食うに困った艦娘が頑張って生きようとする話 作:名無し
暁「……」
龍驤「なんやこのオンボロ」
暁「新しい方の大湊基地」
龍驤「新しい…?どこがやねん」
霞「戦闘でボロボロになったのよ」
暁「原種による空襲でね」
龍驤「……ホンマにあいつらとやり合っとったんやな…」
暁「当たり前でしょ、艦娘なんだから」
龍驤「死ぬやろ」
暁「…死んでるみたいに生きたくないのよ、やりたいようにやって、満足できなくても、やりきって死んだほうがいい」
龍驤「……」
暁「さて、行きましょう?」
龍驤「何しにきたんや」
暁「あなたの忘れ物を取りに、見つけたでしょ?」
龍驤「…なんの話やねん」
暁「…ちゃんと見つけてるわよ」
龍驤「……」
龍驤(…気合い、入れとかな…か)
阿武隈「まだ突っ込んできます!」
曙「正面火力足りて無い!」
阿武隈「酸素魚雷…射出!!」
魚雷の爆発から逃れた敵を撃ち抜く
曙「どんだけ来るのよ!?」
地下プールの入り口はいつの間にか、深海棲艦の死体だらけでほとんど通り道がない
大淀『もう少しです、レーダーによると、あと20体』
阿武隈「20!?」
曙「何時間戦わせるつもりなのよ!!」
加賀『つべこべ言わずに戦いなさい、死ぬわよ』
曙「アンタらはどこにいんのよ!?」
大淀『地上で海上の敵と交戦しています、そちらへの侵入も抑えてはいるのですが』
曙「ちゃんと戦ってた…」
阿武隈「…えっと、すみません」
大淀『加賀さん、地下の援護に行けますか?』
加賀『…地下で艦載機を飛ばすなんて無理です』
大淀『そうですか、では動かせる人員を送ります』
阿武隈「ありがとうございます!」
曙「っていっても、艤装も使えない奴らじゃ意味ないでしょ」
阿武隈「…確かに、艦娘の戦力は今は…」
飛び込んできた深海棲艦に機銃を突き刺して連射する
阿武隈「私と曙ちゃん以外動けないから…」
大淀『すみません、実験段階でここまでの規模になるとは思わず…
しかし、これは非常にいい収穫です』
曙「収穫ね…生きてたら、ちゃんと何かでリターンちょうだいよ!?」
大淀『勿論です、できる限り労わりますよ』
曙「期待しとくわ!」
阿武隈「曙ちゃん!右弦!」
曙「っ!」
大淀「お疲れ様でした」
阿武隈「は、はい…」
曙「シャワー浴びてくるわ…
加賀「…予想以上ね」
大淀「ええ、両方が」
阿武隈「両方?」
大淀「あなたたちの活躍が目覚ましかったという事ですよ、夕張さんの艤装にとってもこれ以上ないプレゼンテーションでした
そして、空母棲鬼の能力を…侮っていたわけではありませんが、想像を超えられました」
加賀「…どうやら死体の数は250を超えるようです」
阿武隈「にひゃ…」
大淀「……量は多いです、ですが質は低い…」
阿武隈(…確かに、動きが単調で、まとまってるところを撃てば倒せる状態だったけど…)
加賀「やはり、空母棲鬼の状態が影響しているのでしょう
視覚と聴覚を完全に遮断している状態で集めさせたのが功を奏したのかもしれません」
大淀「助かるために必死になって地震の信号が及ぶ範囲の深海棲艦を総動員したのでしょうね
…しかし、この深海棲艦の数…横須賀周辺だけでこれほどの数ですか…?日本全土となると…」
阿武隈「……想像したくないですね…」
大淀(…200を軽く超える数を処理できたから良かったものの…しかし、まさかここまでの能力だとは…今までのデータと大きく
大淀「決戦を行うには、やや不安がある…か」
加賀「随分と弱気になるのね」
大淀「こうも失敗が続けば、誰でも」
加賀「…今回の作戦は成功じゃないの?」
大淀「かもしれませんね」
加賀「悪い部分だけを見る必要はないわ、結果的に成功しているのだから」
大淀「…私が危険に晒した命の数は、数えきれません、奪った命も…」
加賀「被害報告が欲しいわけじゃないんでしょう?」
大淀「数字にする事は簡単でしょう、しかし、私が自ら数えることに意味がある」
加賀「それに意味を見出してるのはあなた1人だと思うけど」
大淀「……」
阿武隈「あの…お話の途中にすみません」
大淀「なんですか」
阿武隈「私なりに考えてみた作戦があるんですけど…」
大淀「…聞きましょう」
阿武隈「この基地…潰しちゃいませんか?」
加賀「……何を言ってるの?」
大淀「いや……なるほど、そういう発想ですか…
阿武隈さん、少し北上さんに似てきましたね」
阿武隈「…着想はそこですから」
大淀「地下プールにありったけの爆薬を仕込みますか」
暁「ば、爆薬!?」
大淀「深海棲艦をできる限り地下プールに集めて爆破、掃討します」
加賀「基地を吹き飛ばすなんて許可が出るわけないでしょう、第一今のあなたは外務省なのですから」
大淀「それもそうですが、目的のためにはそんな細かな話は…おや」
基地のサイレンが響く
加賀「空母棲鬼はもう信号を送ってない筈…!」
阿武隈「じゃ、じゃあ野良の深海棲か…うわぁっ!?」
地面が大きく揺れる
…でも、この揺れ方…
阿武隈「地震…じゃないですよね」
大淀「地下プールの方ですね」
レ級「ジャンジャジャ〜ン!…コッチカラ来テヤッタゾ」
阿武隈「このレ級…!」
レ級「サア、アノクソ雷巡ヲ出セ!!」
加賀「残念ね、北上ならここには居ないわ」
レ級「ナラオ前達ノ首ヲ並べテ呼ブマデダ!!」
大淀「やるしかありません」
レ級が尻尾の艤装から主砲を覗かせる
レ級「キシッ…キハハハハッ!!」
阿武隈「っ!?」
…違う
何かが違う!
主砲の内側から、光が漏れ出して…
阿武隈(し、死っ…!?)
艦載機がレ級の尻尾に突っ込み、爆散する
そして、軌道がブレた主砲から…砲弾が放たれる
放たれた砲弾はやや離れた位置を貫いたが…
大淀「聞いていた通り、もはや砲撃などではありませんね」
加賀「…何を見せられているの、これは…」
砲撃の爆発なんかじゃない
速い砲弾がただぶつかる事による“衝撃”で粉砕している
阿武隈「あ、あんなの当たったら一撃で…」
大淀(死ぬでしょうね)
加賀(死ぬわね)
大淀「ですが…レ級にとってもアレは負担になる筈です」
レ級「キハハ…」
阿武隈(…確かに、ケロッとしてるけど、アレを撃ってすぐ追撃が来ないって事は…撃ってすぐは“動けない”?)
大淀「そして、おそらく連射は効かない…筈です」
阿武隈「何も確証はありませんけど…」
大淀「その仮定でやるほかありません」
加賀「…地下プールで何発も撃たれたら…崩落するわよ」
大淀「その前に仕留めなければ私たちも助かる見込みはありません」
阿武隈(倒さなきゃ倒さなきゃ倒さなきゃ…)
レ級「ヘェ…フゥン…?…オ前ラ、コノ天井ガ崩レタラ死ヌノカ」
大淀「死ねませんよ、その程度では」
加賀「…そうね、足りないわ」
阿武隈(充分すぎるんですけど!?)
大淀「阿武隈さん、前衛は…いや、全て任せます」
阿武隈「ぇ、うぁ……はい!」
レ級の方に詰め寄り、近接戦闘を仕掛ける
レ級「バカガァ!!」
主砲を持った腕が、レ級の爪で斬り飛ばされる
阿武隈(……)
宙に浮いた主砲をもう片方の手で掴み、撃つ
レ級「ッ!?コ、コイツ!!」
阿武隈「…ちゃんと、再生もします」
斬り飛ばされた腕が修復材で再生されると同時にレ級の首を掴む
主砲を顔面に突きつけ、撃ち続け、太腿の魚雷発射管から魚雷を全て放つ
阿武隈「…耐久力も、強化されてるんでしょうけど…!」
主砲の弾が切れたと同時にレ級の腹に蹴りを入れて跳び下がる
加賀「…地下で飛ばすなんて、無茶ね…狭すぎて特攻させるしか無理」
大淀「それでも仕事ですから…しかも有効なダメージになる」
よろけたレ級に艦載機が突っ込み、自爆…そして、魚雷が炸裂…
阿武隈「…効きましたか…?」
即座に次の弾倉を主砲に装填する
加賀「腕がちぎれ飛んでたのが見えた、充分に致命傷も…」
大淀「伏せて!!!」
煙の中から、光が…
阿武隈「っ!!!」
レ級「キシッ…キハハ…キハハハハハッ!!
ヤハリ脆イ、脆イナァ、艦娘…弱スギル」
片手を失ったレ級が辺りを見渡す
レ級「…ドコダ?原種……セッカクオ前ノ誘イニ乗ッタンダ…サッサト…ン?…アレカ」
スーツケースにレ級が近づく
レ級「コレデ…」
レ級がスーツケースに残った手をかけた瞬間、スイッチを押す
レ級「ッ!?」
大淀(…空母棲鬼は、渡さない…そしてこれで、両手)
レ級の背後から、瓦礫を振り下ろす
レ級「ガグッ!!?」
よろけたレ級の後頭部に阿武隈さんの主砲をつきつけて
撃つ
撃つ、撃つ、撃つ撃つ撃つ
大淀(死ね)
ガチッ
大淀「弾切れ…ッ!」
レ級の尻尾に弾かれ、壁に背中を打ち付ける
レ級「…オ前…殺スゾ…!」
大淀「…かふっ…く………はぁ…は…やってみればいい…」
レ級「…気ニイラナイ…オ前ノ血肉デ傷ヲ癒シテヤル」
大淀(……身体は、右手さえ動けば…右手さえ…!)
レ級「……ッ…?」
大淀(さあ、その口を…開きなさい…!)
レ級「…チッ」
レ級が尻尾の艤装から主砲を出す
大淀「っ?!」
レ級(コイツノ目、アノクソ雷巡ト同ジダ…何カアル!今死ンデタマルカ!コイツハ消シ炭ダ!!)
大淀(…万事休す…か)
レ級「ッ!?気配ガ…!」
銃声、そして爆発にレ級が怯む
大淀(…!)
右手に拳銃を握り、撃つ
レ級「チィ!コウナレバ!!」
尻尾の主砲が天井に放たれる
大淀「崩れる…!」
レ級「キハハハハッ!!…今回ハコレデイイ…ザマァナイナ!」
レ級が水中へと姿を消す
葛城「大淀さん!逃げましょう!」
大淀「葛城さ…いや、私はいいです!2人を!」
曙「もう確保してる!あとはアンタだけ!!」
大淀「曙ちゃん…」
葛城「異変に気づいて私たちを呼んでくれたんです、感謝しておいてください」
大淀「…いつもしてますよ」
自爆用の爆薬を捨て、脱出する
大淀「惨敗ですね、奥の手の空母棲鬼も…奪われるくらいならと殺してしまいました」
加賀「仕方ないわ」
阿武隈「生きてるだけで儲け物ですよ…」
大淀「……ええ」
青葉「…はぁ…遠い…」
那珂「これいつ着くの?」
天龍「あと数時間だ、おとなしく乗ってろ」
春雨「数時間…」
天龍「飛行機も電車も乗る余裕なんて無え、高速に乗れてるだけ感謝しろよ」
那珂「……そうだけどさぁ…」
青葉「そういえば…大湊で味方に合流できなければどうするか、聞いてなかったと思うんですけど…」
天龍「そん時はそん時だろ」
那珂(ホント、考えてるんだか考えてないんだか)
天龍「…実際、オレらで深海棲艦絶滅させるなんて無理だろ?…大人しくその世界で生きるしかない、邪魔な深海棲艦が来たらそいつを潰して…
そうやって生きるしかないんだよ」
青葉「元のあなたがそうだったように、ですか?」
天龍「……あぁ、情けない事この上ないとは…わかってるけどな」
那珂「情けなくはないよ」
天龍「あん?」
那珂「…少なくとも、戦う事をやめなかったのなら、情けなくはないよ、私よりは立派」
天龍「んなもんに立派もラッパも無えっての…
自分が納得して、できなくても無理やり飲み込んで生きるしかないだろ?」
那珂「かもね…私だって…」
青葉「みんな、苦しい中で生きてたんですよね…」
春雨「……戦って、その先に…何があるんでしょうか」
天龍「さあな?…少なくとも、この仕事を稼業にしてるウチは幸せになんてなれねぇぞ」
那珂「お金ももらえないのに稼業ぉ〜?…はぁ、明日から慈善団体の職員名乗らなきゃだね」
天龍「…お…お?」
春雨「どうかしましたか?」
那珂「……あれ、今見えたの、線路だよね?」
青葉「あの辺り、新幹線が通ってる…?」
天龍「…事故ったのか?なんの煙だあれ」
山の合間から黒煙…
那珂「…アレが深海棲艦の仕業だったらどうする?」
天龍「今は、どうにもできねぇだろ」
那珂「……早く武器取りに行かなきゃ…」
北上「けほっ…うぅ…」
…何が起きたんだろう…
電車に乗って病院に向かっていたら…
急に強い衝撃が起きて、窓が割れて、体が吹き飛ばされて…
北上(立てない…っ…あ…)
目の前に肉の塊が降ってくる
…ぐちゃぐちゃに潰れた、人間の肉の塊
深海海月姫「見ィツケ…タ…」