食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
北上様だよ、あんまり喋る余裕はないから、さっさと行こうか
北上「アンタでしょ、覚えてるよ、匂いで覚えてる…」
よーく覚えている…ちゃんと
北上「……山形でさ、あたし襲った、クソ深海棲艦…」
両手の主砲を向ける
ヲ級「……」
北上「…次は向かい合ってやりあえる訳だ…一回勝った相手だからって調子乗ってる?…やめといたほうがいいと思うなぁ、そういうの」
…忘れもしない、河原で姿を隠したままあたしを襲った深海棲艦、こいつのせいで川を流れて降ることになった
シチュエーションは似てる、山林だ
前と違って今度は逃げ込む川もない
…やる、やり切る
ヲ級「……」
北上「っ!」
艦載機が来る
那珂「…死体を、動かしてるの…!?」
天龍「いや、よく見ろ、腐り果ててた死体が血色取り戻してやがる…」
扶桑「……」
戦艦棲姫「ククッ…アハハハッ!コノチカラヲ人間ニ見セルノハ初メテネ…!」
那珂「最低だよ!こんなの!!」
戦艦棲姫「ソウ?最高デショ?ダッテ…」
天龍「山城…?」
なんで、戦艦棲姫の隣に…
那珂「どうして…!」
山城「姉様が…
天龍「目ェ覚ませ!そんなのまやかしだ!」
山城「違う!…もう少ししたら、姉様は意識も取り戻すって!なら!」
戦艦棲姫「コイツラヲ殺シナサイ、ジャナキャ、ワカルワヨネ?」
那珂「嘘でしょ…!?」
山城さんが刀を抜く
山城「ここじゃ、撃ったら崩落しちゃうわ…ああ、
天龍「お前…!」
刀を振り上げ、山城さんが斬りかかる
山城「はぁぁぁっ!」
霧島「やめて!」
山城さんを霧島さんが突き飛ばす
山城「霧島!邪魔しないで!」
霧島「ダメ!絶対にそれだけは!ダメ!」
山城「…邪魔するなぁぁっ!!」
戦艦棲姫「チッ…使エナイ…」
殴り合いを始めた2人を見た戦艦棲姫
天龍ちゃんと視線を送り合い、頷く
那珂「はあっ!」
操られた死体の腹部に全力の拳を打ち込む
天龍「オラァッ!!」
戦艦棲姫「クッ!?…殺ス!!」
戦艦棲姫の
天龍「吠えてねぇでかかってこいよ!」
那珂「そっちは任せたよ!」
…戦艦級の人の死体…どうやって無力化すれば…
再生できないように吹き飛ばすにしても、外に出した方が良い…誘いに乗るかは微妙だけど
那珂(…えっ)
さっきまで無かったのに、背中から艤装…しかも、主砲…
那珂「やっ…ば…!」
無意識に体が前へと動く
逃げるか進むかの選択のはずが、逃げる道なんてなかったみたいに
那珂(撃たせたら、終わる…!)
タタンッと軽く跳び、宙返りして天井を蹴る
勢いをつけ、最大限殺さぬまま、艤装の根本に蹴りを放つ
那珂「っ!硬っ…けど!」
金属の捻じ切れる音が倉庫に反響する
天龍「ハハッ…!アイツマジかよ!!」
戦艦棲姫「化ケ物メ…!」
扶桑さんの艤装が床に落ちる
背中の肉ごと、剥がれ落ちたみたいに
那珂「…“生えてる”…!?…そっか、わかった…深海棲艦だこれ…」
深海棲艦は艤装と体が一体化している
…それと今の扶桑さんは良く似ている…背中から直接艤装が生えてるなんて…!
那珂「死体を、深海棲艦に…!」
天龍「ふざけた事しやがって!このっ!」
那珂(…あ、れ…扶桑さんは、どこ)
天龍ちゃんが振り下ろした刀が、扶桑さんの肉を切り裂く
天龍「っ!!…な…?!抜けな…!」
那珂「か、庇った!?」
戦艦棲姫「優秀ナ、盾…ネ!」
戦艦棲姫が拳を振りかぶり、天龍ちゃんを殴る
天龍「か……はッ…!?」
一発であんな、風船みたいに吹き飛ばされて…
戦艦棲姫「…アラ、サッキマデノ勢イガ消エタワネ?」
那珂「天龍ちゃん!!」
朝霜「テメェ!よくも天龍さんを!」
那珂「朝霜ちゃん!?出てきちゃダメ!」
戦艦棲姫「…マダ他ニ居タノ?…フフッ…!」
那珂「っ!やらせないよ…!」
扶桑さんが突き刺さった刀を抜き取り、こちらに向ける
戦艦棲姫「動カナイ方ガ身ノ為ヨ…コッチニハマダ手駒ガ……アラ、マダ終ワッテナカッタノネ…?」
山城「あ…ま、待っ…」
取っ組み合いをしていた霧島さんが蹴り飛ばされる
霧島「がほっ!…うっ…ぐぅ…!」
那珂「ボールみたいに飛んでった……馬鹿力すぎでしょ…!?」
戦艦棲姫「アナタノ姉ガ、殺サレカケテルワヨ?
…邪魔ナノハ始末シテアゲルカラ、早クヤリナサイ」
山城「…っ…わかって…わかってるわよ!!」
戦艦棲姫「ソッチノ、小物デイイワ」
朝霜ちゃんが指さされる
朝霜「っ!?」
那珂「朝霜ちゃん!!」
山城(…こんな、子供を…ああ、なんて不幸…!
最悪の不幸よ…でも、姉様を助ける為には、償う為には、これしかない…)
山城「っ!?」
山城さんが飛んできたクナイを刀で弾き落とす
春雨「朝霜ちゃん!こっちに!」
山雲「それっ!えいっ!」
那珂(2人とも、手裏剣とかクナイとか投げてるけど…全然当たってない…)
山城「…邪魔しないで!!」
朝霜「来たぞ!逃げろ!外だ!」
3人が階段を駆け上がって外に逃げる
そして、山城さんもそれを追いかけて…
那珂(…こうなったら、私達も外に…でも…)
天龍「…っ……ぐ…!」
霧島「う…」
那珂(この2人を残して外に出るのは、マズイ…!
やれる手段を、出来る限りの手段を…!)
戦艦棲姫「出ルツモリ?外モ、地獄ヨ」
那珂「…なんで?」
戦艦棲姫「”覚醒種”ノ遺骸ヲ持ッテキタノヨ…アノ憎キ軽巡ヲ殺ス為ニネ…デモ、動揺ヲ誘ウ作戦ハダメミタイダワ
マア、モウ死ンデル頃ダケド…カツテノ仲間ニ殺サレルンダカラ満足ヨ、キット」
那珂「…北上さんの、かつての仲間…?」
戦艦棲姫「アノ、クソ軽巡ノ過去ノオ友達ヨ」
那珂「…ふーん……すー………ふぅっ…」
肺の息を全て吐き出す
血の混じった匂いが、肺を満たす
戦艦棲姫(…雰囲気ガ…)
那珂「そろそろ黙ったら、三流の悪役さん」
戦艦棲姫「…何?」
那珂「考え方、変えたよ…うん……ちょっと可愛くないことする」
北上さんの事で一瞬怒りの感情が湧いたけど、それは今は“置いておく”
…さっさとこいつらを片付けないと…あの3人に殺しをさせることになりかねない、そっちの方が重要だ
そんなの、絶対にダメ、そんなことさせたりしない…
足元に散らばった武器を一瞬見る
那珂「…天龍ちゃん、霧島さん、動けるようになったらすぐに逃げてね、どれだけ待てるかわからないし……死んでも知らないよ」
天龍「ぁ…?」
那珂「……」
足元のクナイの先端を踏みつけ、その反動で真上に飛ばす
そして掴み取ったクナイを並べられた艤装の一つに投げつける
戦艦棲姫「…何ヲ…」
天龍「…なん……まさか…お前…!?」
那珂「那珂ちゃんのソロライブ…ヒートアップしちゃうからさ、火傷しないでね?」
扶桑「……」
斬りかかってくる扶桑さんの刀を横から蹴りで弾く
那珂「…素人に毛が生えたような剣撃で私を倒せると思わないでよ…!私が今まで誰と戦ってきたと思ってるの?」
横薙ぎの斬撃を高く宙返りしてかわす
那珂「見せるの2回目だけど、ゾンビなら関係ないよね」
天井を蹴って弾丸のような跳び膝蹴りを扶桑の顔面に打ち込む
そして扶桑さん背中が床についた瞬間、顔面を踏み潰すように何度も蹴る
天龍(つ、強え…)
那珂「…頭潰せば、動かなくなるみたいだね?」
戦艦棲姫「…」
那珂(…靴越しに蹴ってるのに、今ので
那珂「…えっ」
足首を掴まれて、投げ飛ばされる
那珂「ごはっ…!……っ…!」
頭を潰したのに、ぐちゃぐちゃに潰れた顔面で…確かに動いてる
立ち上がって、こちらに近づいてくる…
那珂「…酷いなぁ…こっちが折角…」
立ち上がり、構え直す
那珂「すぐに終わらせてあげようとしてるのに!」
振り下ろされた刀を交わし、首元へ拳を振るう
…扶桑さんの首が床に落ちる
戦艦棲姫「…首ガ、落チタ…?」
那珂「……カルシウム足りてないね、こんな
…立ち上がる時に拾って忍ばせておいた
ここには大量の暗器がある…優位はこちら…
戦艦棲姫「…ソンナコトデ…!」
そして両肩に短刀を突き刺す
武器を手放し、フリーになった手で…全力の拳を心臓目掛けて叩き込む
那珂「……弱いかな」
扶桑さんが膝から崩れ落ち、刀を取り落とす
那珂(
刀を拾い上げる
那珂「…天龍ちゃん、この刀の刀身、消せるんだから、実体化させたまま抜く必要なかったのに…って、もう逃げた?」
…霧島さんも天龍さんも、姿はもう無い…
那珂「なら、思う存分やれるね」
戦艦棲姫「……チッ…モウイイワ、ソノ形ニ
那珂「……何を…ッ!?」
扶桑さんの体が、灰色に染まっていく…
戦艦棲姫「…特別ヨ…」
戦艦棲姫が自身の人差し指と中指を
ガリガリと、異音が響く
那珂「自分の指を、噛み千切った…!?」
戦艦棲姫「…コレヲ…コウスルノヨ」
扶桑さんの首がいつの間にか戦艦棲姫の手元にあった
そして、潰れてわからないが、口らしき場所に指が…吸い込まれて…
那珂「…な、なに…?何が起きて…」
…いや、想像できた
でも…それが違うと信じたい
扶桑さんの身体が戦艦棲姫の方に進むのを、止められない…
戦艦棲姫「サア…挨拶シナサイ…私ノカワイイカワイイ
…目の無い、巨大な艤装と融合した灰色の怪物…
那珂「…ヤバすぎ…!」
戦艦棲姫「サア、コッチモ本気ヨ?」
那珂「はぁ…汗やばいなぁ……良いね、いい具合に、熱くなってきたよ!!」
北上「…あー……キッッツ…ふざけんな、マジで…」
…爆撃で吹っ飛んだ木片が右腕に直撃して、その上炎と煙で視界も悪い
…向こうは上空から、多数の
せっかく正面に立ったのに、逃げるばかりを強いられて…その上
北上(鼻も効かなけりゃ、音も聞こえない)
残ってるのは僅かな視界と思考だけ
北上「……」
空を見上げる
木の隙間から一瞬見えた、あれは戦闘機だ
北上(さっきまで居なかった、ってことは…あれは新しく出てきたか、じゃあ…出てきた方角、高さ、距離はたぶんこのくらいで…移動してるとしたら?
…まあ、取り敢えず)
木陰から飛び出し、予想した方向に狙いをつけずに撃つ、撃つ、撃ちまくる
北上「……どう?…痛かった?」
焼け落ちていく草木の隙間から、頭から血を流し、こちらを睨む顔が遠くに見えた
…それが見たかった、苦痛で顔を歪ませる姿が
北上「!」
艦載機が機銃の弾をばら撒きながらこちらへと迫ってくる
北上(…待って!おかしい!)
…普通、ある程度の距離まで近づいたら一度離脱して、再度攻撃を仕掛けるはずなのに…
どんどん、近づいてきて…
北上「ぅぐ…!?」
地面に突っ込み、炎上、爆発する
…あと少し近ければ、大きなダメージになってた…
北上「コイツ……っ!?」
…マズイ、空にいる艦載機全部、特攻させるつもりだ
どれくらいいる?
わからないけど…
北上(殺される…!)
…こうなった場合、あたしが取れる選択肢は2つ
艦載機をどうにかするか、本体をどうにかするか
でも…本体はすでに居ない…どこか見えないところに隠れて操作に専念してる
となると残りの選択肢は艦載機をどうにかする事
北上(こうなったら…!)
艦載機の特攻をかわしながら、進む
とにかく走って、狙いを正確にさせない
北上「っ…!」
至近距離に突っ込んでこようが、木の影から飛び出して来ようが、無視だ
唯一対応するのは…
北上(直撃ルート!)
右手の主砲を投げつけ、艦載機にぶつける
爆炎が辺りを覆う
北上「こんなんじゃ埒があかない…!」
相手は時間を稼いで隠れようとしてる、これからは徹底して位置を隠してくるだろう
さっきみたいな攻撃も、もう通じないだろうし
北上「……ちぇっ…」
…さっきの爆発で大まかな位置はバレてる
でも、正確な位置じゃ無い
視認はされてないはずだ、特攻が止んだから
それなら…コレが使える
まだ上着のポッケに石は入ってる、上着を脱いで、クルクルと回して勢いをつけて…
投げる
茂みを突っ切って上着が音を立てる…そして、そこに爆撃が集中する
北上「…もらった…!」
完全に誤認してる
見つからずに、居るであろう地点を探し、迫る
北上(鼻さえ使えれば…!)
見つかるかどうか、これだけは完全な
でも、この賭けにさえ勝てれば…
北上「居た…!」
ヲ級「…!」
遮るものは何も無い
あとはコイツを殺すだけ…
全力で踏み込み、飛びかかり、目の前で左手の主砲を向ける
ヲ級「!」
主砲を掴まれ、狙いをズラされた…
防がれた…いや、コレが狙い
北上「そりゃあ、右手は素手だもんね!そっち警戒しなきゃだよね!!」
左手に突き刺さっていた木片を右手で抜き、ヲ級の首に刺す
ヲ級「ッ!」
北上「…浅いか!!」
首から血を垂れ流してるけど…少ししか刺さってない
北上(今!殺しきる!!)
北上「っ!?」
ヲ級「!!」
地面が揺れて…
北上「地し…うわっ!?」
…耳がキーンってする…全身痛い…
辺り一面がひっくり返って燃えてる…
爆発した…?何で…
北上「はぁ…はあっ……ごほっ…ぁぐ…う…」
瓦礫が音を立てて持ち上がる
北上(まだ、生きて…!?)
那珂「ぷはぁ!…コレでいいでしょ」
北上「……は…?な、那珂…?!」
那珂「…あー、ごめん、巻き込んじゃった?……こっちもなるかやられるかだったからさ、ついつい余裕ない行動に出ちゃったよ…
ふぅ…死んだかな?」
北上「……何、したの…」
那珂「地下の艤装を戦闘中にいくつか壊したんだよ、そしたらオイルとか、とにかく可燃性の油脂が流れるでしょ?
地下で戦闘してたらいつの間にか室温も上がって、発火するよう温度になって、火花によって引火しちゃった」
北上「め、滅茶苦茶だ…」
那珂(北上さんにだけは言われたく無いなぁ…)
那珂「っ!」
北上「…那珂、残念だけど…」
瓦礫の中から灰色の怪物が起き上がる
戦艦棲姫「…コノ…クソ艦娘ガ…!!!」
北上「まだ終わってないみたいだよ」
那珂「そっちもね…」
ヲ級「……」
北上「…目から、青い火…?」
戦艦棲姫「ホウ…!オ前モ使ッテ…ッ…?」
ヲ級が戦艦棲姫を睨みつける
ヲ級「……血…モット…」
戦艦棲姫(何故私ノ能力ガ効カナイ!何故ダ……ソノ喉ニ刺サッタ木ニツイテルノハ人間ノ血…?……マサカ、遺骸ノクセニ再生シテイルトイウノカ!)
北上「…第二ラウンドってワケね」
那珂「身体、大丈夫そう?」
北上「そっちこそ、脚悪そうだけど?」
那珂「…仕方ない、協力してやろう!」
北上「どうせワンマンプレーになるっての…!」