食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
んー…ちょっと疲れてる北上様だよ
久々に街に来たせいで那珂が連日ライブやりまくってるんだ
天龍と一緒に踊りまくってもー大変だよ…
え?左手?実は接着剤買ってもらってさ、それマイクにつけて無理やり持ってるんだ〜、お陰で違和感なくやれてると思うよ
北上「…ついた、新大阪駅」
那珂「遠かったね!関西の大都会!大阪だよ!」
天龍「あー…まあ、確かにここも大阪っちゃ大阪なんだけどよ」
春雨「何か違うんですか?」
天龍「新大阪は確かに賑わってるけど、ホントに賑わってるのは梅田の方だ、もうしばらく歩いたらつくし、そこまで行ってから喜ぼうぜ?」
北上「えー、もういいじゃん…」
天龍「それに、朝霜の家はまだまだ先なんだ」
那珂(あ、旅の目的その2忘れてた…)
北上「あたし疲れた…せっかく関西に来たならたこ焼き食べたいんだけど」
天龍「いや、もう残金僅かなんだぞ…」
春雨「散々奢ってもらいましたからね…」
山雲「本当にごちそうさまでした〜」
那珂「お陰で虫を食べずに済んでます…!」
天龍「いや、ガチな感謝されるとなんか…」
北上「ちょっと待ってよ、ザリガニもバッタも美味しいんだよ?それに蝶とか蛾のサナギだって、美味しい種類もいるし、成虫でも今は無理だけど素揚げにすれば…」
春雨「あの、人が見てますので…はい」
朝霜「虫なんて普通食うもんじゃねぇのに、ここまで熱くなるなんて逆にすげぇよ…」
那珂「もう、こんな人通り多いところでそんな話するくらいなら…さっき駅で配ってたマスクをこうして…バツ印を書いて…はい、これつけて」
北上「なにこれ」
那珂「おしゃべり禁止マスク!」
天龍「ははは、こりゃあ
春雨「今回は自業自得ということで…」
北上「…みんなあたしに厳しく無い?まあ、良いんだけどさぁ…」
マスクをつける
…匂いが弱い気もするし、息もしづらくて、やっぱりこれは苦手だ
天龍「クククッ…それだけつけてるとシュールだな…!」
那珂「あ、じゃあね、このパーカーを着て、フードを…ほら、良い感じ!」
山雲(なんというか…一昔前の不良的なファッションに…)
北上(みんなあたしで遊んでない?)
天龍「よし、んじゃ行こうぜ?
多分数時間歩けば朝霜の居た団地まで行ける」
朝霜「ぁ……ウン…」
北上(ま、乗り気じゃないだろうね、そりゃあ)
青葉「…ふぅ」
倒れているヤクザを蹴り飛ばし、路地の方へとゆっくり歩く
青葉(…つけてくる人、居るなぁ…流石にやりすぎたかな、家まで来ないだけ…いいのかな)
…路地で待ち伏せて、さらに2人仕留めた
日頃の訓練の成果だろうか
青葉「……あ…」
…この人達、拳銃を持ってる
使う暇が無かっただけか、脅しのためか
何にせよ、そこまで来たのだったら…もう、この生活も長くない
青葉(……潮時、か)
相手が本気になったのなら、こちらも本気でぶつからなきゃいけない
青葉「……っ!」
銃声が響いて、すぐそばの壁に穴が空く
青葉(警察沙汰もお構い無しになってきた…か!)
流石に銃の相手はしたくない
大人しくその場から逃げ去ることに成功した
電車に乗ってわざわざ遠くに、ずっと遠くに行った
だから、私の家は…大丈夫な筈だ…帰るのはやめたほうがいいだろうけど
青葉「……どうしようかな、これから…」
バイトも辞めよう
…きっと、迷惑をかけてしまうから
青葉(…やっぱり、帰ろう…あそこだけが、今の私の居場所だ)
他に行くあてなんて無いんだから
青葉(…次で乗り換えて、3時間くらいかな…だいぶん離れちゃった…はぁ……)
…正直帰るのが怖い
もしかしたら、もしかしたら、部屋の中で待ち伏せされてるのかもしれない
もしかしたら、みんなに全て知れ渡って、いつ背中を刺されるかわからないのかもしれない
青葉「……青葉、ごめんね、ほんとはさ…もっとサッサと終わらせて、遠くに行ければいいなぁって思ってたんだ」
ギュッと、槍を収納している筒を握る
…不安が消えるわけじゃ無いけど、戦う覚悟だけは、しなくちゃ…
青葉「…あれ」
部屋の前まで来たけど…おかしい
…何かおかしい、ドアノブに手をかける
青葉「…鍵が、開いてる…」
…つまりは、そう言うこと、私の部屋に、敵が…
槍を展開して、静かに扉を開く
…居る、1人だけ、背丈は私よりも低い、でもフードを被ってこちらに背を向けてるから、どんな人なのかはわからない
どうやら部屋を物色してる…まだ、何かを荒らされた形跡はないけど…多分、クローゼットを開けようとしてる
槍を半分の長さで持ち、振り上げる
青葉(…この距離なら、届く!!)
振り下ろした槍を、両腕を交差させることで受け止められる
青葉「っ!!このっ!」
槍を引いて、素早く突く…それも当たらない
真正面からの実戦は初めてだ、でも…
青葉「っ!?」
こちらが一歩引いたはずなのに、もう目の前に居る…顔面に平手打ちをくらい、視界が揺れる
青葉「っ…くッ…!」
屋内ではリーチを活かした戦いはできない
だからコンパクトに持って、手数で勝負して…
青葉「やッ!!はぁッ!」
なのに、なんで…この人は、刃を恐れずに…!
槍の柄を掴まれて、胸に張り手を受ける
青葉「っうぐ…!…っ!」
顔面を蹴り飛ばされ、床を転がる
…ここまで圧倒されるのか
1対1で?…兵士たちに囲まれた訓練では、もう少し組み立てて戦えてたのに
槍の先端が掠ることもなければ、生き残れるビジョンすらもない…
青葉(死ねない死ねない死ねない!!)
立ち上がり、台所から包丁を取り出して向ける
…何故か、槍を捨ててゆっくりとこちらに迫ってくる…
どうしよう、イチかバチかで玄関から飛び出す?
それとも…最期まで…
青葉(…死ねない!)
包丁を投げつけて、玄関の方に走った…
青葉「ぇ…?」
なのに…包丁は確かに当たった、顔に当たってた
でも、それをモノともせずに…取り押さえられた…
両手を背中で固定され、肩甲骨の辺りを膝で踏まれる…
青葉「うあっ!?」
…終わった、動けない…殺される…
目の前に、ゴム紐の切れたマスクが落ちる
北上「…手荒なマネして悪いけど、あたしこれ以上アンタを殴るつもりないから」
青葉「…へ…?」
北上「確かに勝手に入らせてもらったのは悪いと思うけど、いきなり殺しにかかるのはどうかと思うよ?」
青葉「……あ、あの…え?え?」
急に身体が自由になる
北上「怯えないでいいよ、あたしは…えっと、アンタの知り合いにここに入れられただけで…あー、ちなみに他のメンツは買い物に…」
立ち上がり、向き直る…
青葉(…あれ…この人…そうだ、よく見たら顔も、声も…同じ…)
北上「そういうわけで、別に不審者じゃ…」
青葉「あ、あの!」
北上「え?」
青葉「私!あなたのことを知ってます!アイドルとかじゃなくて…!」
北上「え?あ、なに?」
青葉「…お願いがあるんです、私と…」
天龍「おーい、北上ー」
青葉「っ!?!?」
北上「ん?天龍」
天龍「おー、帰ってきてんじゃねえか、で?今のお前は、どっちだ?」
青葉(…なんでこうもタイミングが)
青葉「……えっと…」
困った様に、笑って見せる
天龍「…青葉か?」
青葉「は、はい…」
天龍「……」
天龍が無言で詰め寄ってきて、胸ぐらを掴まれる
天龍「なんで朝霜のコト放っておいた…お前、オレとの約束忘れた訳じゃねえよな」
青葉「い、いや…その…実は、最近の記憶が…無くて…」
天龍「下手な誤魔化しは通じねえぞ」
青葉「ほ、本当です!その…いつの間にか、大井さんと仕事することになってたりで…何が何だか…朝霜ちゃん…携帯無いから…連絡もつきませんでしたし…」
天龍「……チッ…」
北上「…天龍、どうすんの?」
天龍「青葉が放逐する気がなかったんなら…殴る理由もねぇ…ったく…朝霜が馬鹿だったってだけだろ」
青葉(…危なかった…)
天龍「…しっかし、ここじゃ6人はちっと狭いな?いや、7人か?」
青葉「…へ?」
天龍「悪いけど、ここにあと4人くる、今日は泊めてくれ」
青葉「……えぇぇ…っ…」
朝霜「…あー…その…」
青葉「…えっと…」
朝霜「……勝手に出ていって、ごめんなさい…」
青葉「あ、うん…いいよ…」
天龍「よし、コレで一件落着か…」
那珂「長旅の目的が一つ終わったね…良かった良かった」
北上(…所詮他人か、こういう時はもっとちゃんと叱るべきなんじゃないの?)
青葉「あ、その…布団とかは足りませんけど、泊まっていただく分には全然!大丈夫なので…
あ、食事用意しますから!」
朝霜「え、いや…青葉さんじゃ…」
那珂「やった!今日はちゃんとしたご飯2回目だ!」
春雨「お手伝いしましょうか?」
青葉「大丈夫です、こう見えて得意なので!」
朝霜(え?)
テキパキと材料を並べ、鍋に湯を沸かす
青葉(ううん…なんていうか、予想外の展開だけど、コレはコレで…安心できるかも)
鍋に乾燥パスタを入れて、フライパンに油を垂らし、ハムと余っていたニンジン、玉ねぎを細かく切った物を炒める
朝霜(……)
青葉「…ええと、味付けは…」
塩コショウ、ケチャップで具材を炒めて、茹で上がった麺を加えて、さらにケチャップと塩を足して…
青葉「よし!できました、どうぞ!」
山雲「わあ、ナポリタンですね〜」
北上「いただきます…あぐ…ん」
那珂「美味しい!」
天龍「んー、悪いな、急に」
青葉「い、いえいえ…朝霜ちゃん、どう?」
朝霜「う、ウン…ウマい…です…」
春雨(…?)
北上「ところで、さっきの話、なんだったの?」
青葉「え?」
天龍「さっきの?」
北上「天龍入ってきて、遮られた奴」
青葉「あ!あー…あの、えっと……そう!私…あなたの言葉に救われて…!」
北上「どういう意味?」
青葉「艦娘だって人間だって、その…一時期ニュースでも取り上げられたことがあって…!」
北上「……なんの話?」
春雨「…前に夕張さんも言ってましたよ?」
山雲「バスの中で〜…」
北上「…そういえばそんなこともあった様な気がする」
那珂「カッコいいこと言ってるのに…」
北上「だって当たり前でしょ、あたしらも人間なんだよ?深い意味なんてないよ」
青葉「それでも、その言葉は私を…助けてくれました」
天龍「へえ」
朝霜「……」
北上「ま、なんでもいいけどさ」
春雨「すぅ…くぅ…」
那珂「むにゃ…」
北上(みんな、よくあっさり眠れるなぁ…)
青葉「……すぅ…」
北上(家主がアレじゃ、気にもならないか…でも)
朝霜「……」
朝霜は、寝てない
天龍と山雲に挟まれて寝てるけど、朝霜だけは、ずっと起きてる…
北上(あたしも眠れないけど…)
クローゼットをチラリと見る
北上(……なんで、あそこから…)
…金属が擦れる音がする
北上(え?)
ドアが、小さく音を立てて開く
そして、目出し帽を被った男が…
北上(あー、コレは…アレだ)
寝たフリをやめて、立ち上がる
ヤクザA「お、おい、多いぞ…しかも起きて…」
ヤクザB「か、構うな!」
北上「…はあ…」
あたしら、運が悪いとかそのレベルじゃない