食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話   作:名無し

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艦娘が幸せになるために戦う話
開幕


青葉「…っ……つぅ…」

 

天龍「起きたか」

 

那珂「よかった…生きてる…」

 

青葉「……ここは…?」

 

鉄骨だらけの建物…?

 

春雨「近くに工事現場があったので…とりあえず避難させてもらいました……人も居ないみたいでしたし」

 

青葉「……4人だけ…?ほ、他の人は!?」

 

那珂「朝霜ちゃんと、山雲ちゃんはわからない…でも、北上さんは…」

 

みんなが顔を伏せる

 

青葉「え……嘘…」

 

天龍「手も足も食われて無くなってたらしい、その上腹もだ…助かりようもねえだろうな」

 

那珂「洋上ならね…もし、病院とかで手厚い治療を受けられるなら…可能性は僅かにならあるのかも」

 

春雨「……」

 

春雨ちゃんが目を閉じて静かに手を合わせる

 

那珂「…確かに、ここまできたら神様に祈るしかないね、ホントに」

 

天龍(…祈る相手が仏になってなきゃいいけどな…)

 

那珂「……はあ…これからどうしよっかなぁ…結局全部北上さんが決めてたんだもん、どうすればいいか…わかんないや」

 

青葉「なら、私…行きたい場所があるんです、着いてきてくれませんか」

 

天龍「どこだよ」

 

青葉「……」

 

春雨「青葉さん…?」

 

青葉「大湊です」

 

 

 

 

 

大淀「…っ……」

 

親指の爪を何度も噛み、踵で地面を延々と叩き、苛立ちを隠そうともしない

 

夕張「ねえ、落ち着いてよ」

 

大淀「連絡が取れなくなりました」

 

夕張「え?」

 

大淀「…大井さんを引き渡した相手と連絡が取れなくなりました…」

 

夕張「…大丈夫なのそれ、深海棲艦に攫われたとか」

 

大淀「受け渡しの確認はとっているのでそれはありません、が…そもそもの取引相手……可能性は、大いにあります…いや、おそらく間違いないでしょうね…

私は…」

 

夕張「どう言う意図でそうなったのよ」

 

大淀「……大井さんは、“既に死んだ人”なんですよ」

 

夕張「…死んだ?」

 

大淀「彼女は、5年…いや、6年ほど前に亡くなっています

そしてその身体に生体ユニットを注入され、無理矢理蘇生された存在です…本当に今も生きていると言えるのかはわかりません」

 

夕張「…北上と同じ、生死の境を彷徨った人間ってことね」

 

大淀「ええ…ですが、一度完全に死んだ身です」

 

夕張「……待って…?……6年前?」

 

大淀「はい」

 

夕張「…大井って人は、北上と同じ時期に、事件に遭遇したの?」

 

大淀「同じ場所に居たはずですよ」

 

夕張「……じゃあ、やっぱりそうなのね」

 

大淀「はい、だから私は彼女に固執しました、身勝手にも…唯一無二の贖罪(しょくざい)の手段として」

 

夕張「大井が、北上の姉……だとしたら、引き渡して何をしようと…」

 

大淀「…元々の話を持ちかけて来たのは、とある大学附属の研究機関でした…深海棲艦のサンプルから人間の体を再生する細胞を作る研究をしている、と

私達は常に兵力を失う側です、艦娘ではない人間の兵士も修復材で再生できるならと常に思っていました」

 

夕張「眉唾物でも、手を出したくなったと」

 

大淀「……同時期に、大井さんの存在を知り、調べ始めました…経歴や出身、入隊理由が北上さんと被ったのを見た時は…喜びに打ち震えました」

 

夕張「ならどうしてこんな…」

 

大淀「でも、既に死んでました」

 

夕張「…生き返ったんでしょ?」

 

首を振る

 

大淀「私もそう思っていました、しかし、記録上の大井さんは完全に死んでいる

たまに接触をとりながら調べ続けて…ある時、公園で寝てる大井さんを見つけたんです」

 

夕張「なんでそんな無防備な…」

 

大淀「公園に住んでたので」

 

夕張「……???」

 

大淀「まあ、そこで唾液と…皮膚と血を少し、それから髪の毛まで拝借しました

解析にかけてみたんです、北上さんと大井さんの血のつながりを確信したくて

そうすると…彼女の体はほとんどが生体ユニットになっている事がわかったんです」

 

夕張「……え?…いや、それって要するに、修復材で回復しただけじゃ…」

 

大淀「…だったら良かったんです…でも、大井さんに投与されたのは修復材ではなく、ただの機械

人の体を無理矢理機械が生かして、再活性化させた状態です…これはあるものに近いんです」

 

夕張「あるもの?」

 

大淀「深海棲艦です」

 

夕張「……え?」

 

大淀「なので、私は、彼女を人間に戻すと決めました」

 

夕張「……それが、例の研究に繋がるのね」

 

大淀「はい…私は、事情を説明して協力を求めました

……その結果がこのザマです…」

 

夕張「引き渡した先はその研究機関…なら、そこに行けば、大井が…」

 

大淀「……既に偵察部隊を送り込んでいます」

 

夕張「…まあ、仕事が早い事で」

 

タブレットを取り出して、ニュースサイトを見せる

 

夕張「……なにこれ」

 

大淀「戦争の備えをしていたのは向こうも同じだった様です」

 

夕張「…深海棲艦が…建物から急に…?しかも……この建物、いやこれ大学?…もしかして…」

 

大淀「…遅かった、何もかもです、向こうは準備が整ったと言う事でしょう」

 

夕張「……行かなきゃ」

 

大淀「ダメです、今はいけません」

 

夕張「でも!これ以上犠牲者を…」

 

大淀「ケースを」

 

机の上に置かれたケースが開かれる

 

夕張「っ…!」

 

空母棲鬼「……」

 

大淀「コレを使います…夕張さんにもやってもらわなければならないことが」

 

夕張「……」

 

大淀「そんな目をする理由はわかります、しかし…今は…これしかないんです」

 

夕張「…わかった」

 

 

 

 

 

川内「こちら川内、聞こえてる?」

 

瑞鶴『α(アルファ)オーケー、状況は?』

 

川内「……もうダメだね、予想通り、最悪だよ…」

 

奇形の深海棲艦の群れが建物から溢れ出してる…

 

瑞鶴『先に突入した警察は?』

 

川内「ダメそうかな…はあ…向こうはもうお構いなしだよ」

 

瑞鶴『……やれる?』

 

川内「やるだけやるけど、後で逮捕とかそう言うオチはヤだからね」

 

瑞鶴『わかってる、お願い』

 

川内「はあ……でも、1匹やばいのいるんだよねぇ」

 

…あのレ級…今日は炎出てないんだ

 

神通「……」

 

川内「うん、こっちでもらおう、やるよ神通」

 

レ級「……イイ匂イダ…脳ニ響ク…戦争ノ匂イ…」

 

レ級がこっちを向く

 

レ級「見覚エガアルゾ」

 

川内「うげ…」

 

レ級「……ア!!横須賀ノ…!ヤッパリオ前ラ艦娘ジャナイカ!嘘ツキメ!」

 

…乗り込んできた時のことか

 

川内「そのスッカスカの脳みそでも覚えてるんだ?」

 

レ級「オ前達強イノカ?ドノクライダ?アノ雷巡クライカ?」

 

神通(雷巡…)

 

川内「北上のこと言ってるんなら…今の北上よりは絶対強いよ」

 

レ級「ソウカ!ソレハイイ……ガッカリサセルナヨ」

 

レ級が艦載機を取り出し、放つ

 

川内「神通、上は任せたよ」

 

艦載機の攻撃をかわしつつ、レ級へと迫る

 

レ級(速ッ!?)

 

神通(姉さんに意識を向けすぎて、動きが単調になった…今)

 

神通が苦無(クナイ)を何本か宙に浮かべる様に投げ、抜刀の構えを取る

 

神通「ッ…!」

 

抜き放たれた刀が苦無を弾き飛ばして…艦載機を(ことごと)く撃ち落とす

 

レ級「ナッ!?」

 

川内「意識ブレた?…素人だね」

 

首に向かって短刀を振り抜く

 

レ級「ッ!!」

 

川内「……うわ…」

 

レ級「…ダレガ、素人ダト?」

 

…今のを、防いだ…?

あのタイミングで腕を振り上げて盾にするのが間に合うなんて…

 

レ級「ナニヲ驚ク、何ヲ困惑スル!コノ程度デ止マル様ナ有象無象ナンテ!!」

 

川内「いや、久々にご馳走にありつけたと思ったんだよ!」

 

レ級「ウッ!?」

 

レ級の左手が斬り飛ばされる

 

川内「北上とも結局マジにやれなかったしさぁ…丁度いいよ」

 

レ級「……キシッ…キシシッ!!

オ前ナラ!私ノ悪夢ヲ(ハラ)エル!!!!」

 

川内(っ!)

 

レ級の蹴りに蹴りを合わせ、尻尾での薙ぎ払いを斬りつけることで対応する

 

…が

 

川内(っ…!…力負け、するっ…!)

 

弾き飛ばされ、距離を取る

 

川内「良いね、熱くなってきたよ!」

 

タバコを取り出して咥え、火をつける

 

レ級「ナンダソレハ」

 

川内「タバコ、嗜好品(しこうひん)の一つだよ、知らないの?」

 

レ級「戦イノ最中(サナカ)ニ…」

 

川内「でも、ね」

 

小袋のついた苦無を投げる

 

レ級「フンッ…ッ!?」

 

苦無を弾いたレ級の周囲に白い粉塵…

 

川内「粉塵爆発っての、知ってる?」

 

咥えてたタバコをプッと吐き出す

 

川内「…こういう風に使ってみたりね」

 

レ級「ウワアァァァッ!?」

 

レ級を囲んでいた粉塵が爆発する

 

川内(特製の火薬を混ぜた強化粉塵…でも、アレじゃかすり傷にしかならない)

 

短刀と苦無を逆手に持ち、距離を積める

 

川内(致命傷を与えるには、接近戦しか…っ?)

 

爆発によって巻き起こされた煙の中から、青い炎が…

 

レ級「…キシッ…キハッ!!」

 

川内(目から炎…!ここからが本気な訳だ!!)

 

川内「ぐっ!?」

 

艦載機の特攻…!

脇腹に突っ込んできた艦載機を苦無で貫き、投げ捨てる

 

川内「はぁっ!!」

 

レ級「キシシッ!」

 

短刀を爪で受け止められる

 

川内(もう力負けする選択肢は取らない!)

 

あえて短刀を爪で弾かせ、足元に落とす

そして短刀の後端、兜金を膝でレ級の腹に蹴り込む

 

レ級「グ…!?」

 

川内(混乱した瞬間が、チャンス)

 

こめかみに握り拳を叩き込み、短刀を捨てた手に苦無を握って心臓目掛けて突き刺す

 

レ級「グヌッ…!」

 

川内「致命傷には、ならないか…!」

 

コレも手を盾にして防がれた…

でも、手を拘束した!

 

川内「よッ」

 

苦無の後端を蹴って離れ、煙に身を隠す

 

レ級「キ…キシシッ…オ前、マジシャンカ何カカ?」

 

川内「(しのび)だよ」

 

レ級に刺さった苦無のワイヤーを軽く引き、位置を絞って小袋のついた苦無を投げつける

 

レ級「ッ!?」

 

川内(今度はさっきと違う、もっと、たくさん火薬を…!)

 

手持ちの小袋付きの苦無を全て…!

 

レ級「…ミツケタ!」

 

川内「えっ」

 

…煙の中で、一瞬何かが光った

 

 

 

 

 

レ級「……消シ飛ンダカ?」

 

偵察タイプノ艦載機ヲ尻尾デ捕マエテ取リ込ム

 

レ級「…キシシッ…キハハハハッ!!

ヤハリ私ノチカラハ絶対的ダ…!モウアノ雷巡ニ怯エルコトモナイ…キハハ…キハハハハハハッ!!」

 

 

 

 

神通「……」

 

川内「…ごめん、神通…助かった…」

 

神通(すみません、姉さん…全ての艦載機を堕としきれていれば…)

 

川内「大丈夫…でも、やられたなぁ……撤退するしかない、とにかく今は、隠れないと…

…まるで、光線だったね」

 

…風圧なのか、発射された砲弾の周囲が歪んで、まるでビームみたいに輝いて…

熱線が辺りを焼いた…

 

直撃したら、間違いなく死ぬ

直撃してなくても…

 

川内「神通、脚は…そこまで重い火傷じゃないね、良かった…しっかし…あの1発で…」

 

震える肩を掴んで抑える

 

川内「ヤバさが身にしみたなぁ……次やる時ちゃんとやらないと死ぬよアレは」

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