおうと思ったのに…」
阿武隈「渡したのは北上さんじゃないですか!」
北上「えー?そうだったっけ…へへ…」
阿武隈(…砂糖で脳みそ溶けてる?)